「ナイスショーット! 井上君、なかなかやるじゃない。やっぱりサッカーをやっていただけあるわねぇ」
井上の豪快なスイングを見て恵子が言った。
「ありがとうございます。でもサッカーとゴルフは全然違いますからねぇ、使う筋肉も違うし。明日は絶対筋肉痛だろうなぁ」
「フフッ、若いんだから回復力あるでしょう? まあココではあんまり面白味はないけど、コースでプレイすると気持ちいいよ~緑が多いしね~。それに井上君はいつもパソコンばっかり見てるんだから、たまには自然の中でリフレッシュしないと!」
「確かに……最近視力落ちてる気ぃしますもん。あー、俺も早く自然の中でプレーして―っ」
「井上君は筋がいいからすぐコースに出られるよ。その時は私が頼んであげるから深山さんに連れて行ってもらうといいわ」
恵子の言葉に井上の顔がパアッと明るくなる。
「マジっすか? だったら俺張り切っちゃいます」
井上は急にやる気を出して、7番アイアンを大きく振った。
「ナイスショーット! バッチリ!」
見事なスウィングに恵子が叫ぶ。
井上の打ったボールは勢いよく飛んで行き、向こう側のネットへ当たり跳ね返った。
(マジでやるじゃん)
感心した恵子は、それとなく井上を観察する。
今日の井上は、ゴルフウェア代わりに黒の短パンにグレーのTシャツを着ていた。
スポーツウェアのブランドは、サッカーファンに人気のものだ。
一方、恵子はベージュのゴルフ用ショートパンツに、薄ピンク色のポロシャツを着ていた。
どちらも有名なゴルフウェアブランドのもので、恵子によく似合っていた。
恵子は社内でジーンズ姿の井上しか見た事がなかったので、スポーツウェア姿の井上を見て新鮮な気がした。
普段はダブついた服の下に隠れている井上の肉体は、想像以上に逞しい。
厚い胸板や筋肉がついた太腿やふくらはぎを見ると、サッカーで相当鍛えていた事がわかる。
井上の体型は、まさに恵子の理想の体型だった。
更に井上のマッチョな身体は、見せかけだけでなく体幹がしっかりしているので、腰が安定してスイングにブレがない。
これはゴルフをやる上でかなりの強みだ。
(意外だわ……)
実際井上のスイングは、恵子が思っていた「オタクでドンくさい」というイメージとは正反対だった。
逞しい井上のスイングを目で追っていた恵子は、ふとこんな事を思う。
(この逞しい身体に抱き締められたらどんな感じかな?)
そこで恵子はハッとした。
(私ったら何を考えているの? 男日照りが続いているからって、あまりにも欲求不満過ぎじゃない?)
後輩に対し変な妄想を膨らませてしまった自分を戒める為に、恵子は両手をグーにして頬をぐりぐり押す。
そして姿勢を正してから、再び井上のスイングに集中した。
練習を始めてから、かれこれ三時間以上が経過していた。
二人とも汗びっしょりだ。
幸いこの練習場にはシャワールームが完備されているので、帰りはシャワーを浴びて帰れる。
「そろそろ終わりにしよっか?」
「ういっす」
練習場に隣接した公園の木々からは、賑やかな蝉の鳴き声が響いている。
二人はテーブルの上にあるペットボトルや道具類を片付け始めた。
片付けながら恵子が言った。
「ゴルフを続ける気があるなら、ゴルフクラブも揃えなくちゃね」
「マジでやりたいっす。クラブ選びも付き合ってもらってもいいっすか?」
「いいわよ。あ、でも私は男性用のクラブはあまり詳しくないから、一緒にお店へ行って店員さんに聞く感じだけどそれでもいい?」
「もちろんっす」
二人は荷物をまとめると、フロントへ向かった。
借りていたクラブを井上が返却してから、二人はシャワールームへ向かった。
シャワー後にフロント脇の休憩所で待ち合わせる事にした。
恵子はシャワーを終えると、今日着て来たワンピースに着替える。
ブルーグレーのノースリーブのワンピースは、日焼けした健康的な恵子によく似合っていた。
実はこのワンピース、買ったのは先月なのに今日まで出番がなかった。
それもそのはず、恵子は最近合コンにも参加してない。
10歳年上の浮気男と別れてから、恵子は少し男性不信気味になっている。
だから以前のように積極的に出会いを探そうという気持ちは失せていた。
表面上は明るく振る舞っていたが、実は恵子はまだ失恋のダメージから抜け切れていない。
結婚すると思っていた相手と、突然30を過ぎて別れたのだ。無理もないだろう。
(まあでも、今日このワンピースを着てみようって思えただけ進歩かな?)
恵子は鼻歌を歌いながらウェーブのかかった髪にドライヤーを当てる。
そこで恵子はふと考えた。
(この後どうしよう。先輩として食事にでも誘うべきなのかな?)
暑い中身体を動かしたので、恵子はかなりお腹が空いていた。
きっと井上も同じだろう。
(でも誘ってもし「俺はそんなつもりじゃないんで」とか言われたらショックだなぁ。セクハラ……いやパワハラって受け取られても困るしなぁ……うーん、今時の若い子の扱いは悩むなぁ……)
散々悩んだ後、このまま誘わないのもどうかと思い、恵子は先輩として気軽に誘ってみる事にした。
休憩所へ行くと、既に井上は来ていた。井上は椅子に座って携帯を見ている。
そこで恵子はまた井上を観察した。
今日の井上は、いつものダボッとしたカジュアルな服装ではなく、ライトグレーのストレッチパンツに白シャツを着ていた。
きちんとした格好の井上は、少し大人びて見えた。
シャワーの後の少し湿った髪と右耳のピアスがなんともセクシーだ。
(え? この子こんなにイケてたっけ?)
恵子はドキドキする。
(普段からこういう格好をしてたらもっとモテるのに。そういえば三上さんのピンチヒッター以来、井上君の人気が急上昇中だって誰かが言ってたわ。会社でモテるんだもの、きっとプライベートでも人気者なんだろうなぁ)
そんな事を考えながら歩いて行くと、恵子に気付いた井上が顔を上げた。
コメント
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セクシーな井上くんを見て、妄想が膨らんでしまう恵子さん♡(///ω///) ウフフ....大丈夫よ....😁 たぶん井上くんも 可愛い恵子さんを見て、妄想でいっぱいになってるよ~♡( *´艸`)
ギャップ萌え♥セクシィ~井上💕これは恵子さんのハートはガッツリ持っていかれますな😍
井上君、なんだかセクシーだなぁ💕