テラーノベル
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「来ていただいてありがとう。私が依頼者です」
画面に映った男はいくつものモニターの前に座り、逆光で顔がほとんどわからなかった。声も電子音で加工している。
「事情があって顔を公にできない無礼をお許しください」
大牙は画面を凝視した。暗くてよく見えないが男はサングラスをかけていて、手元にはノートパソコンが置いてある。
「今日お呼びしたのは、ある事件を解決していただきたいからです」
「何の事件をですか?」
薫が尋ねると、依頼人のフッと笑う声が聞こえてきた。
「それをつかむのも、あなたたちの仕事なんですよ」
「え?」
「これからいくつかのヒントを出します。それを基に推理をし、事件を解決してください」
「しかし、どうしてそれを私に……」
「あなたで五人目なんですよ、依頼した探偵は」
「それで、前の四人は?」
「一人はまだ調査中……二人は辞めてもらい、もう一人は事件を解決できずにここにいます」
依頼人がそう言うと、手元のノートパソコンのキーボードを叩く。するとモニターの画面が変わり、コンクリートに囲まれた密室が映し出された。部屋の中央には机とパイプ椅子が置かれ、チャラそうな一人の男が不貞腐れたように座っている。
「竜!」
「知ってる人?」
大牙が尋ねると、薫は「ああ」と頷いた。
「前に一緒に仕事をしたことがある探偵だ」
モニターに映し出されている竜は椅子から立ち上がり、苛立ったように周囲を見渡す。
『調査報告書を渡しただろ! いつまでこんなところに閉じ込めておく気なんだ! 早く出せ!!』
『竜探偵……あなたは事件を解決できなかった』
モニターから依頼主の声が聞こえたかと思うと、画面が二分割されて片方に再び依頼人が映った。
『なんだと!?』
『無能な探偵は生きている資格がない』
依頼人がパソコンのエンターキーを押すと、竜の手首で何かが点滅する。
『な、なんだこりゃ』
大牙と薫はモニターを凝視した。画面がズームアップされ、竜の手首を映す。
「僕たちのと同じIDだ」
「ああ」
竜の手首につけられた腕時計型のIDは赤いランプが点滅し、表示された数字がカウントダウンしている。
『くそ! どうなってんだ、こりゃ』
慌ててIDを外そうとしたが、ロックされていて外れない。
『大丈夫、痛くありません。一瞬で楽になる』
『ま、まさか、茂木や槍田が姿を消したのも』
『さようなら……竜探偵』
依頼人が言い放つと、モニター画面は竜だけになった。
『お、おい! 待て! くそっ!』
必死にIDベルト部分を引っ張った。しかしIDは頑丈にできていて壊れそうにない。その間にも十一、十、九……と刻々とカウントダウンされていく。
「竜……!」
薫は奥歯を噛み締めながら、モニターを凝視した。
『うっ、くそっ! うっ!』
竜は額に汗を浮かべ、力いっぱい何度もベルト部分を引っ張った。しかしIDは外れることなく、数字だけが無情に減っていく。
そしてカウントダウンがゼロになった瞬間。爆発音と共に閃光が走り、画面が真っ白になった。
「!!」
大牙と薫が砂嵐状態の画面を愕然と見つめていると、再び依頼人が映し出される。
「コンポジション4……つまり、プラスチック爆弾が組み込まれていたんです。竜探偵が腕につけていたミラクルランドIDにね」
「おい、さっき竜が言ってた茂木や槍田って」
「ええ、世間では名探偵ともてはやされていたお二人です。彼らも私の貴重な時間を浪費した愚か者でしたがね」
「何だと?」
彼はモニター画面の依頼人を睨みつけて、奥歯を噛み締めた。
「あなたたちに与えられた時間は今夜十時まで。それまでにある事件の真相を掴んでください。もし、時間までに解決できなければ……あなたたちのIDも爆発して、竜探偵の後を追うことになる」
「何っ!?」
薫は、腕のIDを思いっきり引っ張って外そうとする。
「やめた方がいい。ちょっとやそっとのことでIDは外れやしませんし、仮に私が解除しないうちに外してしまえば、すぐさま爆発してしまいます」
「くっ……貴様ァ」
彼はモニター画面の依頼人を睨みつけ、隣に座っていた大牙がハッとした。
「美優……っ!」
美優や子供たちも同じIDをつけているのだ。
「そうだ! 美優たちは! あいつらがつけたIDは!」
「子供たちのIDも、あなたたちとほぼ同じものです」
「何だと!?」
薫は怒りのあまり立ち上がる。
(ほぼ……?)
大牙は依頼人の言葉に引っかかった。
「彼らのIDには一つ機能が追加されてましてね」
依頼人がそう言うと、パソコンのキーボードを叩く。すると、モニター画面にミラクルランドの見取り図が表示された。その境界線が光り、点滅している。
「ミラクルランドを縁取るように、いくつかのセンサーが設置されています。彼らのIDがミラクルランド内に入ると、センサーがそれを感知して起爆装置がオンになります」
モニター画面に緑色の光点が現れ、ミラクルランド敷地内に移動すると黄色に変わった。
「そしてミラクルランドを出ようと再びセンサーの間を通ると同時に、爆発する」
黄色い点が敷地から出ると赤色に変わり、大きく膨れ上がって消滅する。
「彼らの分までいちいち追跡するのは面倒なんでね。こうさせてもらったんですよ」
「くっ!」
大牙は即座にテーブルを乗り越え、テラスなら飛び出した。手すりの間から顔を出して、ミラクルランドを見下ろす。入り口ゲートには続々と入場者が詰めかけて、その中に美優の姿を見つけた。
「美優!」
ポケットから探偵バッチを取り出し、スイッチを入れる。
「凛! 聞こえるか!? 凛!」
応答を待っている間にも美優は入り口ゲートに近づき、今まさに入ろうとしている。
「くっそ! 凛! 凛!!」
『何?』
ようやく彼女からの応答があった。
「凛! 中に入るな!」
『どうしたの?』
「いいからみんなを止めてくれ! 中に入るな!!」
『そんなこと言っても……もう入ってるけど』
「!!」
愕然としてゲートを見る。
凛はゲートを入ったすぐ近くに立っていて、元気や菜緒たちも別のゲートから入っていた。
コメント
1件
第2話、一気に緊迫しましたね!依頼人の不気味な雰囲気と、ID爆弾のデスゲーム展開がゾクゾクします。特に竜探偵があっけなく爆♡♡♡れるシーンは衝撃的でした…。美優たちがすでに園内に入ってしまったラストの焦燥感も見事で、次の展開が気になって仕方ないです!
#鬼滅の刃
サンフラワー
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