羽 多 野 「 羽希 、 発見 」
階段に足を掛けたと同時に頭上で声がした
数段上に立つ彼は登校の疲れを
飛ばす程の笑顔を魅せる
汐 依 「 先輩 、 おはよう御座います 」
今日は梅雨前の独特な気温だった
先輩を見付けて体温は上昇する
羽 多 野 「 おはよ 笑 」
5月だね ー 、 なんて呑気な先輩
汐 依 「 先輩は夏が似合いそうですね 」
羽 多 野 「 俺 、 体育教師じゃない 」
先輩は冗談も言うらしい
今日もHR開始10分前のチャイムが鳴る
彼が目の前に居ると授業に行きたくなくなる
あの空間に行きたくなくなる
羽 多 野 「 羽希ってサボるタイプ ? 」
汐 依 「 サボりは無いです 、 ね 」
怒られるので 、 なんて付け足しておく 。
きっと先輩は先生に怒られると思っている
違うのに 。
私は ‘ 彼奴ら ’ に怒られるのに
羽 多 野 「 へ ー 、 真面目 ? 」
ほら 、 気付いてない 。
汐 依 「 さぁ ? 笑 」
そう言えば先輩は拗ねた様な顔でこう言う
羽 多 野 「 着いて来てよ 」
我儘な王子様がお淑やかなお姫様に言う様な
そんな台詞 。
私はお姫様でも無い癖にこう答える
汐 依 「 仕方が無いので良いですよ 」
少々尖った様な言い方は
やっぱりお姫様なんかじゃない
それでも先輩は心底嬉しそうにして
笑顔で私の手を引いてゆく 。
解こうと思えば簡単に解ける手
それでも解かない
解けない 。
羽 多 野 「 此処 、 空き教室なんだ 」
そう言って入る廊下突き当たりの教室
薄暗い中に辛うじて入り込む陽の光
埃を被った机が妙に懐かしく感じた
汐 依 「 よく来るんですか ? 」
何の意味も無く聞いた
恐らく此れは間違いだった
羽 多 野 「 … 疲れた時に来て良いよ 」
まるで私の質問は無かったかの様に答えない
そして只 、 優しい台詞を放つ
何処か何故か恐い 。
これは優しい人に共通する事
何か言わないと駄目な気がして口を開く
汐 依 「 有難う御座います 、 笑 」
辛うじて創った笑顔は何処か不自然だった 。
コメント
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報告 ? は出してませんが 、 フォロワー様900人有難う御座います 💖 語ってくれたり 参考にしてくれたり 絡んでくれたり いつも勝手に喜んでます 笑 浮上疎らですが 、 これからも物語読んで下さい 🙃 (