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廉と会う約束をしている金曜日。
拓人は、ソファーに腰を下ろしながら、じっと入り口のドアを見据えている。
優子は、ベッドルームにこもり、荷造りをしているが、手間取っているのか、部屋から出てくる気配はない。
女は、これから訪れる拓人の友人が、まさか依頼人の廉とは思いもしないだろう。
(廉のヤツ、本当に来るんだろうな……?)
約束の時刻まで、あと数分。
彼が腕時計をチラッと見た矢先、部屋に備え付けてある電話が鳴った。
恐らく、フロントからの内線だろう。
「はい」
『松山廉様がお見えになりました。お部屋にご案内してもよろしいでしょうか?』
「ええ。お願いします」
拓人は受話器を戻し、メインルームを出て、入り口のドアの前で待機する。
(いよいよだな……)
数分後、扉が乾いた音を立ててながら、三度ノックされた。
***
拓人は、ひと呼吸置いた後、ゆっくりと部屋のドアを開けると、黒のシャドーストライプのスーツに身を纏わせた廉が立っている。
「久しぶりだな、拓人」
「おう。廉も仕事が忙しそうだな。忙しいのはいい事だ」
彼は、さり気ない会話で廉の表情を伺うが、今のところ拓人との再会に、唇を緩めている状態。
「電話では、拓人と時々話していたが、顔を合わせるのは一年振りか?」
「多分、それくらいじゃないか? まぁ、とりあえず入れよ」
「ああ、失礼する」
拓人の先導で、廉はメインルームへと案内された。
「…………ものすごく広い部屋だな。さすがは女風のオーナーってところか……」
扉の横に佇む廉が、部屋をぐるりと見回している。
「廉は仕事帰りだろ? 今日は週末だし、酒でも飲むか?」
「……いや、俺は今日、車で来ているんだ」
「……そうか。なら、アイスコーヒーでいいか?」
拓人が、カウンターバーのそばにある冷蔵庫から、アイスコーヒーの缶を二つ取り出し、ローテーブルの上に置く。
「ああ。頂く」
「ってか、廉。そんな所に突っ立ってないで、入ってこいよ」
拓人が廉を座るように勧めると、男二人はプルタブを開け、缶コーヒーで乾杯する。
喉を潤しながらも、彼は廉の表情に注視していた。