テラーノベル
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デュラハン王国、王室。
重厚な扉の向こうから、兵士が駆け込んでくる。
「テッード様、報告を」
玉座に座るテッードは、ゆっくりと顔を上げた。
「状況が変わったか」
「はい。どうやら、また徐々に押され始めたかと」
報告兵は淡々と告げる。
戦況が悪化しているというのに、焦った様子はない。
まるで、それすらも想定内だったかのように。
テッードはしばらく黙っていた。
そして、
「……そろそろ頃合いか」
玉座から立ち上がる。
「報告兵!」
「はっ!」
「隊長達に知らせろ」
テッードは窓の外へ視線を向ける。
砂煙の向こう。
そこには、ロストウィルム軍の陣地が見えていた。
「〈砂を許可する〉とな」
「承知!」
報告兵は一礼すると、急ぎ王室を出ていった。
静かになった王室。
テッードは一人、窓の外を眺める。
やがて、口元がわずかに歪んだ。
「……さぁ」
遠くで、戦場を覆う砂煙が大きく揺れる。
「どう来るか、ロストよ」
テッードは薄く笑った。
一方、デュラハン市街地。
街はえらく賑やかで、商売も盛んだった。
「いらっしゃい!」
「そこの兄ちゃん、見ていかないか!」
「今日は砂糖菓子が安いぞ!」
戦争の真っ最中とは思えないほど、街には活気があった。
そんな大通りを、一人の男が憂鬱そうに歩いている。
レイン・クロウ。
「…………」
彼は今、アルドによってデュラハンの市街地へ転送されていた。
なぜここなのか。
なぜ戦場から離されたのか。
理由は分からない。
ただ一つ分かっているのは、自分が現在、敵国のど真ん中にいるということ。
「……早く帰らなければ」
一刻も早く、ロストウィルムへ。
そして戦場へ戻らなければならない。
しかし、土地勘などあるはずもない。
レインは途方もなく、賑やかな街を歩き続けていた。
すると、少し横にある店から何やらコソコソと話す声が聞こえてきた。
「…………」
レインは一瞬だけ視線を向ける。
何を言っているのかまでは聞き取れない。
仕事柄、こういう小さな声には気になるところがあった。
だが、
「……今はどうでもいい」
レインはそのまま歩き続けた。
そして数分後。
「なあ、あんた」
突然、声をかけられた。
「どうした? そんなくたくたになってよ」
レインが振り向く。
一人ではない。
「……」
一人。
二人。
三人。
四人。
五人。
「五人か……」
レインは警戒する。
金目当てか。
それとも、何か別の目的があるのか。
「おーっさん! 大丈夫か? 俺らのこと見えてる?」
今度は別の男が話しかけてきた。
細身で、長い髪。
レインの目の前まで来ると、顔の前で手をひらひらと振ってくる。
「…………」
「おーい?」
「すまない。ちょっと急ぎがあるんだ」
レインは男を避け、そのまま歩き出した。
だが、
「おい!」
別の男が動いた。
レインの肩へ、わざとぶつかる。
ドンッ。
「いてて……おい、何しやがる!?」
レインは振り返らない。
そのまま歩く。
「おい! 無視すんじゃねぇ!」
男が拳を振り上げる。
ブンッ!
しかし、
レインは歩きながら、ほんの少し身体を横へずらした。
拳は空を切る。
「は?」
男が固まる。
「なんだこいつ……」
「ちっ!」
別の男がすかさずレインの足を狙った。
「どけ!」
足払い。
だが、
レインは軽く跳んだ。
ヒュッ。
そのまま着地。
何事もなかったかのように、
一歩。
また一歩。
歩いていく。
「クソッ! 待てコラァ!」
先ほどの細身の男が叫ぶ。
だが、その男を別の男が腕を掴んで止めた。
「なんだよ!」
細身の男は、自分を止めた手を乱暴に払いのける。
当然だった。
最初に見つけた獲物。
それを横から奪われるような形になったのだから。
「……お前」
止めた男が、低い声で言う。
「感じなかったのか?」
「……何をだよ」
男はレインの背中を見る。
「使えるようになってるぞ」
「……!」
その瞬間。
ふわっ。
砂が舞った。
「…………」
レインは歩き続ける。
その足元から、砂埃が少しずつ広がっていく。
「ふっ……」
誰かの口から、笑い声が漏れた。
「ふっ、ふふ……」
次第に笑みがこぼれていく。
まるで、待ち望んでいたものを見つけたかのように。
一方、レインは気づいていない。
「……砂埃が増えてきたな」
先ほどまで見えていた街並みが、少しずつ霞んでいく。
風が吹く。
ザァァァ……。
砂が舞い上がる。
視界が悪くなっていく。
「……?」
先ほどより、砂埃が増えている。
視界が少しずつ悪くなっていく。
「なんだ……この砂は」
さらに歩く。
しかし。
突然。
ゴォッ!!
大量の砂埃がレインへ襲いかかった。
「ぐっ……!」
レインは腕で顔を覆う。
「なんだ、これは!?」
砂が身体にまとわりつき、呼吸すらままならない。
「くっ……!」
しかも、おかしい。
周囲の人間には何も起きていない。
砂は明らかに、レインだけを狙っている。
「これは……!?」
その瞬間。
グッ!
何者かに首根っこを掴まれた。
「なっ……!」
身体が引っ張られる。
砂埃の中を、レインの身体が引きずられていく。
「離せ!」
だが声は砂にかき消される。
そして。
ドンッ!!
建物の壁に叩きつけられた。
「がっ……!」
レインの身体が崩れ落ちる。
「…………」
数秒後。
レインはゆっくりと目を開けた。
「……ここは」
そこは先ほどまでいた大通りではない。
狭い路地裏。
周囲を建物に囲まれている。
そして。
「どうも」
目の前に立っていたのは、先ほどの五人だった。
「ゲホッ……ゲホッ……!」
レインは咳き込みながら、周囲を確認する。
確かに、ほんの少し前まで市街地にいた。
「……あの砂埃」
レインは目を細める。
「お前らの能力か」
細身の男が笑う。
「さっきはまぁ……舐めたことをしてくれたな」
一歩。
レインへ近づく。
「だが残念」
さらに一歩。
「今だけは、少し違うぞ」
男は手を伸ばす。
「さっさと持ち金、全部よこせばよかったのにな」
そして、手のひらをレインへ向ける。
「アンタが悪いんだぜ」
ザァァァッ!!
男の手のひらから、大量の砂が噴き出した。
砂の塊が一気にレインへ襲いかかる。
「……!」
レインの目が鋭くなる。
「こんなところで……!」
砂が目前まで迫る。
数秒後大きな音がなるが町は何も気には
しなかった。
桜城
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#SFファンタジー
星崎 ヒロア
1,117
#オリキャラ
須古星 れい
470
コメント
1件
第39話、読み終わりました……。 テッードの「砂を許可する」って台詞、すごく重みがあって鳥肌立ちました。あれがどういう意味なのか、まだ完全には見えてこないけど、ただの戦術じゃなくて何かもっと深い策がありそうでゾクゾクします。 一方レインが敵国のど真ん中に放り込まれて、しかも砂使いの連中に狙われてる……「今だけは違うぞ」ってセリフが不気味で、彼が気づいてない“何か”が進行してる感じがたまらないです。 次が気になりすぎます……!