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「その日以来、俺は誰に対しても平等に接しようって思ってた。誰のことも好きにならない。誰にも期待させない。……って思ってたけど、紗南ちゃんに対しては無理だったみたいだね」
「先輩……」
いつも完璧で、誰にでも優しい「理想のお兄ちゃん」だった先輩が、こんなにも臆病な過去を抱えていたなんて。
「俺さ、変わりたい。紗南ちゃんに告白された時、本当は嬉しかった。なのに過去の自分が一気に押し寄せてきて、告白を受け止めきれなかった。いや、こんなの言い訳でしかないけど。ほんとは怖かったんだよね」
先輩は立ち止まり、真っ直ぐに私を見つめた。
「でも俺、紗南ちゃんのこと本気だから。フった自分は最低だけど、ちゃんと向き合うから。だから、完全に俺を諦めるのは、まだ待ってくれない?」
先輩の「弱さ」に触れた瞬間、私の中にあった意地のようなものが、ゆっくりと溶けていくのが分かった。
「……私、先輩の弱い所を知れて良かったです。今まで、強い部分しか知らなかったから。先輩のことも、遥のこともちゃんと向き合います。それからちゃんと答えを出します」
私の言葉に、先輩は安堵したように、でもどこか引き締まった表情で頷いた。
でも、この時の私はまだ気づいていなかった。その様子を、少し離れた街灯の影で、遥がどんな思いで見つめていたのかを。