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出て、お願い、出て…と祈りながら発信中の画面を見つめる。
しかし、2コール目で、それは繋がった。
『もしもし』
その低く落ち着いた声を聞いた瞬間、せき止めていた涙が決壊した。
「たっ……尊ざん……っ……! た……助けて……っ!!」
嗚咽混じりの悲鳴。スマホを持つ手が激しく震え、声が裏返る。
目前には死を予感させるような亮太の冷たい視線。耳元には唯一の希望である尊さんの声。
『今どこだ。家か?』
「りょ……りょうたざんが……っ、うちに……! こ、こあくて……たたっ……助けてくだ───」
言いかけたその時、亮太さんの手が伸びてきた。
無理やりスマホを奪われ、床に放り投げられる。
画面が下を向いたまま、手の届かない場所まで滑っていった。
「なに他の男に助け求めてるんですか。目の前に僕がいるというのに、失礼でしょう」
亮太さんはゆっくりと立ち上がり、俺を見下ろした。
「あんまり手荒な真似はしたくなかったんですけど……ね。これは、罰ですよ」
そう言って、亮太さんが俺の首に手をかける。
あの時と、昔と同じ、冷たくて太い指の感触。
全身の血が逆流するような寒気が走り
尊さんと繋がっていたはずの唯一の命綱が、無慈悲に切り落とされた絶望に襲われる。
「……い……っ、いや……っ!」
殺される……っ?
俺、ここで終わるの?
嘘、嘘だ、そんな
結局、俺は何も克服できてなんていなかった。
前を向いたつもりで、ただ尊さんに甘えていただけだったんだ。
本人を目の前にしたら、声も出せない、指一本動かせない。
『男のくせに弱っちい』
いつか誰かに投げつけられた言葉が、呪いのように頭の中を回る。
こんなに無力なのに、尊さんを守りたいなんて、どの口が言ったんだろう。
守れるはずがなかった。
いつも守られてばかりで、こうしてまた助けを求めることしかできない。
(……っ、抵抗、しないと……でも……)
「そんなに怖がらなくても大丈夫。……少し、僕が味わった苦しみを、痛みを、恋くんにも分かってもらうだけですから」
首を押さえつけられる力が強まる。
気道が圧迫され、意識が遠のき始めた
そのとき
遠くから、空を切り裂くようなパトカーのサイレンが聞こえてきた。
「……本当に呼ぶとは…困りましたね」
亮太さんが不快そうに眉を寄せた。
サイレンの音は確実にこのアパートに向かって近づいている。
(まさか……?)
同時に、階段を凄まじい勢いで駆け上がってくる足音が響いた。
次の瞬間、視界が激しく揺れた。
俺の首を掴んでいたはずの亮太さんの手が離れ、彼はそのまま廊下の床に叩きつけられるように横たわっていた。
代わりに目の前に現れたのは、肩で息をしながら、鬼のような形相で立ち塞がる尊さんだった。
「恋……っ、大丈夫か……!!」