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「優子っ……! 大丈夫か!?」
「だっ…………大丈夫……です……」
廉が、スーツの上着を羽織ったままの優子を、胸に引き寄せた。
メインルームに残された二人は、ソファーに腰を下ろして身を寄せ合っている。
「専務の上着………汚してしまって…………すみません……」
「そんな事、気にしなくていい」
高級スーツの裏地が白皙の肌に貼り付き、彼女は、いたたまれない気持ちに襲われる。
「あっ……あの…………服を着てきますね」
優子は、彼の腕から離れると、床に散らばった服と下着を拾い、足早にベッドルームへ入った。
手早く着替えを済ませた優子が、メインルームに戻ると、廉は、俯きながら両膝の上に手を組んでいる。
「専務」
「…………っ」
彼女が廉の前に立ち、上着を差し出すと、すぐさま逞しい腕に華奢な身体を包み込まれた。
「……優子っ」
長い指先が、爪痕が仄かに残る顎に掛けられると、廉に唇を重ねられた。
優子の唇を慈しむように、触れるだけのキスを幾度も落とすと、彼は、焦らすように顔を離す。
「私…………」
ネクタイのノットを見つめた後、彼女は、おぼつかない様子で廉へ眼差しを向ける。
「優子? どうした?」
「…………週明けに、ここを……出ていきます。あの男も……」
廉の面差しが驚きの色に変化したように、優子は見えた。
「…………行く当ては……あるのか?」
「…………」
彼から問われた彼女は、俯き加減で無言のまま、ぎこちなく首を横に振る。
「…………そうか」
廉は、額に貼りついた優子の前髪を指先で掬い取ると、唇を押し当てる。
「…………ならば」
廉が前髪を掻き上げ、スライドドアに映る夜景へ視線を向けながら、考えを巡らせる。
瞳を伏せたままの彼女を見下ろし、アッシュブラウンの頭を、そっと撫でた。