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魔王城が現れて病院内は慌ただしくなっていた。病室から出た直樹とミコットは物々しい雰囲気が漂う廊下を歩いていた。
「くそっ、いつになったら連絡が取れるんだ」
「家族にも会えてないのに……」
不安の声がどこからも聞こえてくる。この悲劇は魔王を倒さない限り続くのだろうか。
早く拓海たちを探さないと手遅れになるかもしれない。
「……行かないと」
「どこにですか?」
「友達を探してるんだ。無事だといいけど……」
「私も一緒に行っていいですか?恩返しさせて下さい」
異世界人に遭遇しても、ミコットの力があればなんとかなるかもしれない。戦えない直樹にはこれから依存するしかない戦力だった。
「ありがとう、助かるよ」
この避難所のリーダーである医師の山田さんにその事を伝えると、危険だと言われたがミコットがいるからと言いなんとか了承してくれた。
「この中に応急手当ができる物がいくつか入っている。使ってくれ」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
すると救助ヘリを待っていた自衛隊が直樹に声をかける。
「君は子供たちを助けるために自ら危険を犯して戦ったと聞いたが……これからも戦うつもりなのか? 」
直樹は心の中でもう一度唱える。
──俺には戦う力は無い。
だけど、この世界が終末になってからの事を思い出す。命を見捨て、死にかけて、果たす役目を持ち、人を救った。
「……はい。俺は、人を助けるために果たすべき役目を全《まっと》うします」
──俺は恐怖と戦わない
それが生きるための誓いだった。
「……そうか。なら、これを……」
そう言って渡された物は一丁の拳銃だった。拳銃を見た瞬間、感知とは違く背筋が冷たくなった。
「約束して欲しい。これは人を助けるために使うことを、君を信頼しているから渡したいんだ」
「……」
この信頼というこの言葉には重みがある。この人は自分がなにをしているのか分かっていて直樹に拳銃を渡した。まるで拳銃を握る重みがこの人が負う責任であるかのように。
「ただし、弾は3発だ。……無事を祈る」
「本当に……ありがとうございます」
「お兄さん必ず戻ってきてね!」
「あぁ、必ず戻ってくるよ」
そして直樹とミコットは拓海達を探すため、最初の避難所へと向かった。
・ ・ ・
ミコットと戦って分かった。この力は魔王に操られた異世界人を救うことができるということを。つまり、異世界人を助けて仲間にすれば戦力にできる。これが自分だけの戦い方になると考えた。
現にモンスターが現れたらミコットの炎で倒している。しかし、気味が悪いほど異世界人と遭遇することはなかった。ミコットだけじゃ黒い騎士と戦うことになっても時間すら稼げない。もっと戦力が必要だった。
「ナオキは不思議な力を持っているよね」
「実は俺もあまりよく分かってないんだ。
元々持ってたようだけど、戦うための力ではないと思う。だから、ミコットのだけが頼りなんだ」
「任せてください!私の炎で守ってみせます!」
この世界で初めての安心を手にした直樹はミコットを心強く思っていた。ミコットがいなかったらこうして堂々と町すら歩けなかっただろう。魔法という未知の力をいつどこで敵に使われるか分からないのだから。
「よぉ、神代」
自分を呼ぶ声が背後から聞こえた。しかしその声に違和感があった。背後ではなく、まるで遠い場所から聞こえたようだった。
後ろを振り返ると誰もいなかったが人の影があった。空を見ると、そこには信じられない人物がいた。
「なんで……お前が……!?」
「久しぶりだな。あの時の事、覚えてるよなぁ?」
そこには清水寺で死んだはずの藤本が宙に浮いて直樹を見下ろしていた。
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