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出掛ける準備が出来ると、瑠璃子はタクシーを呼んでラベンダーの丘へ向かった。

約束の10時まではあと20分しかなかった。


瑠璃子の手には手作りのガトーショコラが入った袋がしっかりと握られている。

先ほどまで降っていた雪はやみ、太陽の薄日が辺りを柔らかく照らしていた。


瑠璃子が告げた目的地を聞いて運転手はこう話し始める。


「あのラベンダー農園はよぉ、俺の知り合いが管理を任されているんだよ」

「そうなんですか?」

「うん。なんでもあの農園の持ち主の婆さんの死後宅地開発の話が持ちかけられたらしいんだよ。でも相続した孫だかなんだかが絶対に売らないって言って今も残しているんだとさ。勿体ないよなぁ」

「…………」


大輔があの土地を売らなかったのは今日の為に残しておきたかったのでは? そう考えると瑠璃子の胸には熱いものがこみ上げてくる。


「そんでよぉ、なぜか冬も除雪しておいてくれって言われているみたいでさぁ。ラベンダーの見頃は夏だろう? だから冬にあそこに来る奴なんていないのに、いつでも雪を避けて人が入れるようにしておけって頼まれてるんだとさ」


運転手は訳がわからないといった顔をしていたが、瑠璃子は再び胸が熱くなる。

大輔は瑠璃子が来る事を想定していたのだ。だからいつでも入れるようにしておけと指示したのだろう。

門に付けられていた看板が中川姓のままだったのも多分同じ理由からだ。瑠璃子が見つけやすいようにあえて名前を変えなかったのだ。


やがてタクシーはラベンダー農園の入口に到着した。

タクシーを降りた瑠璃子はすぐに坂の上を目指す。


坂道の真白な雪の上には車のタイヤ痕がついていた。たった今ついたばかりのようだ。


大輔はきっと来ている。

そう確信しながら瑠璃子は一歩一歩坂道を上って行った。



坂道を上り切るとすぐに駐車場を見た。そこには大輔の車が停まっているのを見た途端、瑠璃子の瞳からは涙が溢れてくる。

次の瞬間瑠璃子は泣きながら雪の上を走り出していた。


真冬のラベンダー畑は真白な雪に覆われていてまさに銀世界だった。そこへ柔らかな太陽光が反射してキラキラと輝いている。

そんな幻想的な景色の中を必死に走りながら瑠璃子は人影を探した。するとラベンダー畑の一番奥に誰かが立っているのが見えた。

瑠璃子は途中雪に足を取られながらも無我夢中で走って行った。

その時その人影がこちらを振り向いた。



振り向いたのは大輔だった。



大輔を見た瞬間、瑠璃子は大声で泣きながら走り続ける。

その時大輔も走り出した。そして勢いよく走って来る瑠璃子をしっかりと抱き留めた。


「先生っ! どうして言ってくれなかったのですか? どうしてっ……うぅっっ…」


瑠璃子はわんわんと声を上げて泣いていた。そんな瑠璃子を強く抱き締めながら大輔が答える。


「自然に思い出してくれるのを待っていたんだよ」


すると瑠璃子はしゃくりあげながら一生懸命言った。


「私、思い出すまで…こんなに時間がかかって……もっと早く知っていたら……」


そこまで言ってまたわんわんと泣き続ける。


「瑠璃ちゃん、思い出してくれてありがとう」


その言葉に瑠璃子が小さくうんと頷くと、大輔は瑠璃子の事を愛おしそうに更に強くギュッと抱き締めた。




しばらくして瑠璃子の涙が落ち着くと、大輔は少し身体を離してから瑠璃子の顔を見つめた。そして両手で瑠璃子の頬を挟むと指でそっと涙を拭う。それからゆっくりと唇を重ねた。

瑠璃子は両手を大輔の首に回しギュッと抱き着く。そして二人は抱き合ったまま何度も何度も熱いキスを交わした。


その後満足した二人は唇を離してから微笑み合う。

そこで瑠璃子は急に思い出したように言った。


「先生、今日私がここへ来たらお嫁さんにしてくれるんですよね?」


瑠璃子の笑顔は眩しいくらいに輝いている。そんな瑠璃子を愛おしそうに見つめながら大輔が答えた。


「うん、約束は守らなくちゃね」


そして大輔は左のポケットから水色のリングケースを取り出すと瑠璃子の前で開けた。

そこにはとても美しい立爪のダイヤモンドリングが入っていたので瑠璃子は驚いた。


「せ、先生?」

「左手を出してごらん」


瑠璃子はびっくりしたままおずおずと左手を差し出す。すると大輔が薬指にそ美しいリングをはめてくれた。

指輪は瑠璃子の指にぴったりフィットした。


「綺麗……」


瑠璃子は美しい指輪に目を奪われたままうっとりと呟く。


「え? でもどうしてサイズがわかったんですか?」

「僕は『神の手』を持つ男だから指輪のサイズくらいわかるさ」


大輔は余裕の笑みを浮かべる。

すると瑠璃子はその答えに納得がいかない様子で、


「えっ? ええーっ?」


と叫んでいた。

大輔はそんな瑠璃子の両手をしっかりと握り締めると、瑠璃子の瞳を見つめながら真剣に言った。



「おちびさん、僕のお嫁さんになってくれるかい?」

「ええ、喜んで!」



そこで二人は誓いのキスを交わした。それから大輔が瑠璃子を抱き上げるとクルクルと回り始める。



「キャーッ、先生っ! 目が回っちゃうー」

「ハハハッ」



瑠璃子のはしゃいだ声と大輔の笑い声がラベンダーの丘に響き渡っていた。


そこで急に大輔が立ち止まるとまた思い出したように言った。



「瑠璃ちゃん、お誕生日おめでとう!」

「先生、ハッピーバレンタイン!」



二人はもう一度見つめ合うと熱いキスを交わした。


大輔の背中に回った瑠璃子の左手には、雪の反射を受けて美しい煌めき放つ美しいダイヤモンドリングが輝いていた。

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