テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#衝撃のラスト
山根利広
1,673
52
418
「そや、俺ら三人同郷なんやて。偶然やろ」「そやな。てか東京に来ると方言言わんようになったけども虹雨と再会してからは戻ってしもうた」
「俺はずっとこの調子やったわ」
「だから視聴者にも胡散臭いって言われるんや」
由貴はナァ? とキミヤスに同意を求めると苦笑いしながら頷いた。
「んで、そこがポイントや」
「ポイント?」
虹雨がババーンと人差し指を突き出す。
「もともとキミヤスの親2人、じいちゃんは岐阜の人間……俺らもそう」
「で」
「多分この家の中でも普通に岐阜弁は使われとった。どや、キミヤス」
キミヤスは首を傾げる。
「多分キミヤスにとっては普通と思ってたけどそれが岐阜弁であった可能性もある」
「なるほどなぁ……」
『でも友達には指摘された。なんかちゃうって。関西弁かとか言われたけども……恥ずかしくてあまりよう喋らなかった』
「出た、普通に岐阜弁使っとるわ。友達もいなくてこれまた家の中にいた母親とよく一緒にいたからな……キミヤスは」
少し無礼な言い方でもあるが虹雨はキミヤスとは色々話をしていたらしい。
「虹雨は口も悪いやろ」
「口も、の、もは余計」
『優しい方です』
ほらみ! と虹雨は笑う。
「まずもって虹雨はここを事故物件でありルームロンダリング目的で住んだ。キミヤス、そして浴室のお母さんとおじいさんの存在は知っていた……」
「そや」
「浴室は怖なかったんか」
「俺の時はあの2人は暴れなかったから塩を撒いておけば平気やったわ」
キミヤスは2人の話になると顔が曇った、それを由貴は見逃さなかった。
「……なんでだ。僕と虹雨の時との違い」
『お父さんが由貴さんと体格が一緒なんです』
「僕と虹雨の違いは背丈の違い。……お父さんは187センチくらいか」
キミヤスは頷いた。
「そう、背丈も同じで方言も同じ。東京に同じような男性でここに来られるのはいない。そこでお前が風呂場に入った……あの2人は……」
『日常的に暴力を受けていました』
由貴は絶句する。他の2人の目立つところにもキミヤスの身体を見ようとするが日常的な暴力と思われるような痕はないことに気づく。
「……キミヤスくんもか、大丈夫か」
『毎日のように怒鳴られていました。おじいちゃんも粗相をするたびに……、母は特に……。東京に来てから父が変わったんです』
キミヤスは泣き出した。
「目に見えない暴力や。三人は心を抉り取られたんや。だからお父さんと同じ体格のお前を見た瞬間におじいちゃんとお母さんたちは悲鳴を上げた。……また罵られる、怒られると」
部屋の中はさらに雰囲気が暗くなるが由貴は立ち上がってキョロキョロしだす。
「お前も気づいたか」
浴室とこの和室にはそれぞれ幽霊は残っていたが確かに父親と思われる男の幽霊だけ見当たらないのである。
「ああ、住んだ当初っからこの部屋にはお父さんはいなかった」
「……でもキミヤスくんはお母さんがお父さんも殺したと言ってたけどどこで殺されたんや」
由貴はキミヤスに聞くが特に何も答えようとしない。
「……調べたところ、お父さんはそのベランダから落ちて転落死。あくまでもお父さんは転落死とされている」
と虹雨が言うとベランダの窓がいきなり開いた。2人は何かしらの殺気に気付いて立ち上がる。
「さっきキミヤスくんはお母さんが殺した……と言ったがベランダから突き落としたと、そう言うわけやな……」
由貴がキミヤスを見ると彼も立ち上がった。表情は変わらないがベランダから風が吹き荒れどよめいた霊気が渦巻いている。
「お母さんはいくら介護してたからと言って高さのあるベランダから僕くらいの大きなお父さんを落とすことができるか?」
「……できるわけないやろ、なぁ、キミヤス」
声をかけた途端にキミヤスは目を大きく開けて叫び始めた。
『ああああああああああ』
ベランダの外からは彼の父親のけたたましい怨念が四階まで上がってきた。
『僕がお父さんを落とした……人生狂ったのはあいつのせいなんだ』
虹雨は手を組んだ。除霊の準備はできている。
『もうこれ以上僕を苦しめるなああああああああ』
ベランダの外からは
『うああああああああああああ』
低く唸るような声というか地響きと風。
「なんや、なんやっ! 外からも中からもっ……」
「由貴、お前が下に落ちて死んだお父さんの霊をここまで吸い上げたんやて」
「しまった、僕の能力忘れてた!!!」
「んなことあるかっ!! あああっ、俺の服が! 布団がっ!!!」
部屋の中で二種類の霊気がグワングワンと入り乱れる。室内も荒れに荒れ、由貴は大切な機材と貴重品はとっさに浴室に移動させたが虹雨は間に合わなかった。
親と子の憎悪と憎悪のぶつかり合い。
ベランダから落とされた恨みと人生を大人たちの都合で壊された恨み。
そこにもう一つの恨みが生まれる。
「部屋の中荒らしやがってぇええええええっ!!!」
現住人の虹雨だ。いくらルームロンダリングであれどここまで荒らされたら元もこうもない。
「親子喧嘩は他所でせえええええええええええ!!!」
その虹雨の一喝で渦は外に出ていった。すると夜は一気に開け朝になっていたのだ。2人は力尽きて昼過ぎまで眠りにつくのであった……。
コメント
1件
ああああもうこの回エモすぎる!!😭✨ キミヤスの過去がまさか自分でお父さんを…って展開、マジで胸が痛すぎた…。「人生狂ったのはあいつのせい」って叫びが刺さりすぎてもう…。 でもそこに割って入る虹雨の「親子喧嘩は他所でせえ!!」が最高すぎて笑ったw 現住人の怒りが平和をもたらすパターン、好き!! 由貴の能力も思わぬ形で炸裂しちゃってて、展開が読めなくてドキドキしたよ〜💦 次の話も絶対読むからね!!麻木香豆さん、今回も胸熱な話をありがとうございます🌸