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私は個人で絵のモデルをやっている。今日は家の近くの絵画教室でヌードモデルのお仕事だ。ここはすぐに帰れるから便利、なんだけど、今日は台風が近づいているらしい。うーん、帰りまで雨が降らないといいんだけど。
お仕事が始まってしばらくすると、先生がスマホを見ながら、
「あれー、台風の進路がずれて、予定よりかなり早く台風が来るらしい。というか、もう来ているらしいよ」
確かに、外はひどい雨風だ。
「もうみんな、荷物は後で取りに来ればいいから、そのままにして帰ろう。小鳥遊さんもお疲れさま」
「あっ、はい」
ということで急に帰ることになった。みんなもパタパタ帰っていく。私は服を着ないと帰れないので、バスタオルをまとって隣りの部屋へ。通路をはさんでるから、ちょっと不便。……って、あれ? 鍵が開かない? なんでだろう?
もしかして、台風で管理人さんが早めに鍵をかけちゃったとか? ううーん? いったんアトリエまで戻ってみたけど、もう誰もいなかった。どうしよう……。このままここで一晩過ごす? それもなぁ。仕方ない、この格好のまま、歩いて帰るしかないか。
とぼとぼとビルから出て歩き始める。さすがにこの大雨の中、人は誰もいない。そしてびしょ濡れになりながら家を目指す。普通なら歩いても20分くらいだけど、それは街の中を通った場合だ。さすがに、裸でそれはちょっと……。仕方ない、遠回りしよう。
そうして10分ほど歩いただろうか。ふと気が付くと、目の前に大きな川が流れていた。あー、これじゃ通れないね。橋を渡るにも、すごい勢いで流れる水が邪魔をして渡れなさそうだ。 こりゃまずい。他の道を探さないと……。仕方なく、また来た道を戻ることにした。
……けっこう時間が経ったてしまった。すっかり辺りは真っ暗になっている。街灯もない暗い夜道を歩いているうちに、だんだん怖くなってきた。しかも、雨が強くなっている気がする。バスタオルはびしょびしょだ。
人もいないし、もう全裸でもいいかなって気がしてきた……。……でもダメ! やっぱりこんなところで全裸になるなんてできない。それに誰かに見られたら恥ずかしいし。いや、バスタオル一枚で歩いているところ見られても、恥ずかしいんだけどね……。ああ、なんかいい方法はないかなぁ。
そんなことを考えていると、いつの間にか大きな川の土手までたどり着いていた。ここは道がなく、草むらが続いているだけなので、とてもじゃないけど歩けるような場所ではない。とりあえずどこか座れる場所はないかと探してみると、少し先に、川に面した小さな小屋があるのを見つけた。なんだろ?……行ってみよう。
……これは倉庫なのかな? 扉に手をかけたけど、鍵がかかっている。そりゃそうか。……あっ!
扉を開けようと片手を放していたとき、突風が吹いて、バスタオルを持って行かれてしまった。ああっ、私の最後の砦がっ!! ううっ……しかたない、ここからは真っ裸だ……。ついてない。
……ここにいてもしょうがない、先に進もう。(続く)