テラーノベル
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💚「安心して、君のこと、俺が一番うまく使うつもりだから」
💙「……はい」
本当はここまで脅すつもりはなかった──
最初の出会いは、図書館だった。
あそこは俺のお気に入り。
静かで、誰にも邪魔されなくて、考え事をするにはちょうどいい場所。
その日も、いつも通りに奥にあるお気に入りのとこに行こうとしたら、
先に誰かがいるのに気づいた。
💚「あ……」
渡辺翔太。
彼を知ったのは、つい最近。
最初はふっかからだった。
──
💜「なぁ聞いて、今日、面白いやつに会ったわ」
俺の家に遊びに来てたふっかが、急に楽しそうに話してきた。
💚「へぇー、どんな子?」
💜「今日さ駅の近くのゲーセンよっててさー」
💚「そんなとこ行かなくても、おまえん家にいっぱいあるのに」
💜「まぁまぁ、聞いて聞いて。そこで学園の制服の子がいたんよ。あんなとこに、同じ学園のやつがいるのが珍しくて声掛けちゃったわ」
やけに楽しそうにして笑ってる。
💜「その子のこと庶民くんって呼んでるんだけど、その庶民くんがぬいぐるみ取ろうとしてて、取ってあげた」
💚「庶民くん?」
💜「うん、だってあんな所で同じ学園のやつと会ったことねぇし、そもそもゲーセンなんてみんな、しないだろ?楽しいのに…」
たしかに、ゲーセンなんて行かなくても、すぐに買えるし、クレーンゲーム限定のものが欲しくなっても、俺だったら専属のスタッフに頼むか、ふっかに頼む。
💚「ふっかと似た価値観があるんじゃない?」
💜「そうかもな。ほんでその庶民くん、喋るとちゃんとツッコんでくれて、他のヤツらとは違うくて、話しやすい子だなって思った。それに、イジるとすぐ顔赤くなる。まじ面白いんよ」
💚「まぁ、学園の子は俺らにビビりすぎて、まともに会話できないしね」
💜「だから、おもろいのに会ったなって思ったわけ」
💚「でも庶民くんは失礼だよ。けど、庶民くんが本当に庶民だった場合は違うけどね。すぐに狩っちゃわないと」
💜「まぁ、ないでしょ?あったとしても、すぐに狩られてるって」
この時はそこまで庶民くんについて知ろうとも思わなかった。ただふっかが新しいおもちゃを見つけただけで、またすぐ飽きると思ったから。
それから、食堂。
あいつ一階まで降りて、誰かと飯食ってたのを初めて見た。
それであれが、庶民くんなんだって知ることができた。
昼を済ませて、俺ら専用の部屋でゆっくりしてると、ふっかが帰ってきた。
💜「ういすー」
💚「今日、一階で食べてたね。一緒に食べてた子が例の庶民くん?」
💜「そうそう、でね、庶民くんが名前教えてくれたんよ。渡辺翔太だって!」
珍しい。
ふっかが、誰か一人の名前をそんなふうに覚えてくるなんて。
そりゃ多少は気になるよ。
──
だから、彼の存在は知ってた。
その渡辺翔太が、今、俺のお気に入りの場所でノートを広げてる。
気配を消し、後ろからノートを覗いたら、惜しいミスがあった。
💚「それ、違うよ」
声をかけた瞬間、びくっとしてこちらに振り向いた。
💙「え……?」
めちゃくちゃ警戒されてる。そりゃそうだ、急に話しかけたもん。
💚「急にごめんね。ちょっとノート見せてもらっていい?」
💙「……はい」
💚「この公式、使い方ちょっと違うよ。ほら、こうしてみて?」
ノートに書き込みながら式を直した。
💙「……なるほど。そういう考え方もあるんですね」
理解が早くて、吸収も早いな。
💚「うん、渡辺くん頭いいね。ちゃんと理解できてるし、飲み込み早いじゃん」
💙「……ありがとうございます」
少し照れたように、目をそらしたと思ったら、また驚いた目でこちらを見てきた。
💙「あの、なんで俺の名前を……?」
あ、やばい。今日初めて会ったのに、名前知ってるってなったらキモイよなこれ。
💚「あー、ふっかから少し聞いてるよ『最近面白い子がいる』ってね」
本当のことだから嘘ではない。
それから、教えたり、一緒に勉強して、あっという間に昼休憩が終わった。
渡辺くんといると、なぜか気が楽になれた。ふっかが言っていたことがわかる気がする。
でもそれ以上に踏み込む理由はなかった。
──あの日までは。
ラウールの帰国後。村上家のパーティーに阿部家も招待され、顔を出した。
正直、退屈。
佐久間と合流して、ラウールに挨拶しに行こうってなった。
そこにいたのが、
ラウールのパートナー、翔子さん。
どこかで見たような。
それからラウールとは別れ、佐久間と少し歩きながら話した。
🩷「ラウもやるね〜、あんな可愛い子連れてきて」
💚「たしかにね、俺ら負けてるよ」
確かに可愛い。
だがそれ以上に、なにか引っかかる。
🩷「あ、康二と蓮だ!おーい」
💚「もう着いたんだ」
それから康二とめめと合流して、少ししてから一人になるときがあり、ゆっくり会場を歩いてると、
スイーツの前で、翔子さんが酔った男に絡まれている。
腕を掴まれているのを見たら、さすがに放っとけない。
男の腕を掴み、引き剥がして、こっちに引き寄せた。
💚「嫌がってるの、わかんないんですか?」
すると男が嫌そうにこちらを睨んでくる。
あー、めんど
💚「未成年に手を出すとか、アウトですよ」
男モブ「……っ、失礼」
男は舌打ちをしながら、なんとか去ってくれた。
💙「あ、あの、ありがとうございます…!」
俺の腕の中にいる翔子さんの顔をみた。
上目遣い。
あ……
そのとき、図書館での渡辺くんの顔が、はっきりと重なった。
渡辺翔太だ。
ホクロも、唇の形も、この目も、間違いない。
💚「うんん、大丈夫だった?怖かったでしょ?」
気になることは山々なんだけど、その場では何も言わない。
翔子として接し、助けただけの第三者を装う。
すぐにラウールが来て、状況を説明した。
だがその後も、考えずにはいられなかった。
なんで、女装?
なんで、ラウールのパートナーに?
俺はスマホを取り出し、指示を送る。
『渡辺翔太について調べて。至急』
返ってきた内容は、拍子抜けするくらい普通。
・一般的な家庭、父、母、妹
・父親は目黒の会社勤務
・妹とは五歳差
・成績優秀、特待生で入学
問題も、裏も何もない。
翔子さんが、渡辺くんの妹ってことも考えられたけど、まだ小学生だから、考えられない。
それに今年から、特待生制度が導入された。
このこともあり、周りからはバレずにすむ。
寄付金や授業料も払わなくていいから、金銭的には問題ないのんだろう。
💚「……ふーん」
本人は頑張って隠れてるつもりだろうけど、
この学園で、庶民が何事もなく過ごせるわけない。
普通なら、すぐ白雪狩りだよ。
でも、
💚「まあ、今はいいや」
だって、渡辺くん
俺のタイプだもん。
狩るのはいつでもできるし。
今はまだ、観察してる方が面白い。
そんなこんなで、渡辺くんとの接点を作りたくて、最後はこんな形で脅しちゃった。
本当は怖がらせるつもりなかったんだけど…
まぁ、渡辺くん覚悟しとしてね。
俺、案外
執着するタイプだから。
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♡とコメント待ってます!
コメント
6件
執着ある重めな阿部ちゃんめっちゃみたい〜!!!💕続き楽しみです!! ♡2000失礼します!!
まじでこの話面白いし、話の続きも気になる〜💭👀✨ 続き待ってます( *´꒳`* )
