テラーノベル
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『暖かな静寂で雨を零して』の続編です
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目黒side
「翔太くん」
どれほどの時間が経ったのか
悠久にも思える時間を、お互いの息づかいだけを感じながら過ごして
俺たちと、俺たち2人を包む空気とが、溶けて混ざり合って暖かく揺蕩う中に浮かんで
ずっと想い続けてきた愛しい人が、腕の中にいる歓びを噛み締めて
俺はようやく口を開いた
ずっと黙っていたせいで声が少し低く掠れる
俺の声に反応して見上げてくる穏やかな瞳に、自分の姿が映り込む
「ん、めめ……いや」
返ってきた翔太くんの声も掠れてる
少し照れくさそうなはにかみに見惚れる
頬に手が優しく添えられる
そして
「蓮」
俺の名前を呼んでくれた
そのたった二音は、誰がくれたどんな言葉よりも、宝物みたいに煌めいていた
もう一度、強く抱き寄せた後、そっとおでこを合わせると、女神のような柔和な笑みが視界いっぱいに広がる
「翔太くん」
「うん?どうした?」
「………キス、したい」
「うん」
繊細な睫毛が静かに弧を描くのが、やけにゆっくりと鮮明に感じられる
その優美な美しさに惹き寄せられるようにして唇を重ねた
優しく触れるだけのキス
ずっと、ずっとずっと欲しかったその一瞬の熱は甘やかで、歓喜に心が震える
「ふふふ、なんか照れるな」
「俺は、嬉しいよ」
「……待たせたな」
「ううん、いいの。そんなことは。今ここに翔太くんがいるから」
「蓮、ありがとう。大好きだよ」
「俺も。翔太くんを愛してる」
「ふふふ、しあわせ」
「うん、しあわせ」
「コーヒー飲もうか」
「うん」
「体冷えてない?」
「大丈夫だ。蓮があっためてくれたから」
「可愛いこと言うんだから」
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