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その後、ロビーで葉山社長の息子たちに会うために、瑠衣は侑と一緒に待ってみたが、招待客は続々といなくなり、息子たちもこちらに来る気配がない。
ロビーには瑠衣と侑だけの二人だけになってしまった。
「響野先生のご友人…………来る気配がないですね」
「ああ。あまりここに長居しても仕方がない。行くぞ」
二人が立ち上がり、ロビーから一階へ繋がる階段へ向かおうとした時。
「侑!」
背後から、低くて甘い声音が飛んできて、弾かれたように侑と瑠衣が振り返ると、先ほどパーティで婚約発表をしたカップルが佇んでいた。
侑が滅多に見せる事のない満面の笑みを浮かべながら、双子の兄・葉山圭と婚約者の元へ歩み寄った。
「圭! 久しぶりだな。そして婚約おめでとう!」
侑が圭に手を差し出し、二人は握手をする。
「ああ、ありがとう。侑の活躍は俺の耳にも届いている。友人として嬉しい限りだよ」
男同士の友情を目の当たりにした瑠衣は、侑の冷徹な表情しか見た事がなかったせいか、嬉しそうに破顔させている恩師に胸の奥がキュンと抓られたような気持ちになってしまった。
(あんなに笑った響野先生、初めて見たよ。それにしても、先生の笑顔……いいな……)
瑠衣はそんな事を考えてしまい、頬を染めていると、そんな様子を見た侑が冷淡な声音で声を掛ける。
「九條。お前、顔が赤いぞ?」
「え? そっ……そうですか?」
二人のやり取りを見ていた葉山圭が、ニヤリとしながら侑を揶揄うかのように言葉を投げる。
「それにしても侑。綺麗な女性を連れているけど、お前にもやっと春が来たのか?」
「い……いや、かっ……彼女は俺の教え子……だ」
どことなく焦燥感を漂わせながらも眉根を下げている侑が、瑠衣にとって新鮮に映る。
そんな様子の侑に、つい笑みが零れてしまい、瑠衣に『お前も何か言ったらどうだ』と言い急かした。