テラーノベル
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午前中、俺は屋敷の中庭にて、魔法と剣技の訓練を行っていた。
特別講師はソニア王女である。
彼女はいつものブレザーの学生服のような格好で木刀を持つと、俺に容赦のない刺突攻撃を繰り出してくる。
「どうした王子、私のエレガンスで美しい攻撃に手も足も出ないか?」
「ぬぐぐぐぐ」
「52戦52勝、今日で私の53勝目だな」
「あまり俺の打たれ強さをなめるなよ」
打耐性スキルが向上しており、並の攻撃であれば20%ダメージカット。しかも動けるデブである俺は、見切りスキルも所持しており15%回避率が上昇している。
彼女の無数の蜂が攻撃してくるような刺突も、ある程度は我慢できる。
「いくら打たれ強かろうが、ガードだけしていては私には勝てぬぞ!」
「なら受けてみろ、俺の新技を!」
俺は全身のカロリーを脚に集中し、爆発的なジャンプを行う。
「カロリーバーストエリアルジャンプ!」
「なっ、バカな!?」
デブが飛んだ!? と目を見開くソニア。
「&プレス!」
空から強襲する俺を迎撃体勢に入るソニア。だが、木刀で俺の質量を受け止めることは不可能。俺は彼女を押し潰すようにしてのしかかる。
「キャアッ!!」
珍しく乙女のような悲鳴を上げるソニア。俺はマウントポジションをとった状態で、彼女の腕を押さえつける。
「ギャハハハ、俺をなめすぎたようだな。お前の敗因は剣術なら絶対に負けないという奢りだ」
「豚が空を飛ぶなんて誰も思わないだろ!」
誰が豚じゃい。
「なんと言おうが俺の勝ち。俺はソニアに土をつけたのだ!」
「くっ!」
彼女は本当に悔しそうに唇を噛みしめる。くっ殺せって感じの表情で興奮する。
俺はぐへへと下卑た笑みを浮かべながら、ふと視線を落とすと、彼女の衣服がはだけていることに気づく。
ブラウスの第四ボタンくらいまでボタンが千切れ飛んで、白のレースブラが覗いている。
更にこのマウントをとって押さえつけている姿が、どう見ても暴漢が襲っているようにしか見えない。
俺はすんと素に返って、視線をそらす。するとソニアは今がチャンスと体勢を入れ替えて逆に俺を組み伏せる。
「やはり私の勝ちのようだな!」
「服、服! 見えてるぞ、プリンセスバストが!」
「あぁ破れてしまっているな。しかしその程度で勝負をおろそかにする私ではない!」
「ずるいぞ、こっちは直視できないのに!」
「フハハハ、美しい私の身体を間近で見れて幸運な奴め!」
「くそっ、この見せたがりの変態め!」
結局俺は今日も敗北を喫して53敗目となった。
◇
正午――
剣技訓練を終えた後、俺は屋敷のキッチンにて、鉄人と書かれた長いコック帽を被って料理をしている最中だった。
アクアレムのリヴィア女王から大量の海産物が送られてきたので、それを料理スキル上げがてら調理しているのだ。
コンロに置かれた網の上で、サザエがグツグツとうま汁を放出しながら沸騰している。
そこにバターと醤油をくわえ、ネギとガーリックをまぶす。
239
ありんす
1,095
ねこなさま🐈⬛💘
7
す㍄
9
バターが溶け広がり、食欲をそそる匂いが厨房に充満する。
さらに米の上にサーモンの刺し身と、いくらをこれでもかとぶちまけた痛風丼。
さらにかつお、昆布、薄口醤油でとった和風だしに黒カニのすり身を入れたカニ汁を作る。
「完成だ」
俺は出来上がった品をテーブルに並べると、待ち構えていたジャガーが勢いよくかき込んだ。
口をリスのように大きく膨らませ、もぐもぐと咀嚼して飲み込む。
「本当にお前は……天才だと思う」
ジャガーは体を震わせながら料理を絶賛する。
「旨いものと旨いものを組み合わせてるだけだぞ。こんなの料理って言えるのか?」
「いや、すげぇよお前は。ソニア見ろ、あいつ食に興味ゼロだから、フィッシュチップしか作れねぇんだぜ。しかも、まっずい。あれを料理と言い張る根性がすごいわ」
「俺の鮭といくらの親子丼なんか、切って乗せただけだけどな」
「いやいや、普通の奴は魚さばけねぇから。三枚下ろし? あんなの無理無理。ソニアがやったら三年かかるぜ」
俺はジャガーの背後に立つ女性を見て、ギョッとする。
俺と同じく訓練を終えた金髪美女は、風呂後なのか全身から湯気を出しつつも冷徹な瞳をジャガーの背中に向けている。
「お、おいジャガー……」
「しっかし、あいつは見た目100点かもしんねぇけど、中身が終わってるから嫁の貰い手がねぇんだよな。どうだ? お前のハーレムに入れてやったら?」
「おいジャガー、死にたくなければ黙った方が良いぞ」
「お前も思うだろ? あっそうだ、面白い話があってな。この前ソニアが島で有料の馬車に乗ったんだよ。目的地に着いて、運転手がお支払いお願いしますって言ったら、ソニアの奴、自分のブロマイド渡して『釣りはいらない』とか言い出してよ。運転手に普通に怒られてたぜ。 オレ? もちろん面白かったからずっと見てた」
「ジャガーやめろ、死ぬぞ」
「まだあるんだよ、この前ビーチで――」
「おい、歯車屋」
ジャガーの真後ろで、冷えた女性の声が響く。
俺は忠告したからな。
油の切れたブリキロボみたいな動きで、ゆっくりと振り返るジャガー。
そこには、般若のような表情を浮かべたソニアが立っていた。
「はは、いたのか」
「随分と機嫌よく私のことをこき下ろしてくれたな、歯車屋」
「いや、あれは言葉のあやって奴でよ。お前のことを親しみやすいって言いたかっただけ――痛いぃぃぃぃぃっ!!」
ジャガーはソニアにアイアンクローをくらって悲鳴を上げる。
彼の顔面からメキメキという怖い音がしている。
やがて白目を剥いて意識が飛んだところで、ソニアはジャガーを解放する。
「どうせ私は料理の一つもできない女だ。しかし私が悪いのではなく、トリスタンに食の文化が少なかったのが悪い」
「おい大丈夫か、生きろ」
心肺停止状態のジャガーの心臓マッサージを試みていると、ソニアがそうだと何かを思い出す。
「明日トリスタン本国から、私の妹が来るのだが」
「妹いたのか?」
「ああ、私にそっくりな美しき者だ。少し引きこもり気味なところがあるから、この美しい島に呼んだ」
蘇生したジャガーと俺は、ソニアのコピー妹を想像する。
『フハハハお姉様、私達こそトリスタン美女王女姉妹ですわ!』と高笑いする姿が想像できた。
「おいおい、この女が二人とかほぼ地獄じゃねぇ――痛いぃぃぃぃっ!」
ジャガーは再びアイアンクローを食らって、もがき苦しむ。
余計なこと言わなきゃいいのに。
「すまないが王子、ここに呼んだから泊まりの手配を頼む」
「お、おう……」
俺はボロ雑巾みたいに倒れたジャガーを突っつく。
こいつはヒデェや。泡吹いて死んでやがる。
コメント
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第56話読了〜!!🌸 ソニアとの訓練、めっちゃエモかった😭💕「&プレス!」でデブが空飛ぶとか予想外すぎて笑ったwマウントからの逆転劇、ソニアのくっ♡♡♡感がたまらん!!料理パートのジャガーも最高で、ソニアのブロマイドエピソードで笑い死ぬかと思った🤣ソニア妹登場フラグも気になるし、次回が待ち遠しすぎるよ〜✨