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『さぁユリノテイオー飛び出した!ユリノテイオー内からぐんぐん伸びる!!外からコールドブラデッド!!だが届かない!!!』
19XX年。──クラシック初戦、皐月賞。
『白い馬体を弾ませユリノテイオー!ユリノテイオーこれは強い!!!』
中山競馬場で、初めてGIという栄光を掴んだのは、
『ルーキー漆瀬!待望のGI初制覇!!』
白の小さな馬の背だった。
「漆瀬!」
後ろから、如月先生の声が聞こえた。
先生は百合園さんと五十嵐さんを連れて、俺の方に小走りで向かってくる。
百合園さんは顔を手で覆って、先生と五十嵐さんは嬉しそうな顔で。
「先生……」
「お前よくやったじゃん!!」
観客に晒された正面スタンド前、五十嵐さんはユリノテイオーの首を優しく撫で、先生は俺の背中をバンバンと叩いた。
百合園さんはまだ顔を隠したまま。
そんな様子を見守る観客席は歓声に包まれていた。
「ユリノテイオーのおかげですよ。あの馬場、あの状況で……よく頑張ってくれました」
そう言ってユリノテイオーの首を撫でた。
ユリノテイオーは首を曲げこっちを向いた。
ユリノテイオーにはデビューの時から乗せてもらっている。
毎度毎度思う、ユリノテイオーは馬にしては顔立ちがいい。やはり父のシンボリルドルフ似だろうか。
だがその父に似ても似つかないほど性格は穏やかだ。
「ったく、お前は性格が良すぎんだよ」
そう五十嵐さんは吐き捨てた。
「ほーら、華蓮はいつまでも泣いてないで。GI勝った我が愛馬のこと少しくらい撫でてあげたら?」
「………うぅ……」
百合園さんは口をまだ塞いで、腫れた目でユリノテイオーを見つめながら、おでこを撫でた。
嬉し泣きだろうか、小さな声でありがとうと呟いていた。
「…百合園さん…」
百合園さんはこちらを向き何か言った。
今日の記憶はここで途切れている。
コメント
5件
全体的にかわええ…
秋天と菊花賞!ユリノも三冠達成なるか?!
ごめんない本編更新じゃないし短いです(๑ŏ _ ŏ๑) 次回秋天、菊花賞(前編)です!