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蒼乃 月
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「あなたも藤子の信者なの?」
ジェニはいたずらっぽく笑った
「ちょっとっ!ジェニ!」
藤子は頬を染めてジェニのおふざけを止めようとした
「最近熱烈信者になったんだ」
文也のかえしに皆その場で笑った、真紀とジェニがさっきからクスクスとずっと笑っている。もうっ二人共、女子高生みたいなマネは止めて欲しい
「僕もこの部署に来ようかな?」
「歓迎するわ!まずは広告とは何ぞやからねっ!私が鍛えてあげる」
ジェニが珍しく気に入った相手に必ずする好意、彼を「冗談攻め」にしている。さっきまでの彼は極上の微笑みを見せていたのに、今は真っ白な歯を見せて笑っていた、唇の両端が頬にえくぼの窪みを作っている
―う~ん・・・やっぱりかわいい―
「何かお菓子食べる?文也君って呼んでいい?」
藤子が文也に笑顔で言うと、デスクの引き出しから藤子のピンクの籐で出来たお菓子が入っているバスケットを取り出した、そして真紀も自分のポテトチップスや、グミを文也の前に置いて、ジェニはチョコレートバーを、全種類文也に選ばせようとしていた、文也は笑いながら「ここは駄菓子屋か?」とチュッパチャップスミルク味だけもらった
「実は、先日助けて頂いた特別な女性との夕食のために、腹を空かせておくつもりなんだ」
キャー!!「特別な女性だって!!」
「夕食だって!!」
途端にジェニと真紀が藤子の後ろで手を組んでピョンピョン跳ねている、もうっ!いい加減にして欲しい、ジェニが言った
「文也君、藤子はこの所残業を沢山こなしたのよ、今日は早上がりにしたらいいわ、彼女と何かしたいことはある?」
「早上がりにするかどうかは、私が決める事よ」
藤子の反論も、メビウスのセクシートリオの末っ子が藤子に熱烈アピールしているのを大いに楽しんでいる、この二人はまったく効かない
クスクス・・・「やだっ!ジェニさんったら!その言い方なんかいやらしいですよ!」
真紀がジェニを叩いて、ジェニが噴き出した、いったい何をそんなに浮かれているのだろう
「いやらしく聞こえるのは、あなた達がいやらしいことを考えているからじゃない?」
藤子があきれて目玉を回す、二人は噴き出し、終始何がおかしいのかケラケラ笑っている
まったくっ!この二人がいるとまともに彼と話が出来ないじゃないの、彼はただ喉スプレーのお礼を言いにきてくれただけなのに・・・しかし文也は藤子をじっと見て頬づえをついて微笑んだ
「夕食をたべた後、何かいやらしいことを藤子ちゃんがしたいなら、僕はかまわないよ」
またまたジェニと真紀の甲高い声が「キヤーーーーっ」と上がった、もう手が付けられないぐらいジェニと真紀は興奮している
文也の言葉に藤子が真っ赤になった、思いがけずジェニ達の冗談に文也が乗って来たので驚いたが、彼は気さくで、藤子の同僚にも愛想がよくて、冗談が通じる素敵な男性だということもわかった
彼はチュッパチャップスを頬張ってこう言った
「おなかすいてる?藤子ちゃん、俺のディナーにご招待するよ」
・.。. .。.:・
メビウスビルの住居者用正面エレベーターに乗るためには、大理石の床のブロンズ像が置いてある玄関ロビーを通り抜けなければいけなかった
金モールの縁取りがついたナポレオンジャケットを着たドアマンに文也が手を上げると、ドアマンが小さく彼にお辞儀した、その後ろを、初めてこの住居区間に足を踏み入れた藤子がキョロキョロしながらついて歩いた
藤子はハッとドアマンと目があった途端、キョロキョロしている自分が恥ずかしくなって、コホンと小さく咳をして背筋を伸ばした、そして「億ションなど訪問し飽きているわ」という顔を精いっぱい装った
スライディングドアを抜けて二人はエレベーターに乗り込んだ、その中もまるで別世界で、精一杯の強がりはどこへ行ったやら、藤子はキョロキョロ見渡さずにはいられなかった
「メ・・・メビウスタワービルの住居区は初めて・・・本当にここに住んでいるのね・・・」
「うん、そうだよ」
エレベーターは超高速スピードで上昇し、2分で35階に到着した
「最上階のペントハウスは家族向けなんだけど、この階は、もう少し小ぶりな独身者向けのコンドミニアムなんだ」
文也がそう説明しながら先に歩く、窓のない細い廊下が大きなHの形に延びていて、完全にプライベートが保たれている空間は、気味が悪い程静かだ
ふわりとした薄い色のカーペットが床に敷かれているので、靴音は全くしない、右側の廊下に出てドアの番号を藤子が確認すると「18A」と書かれていた
文也はそのセキュリティパネルに番号を打ち込んだ
「ハイど~ぞ、入って」
「わぁ・・・」
藤子は口元に手を持っていき、ため息をついた・・・とても美しい部屋だった、見える範囲で藤子は文也の家を眺めた、キッチンも玄関広間もリビングも現代的な機能が充実していた
真っ白な大理石の壁・・・床・・・文也がボタンを押すと照明に内装されたプロジェクターからエーゲ海の海が壁いっぱいに映し出された
素晴らしくモダンな作り付けの家具に、間接照明がオレンジ色に足元を照らしてる、廊下の壁にはいくつかの絵がかけられていて藤子のような素人にも値段がつけられないくらい高価な絵だとわかる
そしてリビングの最奥には、壁全体がガラス窓になっていて広々とした大阪市内の夜景が広がっていた
すでに日は落ち、色んなビルのネオンが宝石の様にガラスに映し出されている・・・とても美しい
「すごい・・・夜景・・・」
「言っておくけど夜景は一週間で見飽きるよ」
コメント
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第38話、楽しく読ませてもらいました! ジェニと真紀のノリの良さに思わず笑っちゃいました(笑)「いやらしいこと」のやりとりで文也さんが軽く乗っかるところ、藤子さんの気持ちがすごく分かります…照れるよね! それにしてもペントハウスの描写、すごく綺麗でドキドキしました。夜景にエーゲ海のプロジェクション、想像するだけで贅沢な空間。藤子さんのキョロキョロしちゃう気持ち、めっちゃ共感です。 二人の距離がぐっと縮まった感があって、次の展開が楽しみ!