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保谷東
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「最近、音楽は作っているのか?」
ボロネーゼのパスタセットを注文した圭が、パスタをフォークに巻き付けている。
「うっ……うん。ぼちぼち……かなぁ?」
美花がキノコとベーコンのチーズリゾットを口に運ぶと、窓に映る緑の木々に目を向ける。
それきり、二人の間に、沈黙が覆っていき、圭はパスタを口に運びながら、話題を探した。
美花は、『コレ美味しい!』と呟きながら、マイペースに食事を楽しんでいる。
「そういえば君は、俺の弟の彼女…………いや、婚約者と友人なんだろ?」
頭の中で苦し紛れに検索した話のネタを、彼はようやく探し当てた。
「うん。かなチーとは小中学校時代の親友だよ」
「かっ…………かなチー? ああ、かっ……奏さんの事か」
美花の呼び方に苦笑しつつ、圭は、セットで付いてきたアイスコーヒーで喉を湿らせる。
「そう。つい昔のあだ名で呼んじゃうんだよねぇ」
美花が、照れくさそうにはにかみ、アイスティを口に含ませた。
「そうだ! おにーさんって、双子ちゃんだったんだよねぇ! この前、かなチーが、おにーさんに瓜二つのイケメンさんを店に連れてきた時は、ホントビックリだったなぁ。れいチェルなんか、態と意地悪な笑い方をしてたしっ」
「ブッ…………れっ……れいチェルって…………怜の事……か? それに、双子ちゃんって……」
弟の事を、変な呼び方をした美花に、圭は飲んでいたアイスコーヒーを吹き出しそうになり、慌てて嚥下する。
「うん。弟さんは、何となくだけど、れいチェルって感じ?」
「何だそれ……」
(いや…………アイツ、れいチェルってツラじゃないだろ…………)
美花の言葉に若干呆れつつも、圭は唇に弧を描かせた。
「…………じゃあ……俺は?」
圭は、彼女なら俺にどんな変な呼び方をするのか、と思い、それとなく探りを入れる。
「やっぱり双子ちゃんなのかなぁ? れいチェルと同じ事を聞いてるっ!」
美花が手を叩きながら破顔させると、まっすぐな眼差しに包まれた。
「…………おにーさんは、『おにーさん』だよ」