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12話 琶の昔の知り合い
昼前
ふっくらは丸い体を揺らしながら
村の道をぽす ぽすと歩いていた
腹がふよんと揺れ
短い脚が忙しなく動く
ふっくら
「琶〜、今日は依頼ないの?」
後ろを歩く琶は
大きな体で影を落としながら
静かに答える
長い首
重なった鱗
畳まれた翼が地面に影を伸ばす
「……来るかもしれん」
ふっくら
「来るか“もしれん”の!?
その曖昧さで動くのやめて!
読者が混乱するよ!!」
ふと
前方の道に誰かが立っていた
ふっくら
「ん?」
近づいてくるその影は
細身で
フードを深くかぶった人物だった
影のような色の服
杖を持ち
顔はほとんど見えない
人物
「……久しいな」
琶が一歩前に出る
鱗がわずかに音を立てた
ふっくら
「えっ知り合い!?
琶に知り合い!?
なんでそれ初耳なの!!?」
琶
「昔の……知り合いだ」
ふっくら
「説明ざっくり!!
ちゃんとして!!
読者にもちゃんと!!!」
人物は静かにうなずく
「……我ら、昔は共に……」
琶
「名前は何だったか」
人物
「…………」
ふっくら
「えっ!?
名前覚えてないの!?
名前から!?!?」
琶は本気で思い出そうとしているのか
目を細めて人物をじっと見る
「……黒……いや、墨染め……
いや違う……」
人物
「それは色だ」
ふっくら
「だよね!!?
名前じゃないよね!!?」
人物はため息をついたように杖をつき
ふっくらを見下ろす
「……名乗る意味も、今は薄い」
声がどこか乾いている
ふっくら
「今の台詞こわいよ!?
さらっと深いこと言わないで!!!」
琶
「名前がなくとも、用件は同じだ」
人物
「……ああ。
“まだ続いている”」
ふっくら
「なにが!?
なにが続いてるの!?
わたし何も聞いてない!!
読者も聞いてない!!」
琶はふっくらの頭を軽くつつく
「聞く必要はない」
ふっくら
「必要あるでしょ!!
だってわたしたち関係あるやつじゃん!!!」
人物はふっと笑ったように見え
一歩だけ後ろへ下がる
「……では、またいずれ」
その瞬間
影のように
輪郭ごと薄れていった
音も光も残らない
ふっくら
「えっ……消えた!?
ねぇ琶!!
あの人なに!?
説明!!!」
琶
「……昔の知り合いだ」
ふっくら
「それさっき聞いたよ!!!
説明の中身を!!!」
琶は少しだけ笑ったように見せながら
道を歩き出す
「……思い出す必要はない」
ふっくら
「読者も絶対気になってるよ!?
モヤモヤするよ!?
こんな終わり方ある!?!」
琶
「ある。
そして終わりだ」
ふっくらは丸い体をぷるぷる震わせながら
琶の後を追った
“名前を思い出せない知り合い”が
本当に存在したのかどうか
わからないまま
日が傾いていった