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「……眠ぃょぅ」
魔王さまの元に帰ったのは少し遅かったけれど、それから日が昇るまで。
――それって一体、何時間?
本当に、いつ眠っているのかしら、魔王さまは。
例の如く、すでにお仕事でいらっしゃらないし。
……だめ、何も考えられない。
でも、眠いけど……ホテルにシェナを迎えに行かないと。
支配人も、私があそこに泊まってると思ってるだろうし。
ベッドの寝心地の、感想を聞かれるかもしれない。
「……着替え持って、跳んだら二度寝しよ」
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「お姉様。お疲れ様です」
ホテルの寝室に跳んで戻ると、まるで私が帰る時間を把握していたように、シェナが立っていた。
そして、おはようじゃなくて、おつかれさまだった。
「う、うん。ただいま」
「サラぁ……もどったのぉ? あなたもこっちで寝てみなさいよぉ。きもちぃぃ~からぁ」
リズは、まだ少しお酒が残っていそう。
また寝てしまったみたいだし。
「お姉様も、もう少しお休みください。ベッドは、一応整えておきましたので」
見ると、クイーンベッドは最初に見た時と同じ状態だった。
「そんなの気にしなくて良かったのに。どう? 気持ちよかった?」
「は、はい。とっても。魔王城のベッドも、気持ちいいですが、ここのもふかふかでした」
気恥ずかしそうに言うシェナが、また可愛い。
「一緒に寝ない? こういう時しか、そんな機会もないし」
そう言うと、シェナは以前のように、ふいと顔を背けた。
「あ……っと。シャワー……浴びてくる……ね」
顔を真っ赤にして、今度はうつむいて小さく頷くシェナ。
そういえば、魔王城で私が使うのは大浴場で、部屋にシャワーがない。
――だからいつも、億劫だったんだ。
なんて、言い訳してもダメよね。浴びてから来れば良かった……。
それにしても、こっちは雨か……。
吹きさらしのごとくに、天井と壁は透明なままだった。
昨日の星空とは打って変わって、重い雨雲が群を成して流れて来ている。
――まるで、降りしきる風雨の中に居るようで……不安とドキドキを浴びているみたい。
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