テラーノベル
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「はい、これで約束の百万G。きっちり持ってきたっすよ」
俺は宿屋のカウンターに、エルムから受けとったばかりの金貨が入った袋をドン!と叩きつけた。
「なっ……!? ば、馬鹿なっ! たった一日で百万Gも稼げるわけが……っ!?」
「そのまさかっすよ。受け取ってください」
「嘘だ! 一体どうしたんだ、そんな……金どこかで盗んできたのか!?」
宿屋の親父は目をひん剥いてカウンターの上の金貨と俺の顔を交互に見比べた。
まさか俺たちが一日で大金を用意できると思っていなかったのだろう。物凄い慌てようだ。
そんな親父の横には、いかにも柄の悪そうな派手な装飾品をジャラジャラとつけた男が立っていた。
「おい、親父。極上の女奴隷が二人手に入るって話でわざわざ来てやったんだ。まさか借金を返されたから商品は無し、なんてふざけたこと言わねぇよな?」
(奴隷……? やはりサフランとティアレを宿の中に連れてこなくて正解だったな)
男が親父の胸ぐらを掴み上げる。
「ま、待ってくれ。 これは想定外で……っ!」
「おい、俺がせっかく予定を空けているんだ! 手ぶらじゃ帰れねぇぞ?」
「ひぃぃぃぃっ!!」
「そうだな、奴隷が手にはいんねぇなら、前金は返してもらおうか。あと慰謝料五百万Gだ」
「ご、五百万G……!?!?」
親父は涙目になってガタガタと震え出した。俺は震える親父の手から預けていたサフランの大剣と、俺とティアレのお金の入った小袋を奪い返した。
「それじゃ、俺たちの取引はこれで完了っす。大金も有り金も、確かに返してもらったっすよ」
「ま。待ってくれ! その金貨、ちょっとだけでいいから貸して……」
「え……?」
「その……お金、足りなくて……」
急に親父が弱気な声を上げ出した。すると、商人は親父に詰め寄った。
「払えねぇのか? それともお前が奴隷になるか?」
「ひぃっっ!!!」
俺は奴隷商人に詰め寄られて泣き叫ぶ親父を完全にスルーして、背を向けた。
「ま、待ってくれ! その金貨、ちょっとだけでいい! ちょっとだけでいいから貸してくれ!」
「は? 自分でなんとかするっすね。じゃ、お元気で」
俺が宿屋から出ると、サフランとティアレが大喜びで迎えてくれた。
「やったぁ! 私の剣が戻ってきた!」
「よかった、僕のお金も無事だ」
サフランが背中に大剣を背負い、ティアレが小袋をぎゅっと握りしめた。
俺は喜んでいる二人の様子を見てホッと胸を撫で下ろした。
――
屋敷に戻ると、俺たちは凄まじい大歓迎を受けた。
「おおおっ、よくぞ戻られたユウト殿!」
「君たちのおかげで我が家の名誉は守られた。さぁ今夜は盛大に祝おう!」
エルムとアルダーが満面の笑みで出迎えてくれた。
さらには飛竜討伐の際に大怪我を負った料理人まで包帯まみれの姿で涙を流して喜んでいた。
「僕の代わりにあんな見事な料理を……! エルム様の面目を保っていただき、本当にありがとうございますぅぅっ!!」
「わ、無理しちゃだめっすよ」
俺は慌てて彼の元に駆け寄った。
「僕はアカシア。この屋敷の料理人兼槍使いでした。僕が不甲斐なく怪我をしたせいでユウト殿には無理をさせてしまいました」
「そ、そんな。いいっすよ。気にしないで……」
面と向かってそんなにお礼を言われると、なんだか照れ臭くなる。俺は思わず目線を逸らした。
「本当は僕が料理を振る舞いたいところですが、こんな状態ですので……屋敷のメイドたちが作ってくれました」
豪華な料理が並ぶテーブルを囲み、宴が始まった。
「わぁーっ、美味しそうだよ、ユウト!」
「凄い量のご馳走だ……!」
サフランもティアレも豪華な料理を前に感激していた。
食事の間、俺はふと屋敷のメイド長に話しかけ、ある交渉をこっそりと済ませていた。
「サフラン。ティアレ。いっぱい食べた後は、お風呂にでも入ってきたらどうっすか? エルム様が屋敷の大浴場を自由に使っていいって言ってくれてたんで」
俺がそう言うと、二人は顔を輝かせた。
「えっ、大浴場!? 入る入る!」
「僕がサフランと一緒に、お風呂……」
「先に行ってていいっすよ。俺はちょっと別でワクワクする用事があるんで」
俺はニヤニヤと笑いながら二人を大浴場へ送り出した。
――
屋敷の地下にある大浴場は公衆浴場のように広く豪華な造りだった。炎の魔法使いがお湯を沸かしているらしい。
「ユウト、なんだか楽しそうだったね」
「そうだね。僕たちのお風呂の覗きでもするんじゃない?」
「えぇ!? の、覗き……!?」
サフランは顔を真っ赤にして大袈裟に驚いた。
そして僕はサフランと一緒に脱衣所に向かった。サフランは服を脱ぎながら何故かソワソワと落ち着かない様子だった。脱いだ服をカゴに入れると顔を真っ赤にしてモジモジしている。
(どうしたんだろう)
サフランは全ての服を脱いだ後、何故か大浴場の扉ではなく、さっき入ってきたばかりの出口の扉に向かって歩きだした。
「待ってサフラン!? お風呂はあっちだよ! 服脱いでどこ行くの!?」
「えぇっ!? あ、あぁ……間違えちゃった」
僕がつっこむとサフランは我に返って慌てて引き返してきた。そして、逃げるように大浴場のお湯に飛び込んだ。
コメント
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「第20話、借金返済でスカッとしましたね!親父が逆に詰められる展開、まさかの伏線回収という感じで痛快でした。最後のサフランの天然ボケ、脱衣所で間違えて戻ろうとする姿が可愛くて思わず笑っちゃいました。ユウトのクールな対応と仲間たちとの温かい空気がいいバランスで、読んでて気持ち良かったです!」
#恋愛
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