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4話 今月の紙芝居ニュース
夕方
ふっくらは丸い体を地面に沈めて座っていた
短い脚を折り
腹はふよっと前に出て
もはや座っているのか転がっているのか曖昧
隣には琶がいる
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼が影を作り
その爪が紙芝居の枠を軽く押さえている
琶が
一枚目をめくる
絵には勇者が描かれていた
整った顔
似たような背丈
同じ形の剣
ふっくら
「……あれ?
この人……なんか、いっぱい見た気が……」
琶
「見たのではなく、増えている」
ふっくら
「増えてるの!?
え、勇者って繁殖するの!?
わたしの知らない生態なの!?!?」
琶
「……騒ぐな」
ふっくらが慌てて静かになると
琶は次の紙をめくる
二枚目
今度はもっと多い
勇者の群れだ
顔
剣
表情
全部ほぼ同じ
ふっくらは丸い体を揺らして
ひそひそ声で数え始める
「いち……に……さん……えっこれ……
どこまでが“別の人”……?」
琶が軽く咳払いする
「無駄だ」
ふっくら
「えっ?」
琶
「途中で数える気力が失われる。
おまえにそんな根性はない」
ふっくら
「ひどくない!?」
琶は淡々と次をめくる
三枚目
また勇者
しかも
一枚目のと並べても
違いがほぼない
ふっくら
「ねぇ琶……
これ、絵師さんが手抜きした?」
琶
「……むしろがんばって描いている」
ふっくら
「がんばってこれ!?!?
じゃあ本物がこんな感じ!?
みんなこんな顔なの!?
剣までおそろいなの!?!?」
琶はふっくらの丸い体を
つん、と軽く触る
「落ち着け。
おまえには関係ない」
ふっくら
「関係ないけど気になるよ!!
えー……世界どうなってるの……?」
琶は最後の紙をめくる
四枚目
そこには
勇者の群れがこちらを向いて立っている
全員同じ角度
同じ目線
同じ表情
絵なのに
なぜか“見られている”気配が強い
ふっくらの声が小さくなる
「え……
なんか……こっち見てない……?」
琶
「見ている」
ふっくら
「さらっと言わないで!?!?」
紙芝居は静かに閉じられた
琶は紙を片付けながら
ぽつりと言う
「……数はまた増えたな」
ふっくら
「えっ減らすとかできない?」
琶
「知らないほうがいい」
ふっくらは丸い体を小さく丸めた
紙芝居ニュースは
今日もゆるく
そしてすこしだけ
不穏だった