コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
赤いふうせん
作 みずぞくせい
晴天の空の下。どこの幼稚園かわからないが、多分、遠足の帰り道なんだろう。草むらの中、園児たちがふうせんを持って、てくてく歩いている。
パアアアン‼️‼️
ふうせんがわれた音がした。俺は思わず立ち止まった。何で立ち止まったかって?それは、俺が犯人だから。空を飛んでいて急にブレーキなんてかけれない。だから、その園児の男の子のふうせんにぶつかってしまった。園児の男の子は下を向いて静かに、鼻をすすってぐすん、ぐすんと泣いている。列の後ろ側から「あっち行け!」や「カラス怖い……」などの声が聞こえる。石ころまで投げてくる園児までいた。まあ、当たり前だろう。そりゃあ怖がられるのも普通だ。鳥の中でも群を抜いて嫌われもののカラスなんだから。先生の冷たい視線。キイッ…っと優しそうな顔からは想像出来ないような目付きで、こちらをにらんできた。園児の服についているバッジには、【さくら幼稚園 パンダ組】とかかれている。俺はペコリと頭を下げて、黒い翼を広げて飛んでいった。
「たっく……」
「体が石ころを投げられたから痛いな……」
「それにしても悪いことしちゃったな…」
「………」
「ふうせんってどこで配ってるのかな」
「………」
バサアアアア…
道に迷った。ここはどこなんだ。すっかり田舎から都会。違う市だろうか。ざわざわしている、なんだか空気も少しまずく感じる。
「くっ」
「風が強い」
「こんなときに限って向かい風かよ…」
「お? あれか?」
派手な服を着た女の人が沢山のふうせんを持っている。
ファサッッ……
バレないようにふうせんをこっそり取った。このままあの子の幼稚園に行こうとしたが、かんじんなことに俺は気づいていなかった。よく考えたらあの子が持っていたふうせんは赤。今俺が持っているふうせんは青。もしかしたら赤があの子は好きなのかもしれない。
「……よし。もう一度あっちに行くか。」
パアアアン‼️‼️
今持っている青いふうせんをわった。数十分もかけて来たけれど、やり直し。なんだか肌寒い…秋だからか?もうヘトヘト、眠気が凄まじい。安定しないガタガタした不自然な動きでさっきの女の人のところまで行く。かれこれ数十分。もう少しだけれども小雨が降ってきた。ポツッポツッと体に当たる。
「いた‼️‼️」
ふうせんを配ってる女の人が見えた。当たり前だが、ふうせんは少なくなってて、もう3つしかない。
ファサッッ……
同じように、今度は赤いふうせんを取った。体の傷に霧雨が当たって染みる。今までで一番の力を出して飛んだ。くもっていて良く前を見ることが出来ない。羽を休ませるひまも無い。
ザアアアア‼️‼️‼️‼️
霧雨どころか大雨になってきた。「こんな寒い日にこんな雨が降るとか神様どんだけ意地悪なんだよ。」と思った。やっと緑がたくさんある田舎っぽいところに来た。確かこの山の奥だった気がする…
見えた。
山の奧にポツンとある幼稚園。園児が室内でガヤガヤガヤガヤ遊んでいる。
スタッ………
べちゃっとした、湿った土の上に鋭い爪がついた黒い足で地面につく。小さめの幼稚園のようだ。
【さくら幼稚園 パンダ組】
「ここか。」
コン、コン。
大きなくちばしで、優しく窓を叩いた。真っ先に俺に気づいたのはあの男の子だった。
ガラガラ…
「あ!さっきのカラスさん。」
「あれ?赤いふうせんもってるよ。」
俺はその子の近くに行って、くちばしをぐんと前にやり、ふうせんを渡した。
「え?これ、くれるの?」
俺はゆっくりと頭を下げた。
「ありがとう!カラスさん。」
「カラスさん。これ、食べる?」
そこには弁当のはじっこによせられたブロッコリーがあった。ずる賢いやつだ。ただ食べたくないだけだろう。だがあまりにもかわいすぎる笑顔だから憎めない。その子は箸でつかんだブロッコリーをこっちに向けてきた。
パクッ
ずっと何も食べていなかったから、これまで食べた食べ物より、ずうっと美味しく感じた。
俺は黒い翼を広げて、雨のやんだ、虹がかかった青い空を飛んで、去った。
「今誰と話してたの?」
「カラスさんだよ。」
「見て!先生。ふうせんもらった!」
「あら、良かったわね。」
あとがき
初めて短編小説をかきました!どうも、みずぞくせいです。Twitterもやっています。どうぞよろしくお願いします。