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これだけ迂回したんだ。必ず上手くいく……っていうのは少し違うか。これは俺のスキルが作用した結果だ。
おそらくこれからの行動を決めた時、多くの失敗する選択肢が外されたんだ。
大変動の後ですぐ上を目指したら、こんなに早く辿り着けなかっただろう。
一体、どのくらいの期間がかかっていたんだ?
確か完全に上手くいって半年か。冗談じゃない。
そもそも、外に出る事自体が問題だ。俺はもう、この世界には存在してはいけない人間だったのだから。
仮に地上にのこのこ出ても、すぐに捕まるか殺されていただろう。それは多脚機械の襲撃で確信した。
仮にスキルで逃げ延びてみんなと合流出来たらどうなっただろう。
きっと何も言わずに付いて来てくれたと思う。だけど、帰れないかもしれないという不安はずっと付きまとう。
未来への希望もないまま、怪物に追手、大変動を恐れて逃げ回る。
俺の勘違いじゃないのか? 死ぬ事にさえ注意していれば、上にいたままの方が逆に安全じゃないのか?
きっとそんな疑心暗鬼から、俺達の関係は次第に崩れていったと思われる。
そういった失敗が外された結果の上に、今こうして此処にいる。
そう、今はひたちさんやその仲間もいる。今までに起きた出来事なども説明してもらえる。
安全ではないかもしれないけど、みんなで帰るための行動を起こせる。それが何よりも大切なんだ。
こんな所で使い捨ての道具として使い潰されてたまるものかよ。
「それじゃあセポナ。契約を解除しよう」
「……分かりました」
そう言って取り出したのは一枚の布だ。一見すると普通のハンカチだな。
そして掌を持っていた小刀で切ると、それはみるみる赤く染まっていった。
「それではお願いします」
そう言って、セポナは小刀とハンカチを渡す。
当然意味は言われるまでもない。俺も掌を切ってハンカチに自分の血を染み込ませる。
……これで拭くんだったな。
最初の説明を思い出して手の甲に浮き上がっていた模様を拭いてみる。
俺の予想だと血がべったり――と思ったのだが、綺麗に模様は消えた。
「こちらもお願いしますね」
そう言ってスカートをたくし上げお腹を見せる。
あの時押したハンコの跡。奴隷の証。
「結局、奴隷らしいことは何もさせなかったな」
「まあ食事の支度なんかはさせられましたが、その辺りはお互い様ですしね。大切に扱って頂き、本当にありがとうございました」
「お礼を言わせるようなことは何もしていないよ」
そう言って奴隷の証を拭き消す。
「あ、最後のは契約を解除した時の常套句ですよ。本気にしました?」
あー殴りてぇ……。
「冗談ですよ。ここまで生きて来られたのは、奴隷として守っていただいたからです。本当に感謝していますよ」
「奴隷にしなくても守ったさ。契約したのは、単に言っていることが本当かを知るためだ。何せ、俺は世間知らずだからな」
「あまり胸を張って自慢する事ではありませんよ」
そう言って笑いあっている内に、模様は全て消し終わった。
今更だが、手にも血は付いていない。これも専用の道具だったって訳か。
「これで完了か」
「ええ、問題ありません。それにしても、本当に最後の最後まで一度も手を出そうとしませんでしたね。まあ出されたら噛みつくくらいの事はしたと思いますが、それはそれで複雑です」
「はっはっは、無いわ。言っただろ、俺の世界じゃ――」
ついつい軽口を叩きそうになって、はっと我に返る。あの時とは状況が違う。
今の俺って、物凄く差別的なことを言いそうになったんじゃないか?
確かにセポナは小さい。どう見ても子供の様だ――というか、黙っていればお子様のようにしか見えない。
だけど22歳だ。俺の暮らしていた世界でも、こちらの世界でも成人済み。
なら問題ないんじゃないか?
それとも、発育が遅れた人間は致してはいけないのか? 子孫を残しちゃいけないのか?
それこそ重大な差別だろう。
まだ詳しくは聞いていないが、そもそも国も100以上あるんだろ? なら人種的なものなのかもしれない。
なんだろう……合法とか考えたら妙に意識してきた。
「あれあれ、どうしました? もしかして、今更惜しくなりましたか? 仕方ないですね。初めてではありますが、一回くらいならお相手しますよ」
「しないわ!」
まあ普通に冗談だったのだろう。
というか、拭き終わったまま考え込んでいたので、パンモロガン見状態だった。
ド変態だな。
「それではお元気で」
そう言ってぺこりとお辞儀をすると、彼女は先に下水へと消えていった。
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