「嫌いだよ」
そう言われたとき、おれは足がすくんでしまった。ずっと我慢していた、ずっと耐えていたんだって。だけど、もう無理だった。限界なんて越えていた。おれは無意識に自分に厳しくしていた。頬に汗が伝わってくる。いや、汗じゃない。泣いているんだ。
「キャラクターは、らっだぁ」
そう言い放ったとき、警察署の前に“リスポーン“した。おれのキャラクターが、手を動かし、瞬きをし、話している。いや、正しいのは、“おれ自身“だ。
「この生命は、どんな人生なのかな」
青井らだお、レダー。この二人は個性が溢れている。ヘリの達人、そして空の悪魔。地上でも活躍でき、市民に優しい警官。しかし、それとは裏腹にギャングであり、頼れるまとめ役。ヘリが上手く、サポートが魅力な犯罪者。では、おれはどんな生命なのだろう。
「しあわせ、もの」
なんて、そんなわけないのに。そんなことは置いておいて、警官が仲良く話している。何の話をしているのだろうか。朝ごはん?好きな先輩?それとも、人生?色んなテーマがありながら、話に飽きる人もこの世の中にはいるだろう。テーマ、話なんていくらでもできるのに。
「うーん…」
とりあえず、初心者マークがない。らっだぁだからか?そんなチートでもないだろうに。まず、食料だ。警察に聞いてみようか悩んでモジモジしていると、1人の警官が寄ってきた。
「お前、なにそんなモジモジしてんだ」
やっぱ、警官じゃないかもしれない。明らかに犯罪者。アロハシャツの警官なんているはずない。
「あー、食べ物がなくて」
「はーん?じゃあこれやるよ」
そう言って渡されたのは、コーラとハンバーガーだった。意外と優しいらしい。こんなにも警察っぽくないのに。
「ありがとうございます」
「おーよ。間違えて買いすぎたからな、別に感謝しなくてもいいぜ」
「いや、しますよ」
「…ふーん、」
買いすぎたらしいハンバーガーにかぶり付きながらおれと雑談?をしてくれる。
食べ物を食べながらだと良くないのにな、と思いながらハンバーガーをぱくりと食べる。
「…チーズ、多くないですか?」
「いいだろ、これ。チーズ多くてうめぇんだよな」
「はあ」
明らかに多い量のチーズがはみ出ているが、気にしないでおこう。人によって好き嫌いはあるし、それに食べ物をくれたから感謝はしないといけないから気にしないことにした。
「ご馳走さまでした」
「早いな」
「あなたの方が早かったですけどね」
「…あなたって言うのやめてくれないか?」
明らかにアロハシャツ警官のほうが食べ終わったのは早かったはずなのに。独特なんだな、この人は。しかし、あなたと呼んではいけないのか?では何て呼べば…
「なんて呼んだらいいんですか?」
「つぼ浦でいいぞ」
「つぼうら…ですか。名前ですか?」
「ああ。俺はつぼ浦匠。エリート警官だ 」
エリートには見えないが、突っ込まないようにしておこう。市民に優しいのは良い警官だからな。まあバッド背負ってるのは明らかに可笑しいのだが。
「じゃあ、つぼ浦さんで」
「おう、いいぜ」
かなり人柄が良さそうだ。きっと青井らだおも好いてた…いや、この話はやめとこう。
「では、おれはこれで」
「…待て、お前名前は?」
「……っ」
「おい、待てよ。お前なんか隠してるよなァ?」
名前を教えても、何もないんだろう。だけど、きっと、“青井らだお“でも、“レダーヨージロー“でもない。“らっだぁ“ってなんだろう。おれはどんな『味』がするんだろう。
「…いずれ分かるだろ、ぐちつぼ」
「ぐちっ…」
「おれはただ、幸せになりたいだけ」
「おい、お前…」
つぼ浦さんの言葉を聞く前にスケボーに乗り、警察署前から去る。こんなこともあろうかとスケボーは持っているからな。
「そろそろ、向かおうかな」
そう呟いて、スケボーから降りる。ため息をついてからある場所に向かう。風が強くなってきて、次第に嵐になり始めた。マフラーが揺れ、雨でびしょ濡れになってしまった。
「…早く向かいたいのに」
乗り物はスケボーしかないため、嵐の中では困難。さて、どうするかな。
「スマホで、警察…」
警察を呼ぼうとも考えたが、つぼ浦さんがおれのことを言いふらしたりしていたら騒ぎになるかもしれない。おれはキャラクターでもあるけど、主だから。そうなれば、誰に助けを求めよう。おれが行こうとしている場所は、“ギャングのアジト“。なぜかって?それはまだ秘密だよ。…てことは、ギャングに助けを求めて弱ってる演技をすれば良いのではないか?我ながら天才的な考えだな、うん。
「っし、」
おれは演技派だから、泣いてる演技もできるはず。“ゴミ“に容姿はやってもらったし、綺麗な人だからな。きっと助けてくれる。いまのおれなら、
「きらいに、ならないから…」
なんでだろう?なんで、まだ演技はしていないのに。なんで涙が出てくる?可笑しいなあ、おれ。すごい天才じゃん。すぐ涙が出てくるよ。
「きらいにならないで…」
おれはしゃがみこんでしまった。ふは、ふつーになんか辛いや。泣いたからだろう。泣くと気持ちが黒で塗り潰されて、ぐちゃぐちゃにされる。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
何に謝っているのかも分からずにただ泣いている。いや、鳴いている。悪に助けを求めながら。
「…どうしたんだい?」
「あ、ぅ…」
「何でこんな嵐なのに外にいるんだ…?アジトに持ってくか…。
きみ、名前は?」
「なまえ、繧峨▲縺?縺」
「…え?もう一回言ってくれるかな、ごめんね」
「繧峨▲縺?縺」
「…聞き取れない。とりあえず保護…あ、俺はハンクだよ。一緒に安全なところに行こう?」
「…は、ぃ」
おれは、主だから。きっと聞き取れないんだろう。おれはらっだぁだ。なまえはらっだぁ。だけど、言っているのに聞き取れないらしい。
「ボス、……、保護して……。はい、わかりました」
きっと無線でウェスカー…いや、ボスに許可を貰っているのだろう。それなら話は早いな、アジトに行ける。
「よし、えと、じゃあ何て呼べばいいかな」
「じゃあ、青で…」
「わかった。青くん、俺らのアジトに行こう」
「あじと…!?」
俺は震える演技をする。目が焦点にあっていなく、声が震える。いや、震わせている。
「大丈夫だからね…」
「…はい、」
ハンクさんが心無きの車を奪い、アジトに向かって一直線に走っていく。それにしても速い、180キロはでてそうだ。
「青くん、つらかった?」
「…なにが、です?」
「いや、その…独りだったから」
“嫌いだよ“ その言葉が脳内によぎった。ううん、違うんだ。おれは違うんだよ。嫌いになんてなるはずない。おれは愛されてる。
「…つらいわけないじゃないですかw」
「…そ。アジト、着いたよ 」
話してる間にアジトに着く。相変わらず大きい。さすがはギャングのアジト。ハンクさんはおれを中に入れてくれた。
「ボス!!」
「…へえ、君がね」
「初めまして、」
「じゃあ、私たちが預かろうか」
「はい!青くん、じゃあ案内」
__パンッ
「ぁ”ッ…?」
「……く、はは…あ”はははは!!!!」
嗚呼、楽しい。おれは何故アジトに来たと思う?おれはね…“幸せ“を知りに来たんだ。
「青くッ、」
「お前……」
「動かないでください、動いたら部下を
殺します」
殺す、その言葉を放った瞬間にボスが怯む。何もできない、自分が無力のような表情だ。ハンクさんは瀕死。足を潰した。
「…では、ウェスカーさん」
「なんで私の名前を知っているのかな?」
「…さあ?そんなことより…
幸せって、なんだと思います?」
「あ?」
「殺すよ、態度をわきまえろ」
「…幸せ、ね。私は犯罪だと思うかな」
「残念、正解は~
…幸せなんて、ねぇんだよ」
パンパンッ…
「ぐ…、」
「ボスッ、ぁ”ッ!! 」
「痛いよね?痛いね…!今楽にしてあげるからね?ハンクさん♡」
「ボ、ス…」
結局、つまんない。引き金を引いた、いや、引こうとした。
ジュイン…
「テー、ザーッ…」
警察か、発泡通知行ったし当たり前か。…もうちょい楽しみたいのに。手錠もされてしまった。
「…どういうことだ?」
「ぺいんとじゃ…んッ、」
「ッ、お前…」
「ぁは…?何だよォ?」
「やっぱり、歪みか」
歪み…?なにがだ?ただのいつも通りのストグラ。ただ、青井らだおとレダーヨージローがいないだけの。
「アルフォートッ、大丈夫か…」
「私はいい。ハンクを」
「……で、なにが歪みなの?ぺいんと」
「これは、魂…いや、主の願いがそのままでてしまう歪みだ」
「…は?なに言ってんだ」
「簡単に言えば、お前。ニット帽の。」
「あ?」
「お前は、何か強い願いがある…そして、疲労もたまって、悪夢を見るだろ?」
“嫌いだよ“
「あく、む?」
あれは、悪夢?
「がまん、」
おれは、疲労?
歪み?
ねがい…
“幸せ“
「…は、は…」
「ニット帽、詳しいことは署で聞くよ」
「あ、っそ…」
おれは、
…なんなんだろうな
コメント
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なんでこんな神小説もっと早く見つけられなかったんだ...?
こういうのめっちゃ好… 続き待ってます!