コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
プリンとミーシャがとある仮説を立てた頃、ベルノとルーマは『セキザイの洞窟』からの脱出を試みようとしていた。
「狙いは私達みんなみたいだけど本命は恐らくオジサンだから先に洞窟の外に出すよ!」
「ばか!いくらお前たちが強くてもここにいるギルド員はウチのギルドの上位人だぞ!?しかも数でも負けてる!少しでも戦う人数がいないと…。」
「お気持ちは嬉しいですが私達はあくまで旅人に過ぎません。あの町の住民であるあなたが生きてことの全てを伝えた方が信ぴょう性は高いです。」
「その言い方だとまるであんたら自身の命は…。」
「えぇそうです。しかし、外の人間が街の問題に首を突っ込んでるです。どうなろうともそれは私たちの自己責任なので何も気負うことはありません。」
「お前ら…。」
「活路を開くためベルノちゃんはオジサンと一緒に前を走って。私は二人を追わせない為に最後尾に着くから。」
「…わかった!入口で待ってるぞルーマちゃん!」
「ありがとうベルノちゃん!すぐに追いつくから!」
ベルノの呼び出した銀狼の背にNPCの男を乗せ別の銀狼にはベルノがまたがる。そして二人を守るようにアタックボアの群れを作り出し出口を塞ぐギルド員目掛けて突進を開始する。その数と質量に負けたギルド員は止めることができずあっさりと二人の脱出を許してしまうが、その二人を追おうとするギルド員の前にルーマが立ち塞がる。
「まずはあなたがたを先に屠ります。残されたMP的に少しきついですが人間相手なら以前のイベントのお陰で多少楽に戦えますので、皆さん頑張って私のことを倒してみてください。 」
挑発するルーマに痺れを切らした一人の戦士が斬り掛かる。距離を詰められる前にすぐさまルーマは床に魔法陣を展開しそこからとある一体を召喚する。
「まずは比較的お手軽に呼び出せる『彷徨う鎧』で前衛を張ります。中は空洞でこの鎧自体に意思が宿ってると思ってください。そして数を合わせるために他の仲間も呼びます。」
再度魔法陣を二つ展開しそこからまた何かを召喚した。
「『騎狼隊ゴブリン』と『蠢く骸』で数は用意しました。これで数的有利をなくします。ではここからが私達の戦闘です!各員対象は目の前の人間たちです!思う存分暴れなさい!」
その命令を聞くや否やゴブリンライダーは突撃し乗っている狼と共に連携をとり攻撃を開始し、スケルトンアーミーはその物量で一人の敵に対し二人以上で戦闘をし確実に仕留めていく。そして、彷徨う鎧は出来るだけ強敵と戦い時間を稼いでいる。戦場は今混沌を極めていたがそんな中でも二人だけは冷静にことを眺めていた。
「……なるほど。先日とある冒険者が街道の化け物熊を退治しこの町に来たと聞いていたがそれは君たちのことだったのか。」
(この人が多分ここにいるメンツでいちばん強い人みたい。青い髪で前髪は目にかかるくらいには伸びてるけど瞳が見えない訳じゃない。そんな絶妙な長さで無駄に整った顔してる。まだ子供の私でわかる、この人性格はそんなに良くないタイプだ。軽装で腰には直剣一本と反対の腰に短剣がある。毛色が違うけどこの人もプリンさんと同じ剣士さんで間違いないと思う。私は一対一の勝負は得意じゃない。出来ればあの人を除く他ギルド員を倒して数的有利を取った状態で戦いたいけど…。 )
「君は見たところ魔物を使役してるようでそれで戦闘をする所謂援護系の人間みたいだけど、それ大丈夫?僕たちギルド員にもそういった子はいるけど基本パーティーを組んで前衛に守ってもらいながら戦ってる。恐らく使役した魔物達がその役割だろうけど、今あんな感じで混戦になってるんじゃいないも同然だよね?」
「……痛いところついてくるね。おにいさん正論大好きでしょ?」
「あぁ当たり前だよ。それが一番効くからね?」
「確かにそうだと思う。でも、私が近接苦手だと決めつけるのも良くないよ?」
「杖を持っている人間が近接得意なわけがない。僕の知る限り後衛で杖を持つ人間は総じてみな打たれ弱い。当たり前だ。互いに戦う土俵が違うのだからね?今回は僕のような前衛である剣士と同じ土俵で戦うということは負けに行ってる様なものだ。分かるかい?君は今違う土俵に立ってなお勝てると思ってるんだ。物理が専門の人間に魔法が専門の君が勝てると思ってる。滑稽な話だよ。」
「それは私にだって言えるよ?魔法の専門の私の土俵に上がり込んだのはおにいさんだってこと。少なくともこの距離感は私の間合い…。近付くことが困難になるかもよ?」
「ならやってみるといい。」
「言われなくてももうやってる。」
そう話すと彼の四肢を封じるように配置された魔法陣から無数の骨の腕が現れ両手両足にまとわりつき動きを封じる。
「…なるほど?これで僕の動きを止めている気かい?」
「事実止めてるでしょ?」
「全く強くても子供だな…。四肢の動きを封じただけで勝気になってるとはな。」
瞬間彼の左腕が燃え始め、捕らえていた骨は炭となり消えそのままほかの捕えられた部位をその炎で消し炭にしていく。
「そんな…!?」
「僕のこと『剣士』としてしか見てないね?残念だけど僕はただの剣士じゃない『魔法』も扱える剣士『魔法剣士』と言われる上級職だ。」
魔法剣士…。確かに職として存在してるのは知ってる。このゲームは基本チームを組んで進んでいくのが主流だが、ソロでもやろうと思えば攻略できるくらいの難易度になっている。が、あくまでもやろうと思えばだ。主流なのはチームを組むことなのでそれぞれの職には短所がありそれを補う形でチームは組まれていく。
例えば私の召喚士は後衛職と言われ、仲間のカバーをするのが主な仕事で相手に対してダメージを出すのが仕事では無い。対して剣士はいわゆるDPSと言われる殴ることが仕事で補助は仲間に任せると言った役回りなのだが、この補助の部分も自分でなんとかすることが出来るのが魔法剣士と言われている。
自分一人で殴れるし回復もできるしバフもかけれる自己完結型の職ではあるが当たり前に欠点はある。それは万能型故の特徴のなさだ。剣士だった頃はとにかく攻撃に特化していたが魔法剣士になると剣士ほど攻撃力は高くなく、魔法も魔法使いやヒーラーである白魔道士にバッファーの占星術師と比べれば威力もMPも劣っている。よく言えば万能型、悪く言えば器用貧乏。ソロでやる分にはそれで十分だがすぐに頭打ちになるため、結局どちらかに特化した方が強くなる。
だからか影の薄い職の一つに挙げられる訳で、現に私も今の今までその存在をすっかり忘れていたということだ。
しかし、基本後衛である私と前衛である剣士だったら状況次第ではどちらも分があるわけで、現に相手が剣士だったらさっきの拘束で私の勝ちだったのだが、まさかの魔法剣士というオチになったことで私は不利になってしまった。ベルノちゃんのように万能型を目指しつつステ振りを素早さに極振りなんかしてたらチャンスはあったかもしれないけど、私はとにかくベルノちゃんを守る為にMPに極振りしたちゃんとした後衛職、しかもバフとか補助に回るタイプの後衛職だから攻撃手段がかなり少ない。
対する相手は万能型の中でさらに攻撃寄りにしてるであろう魔法剣士ときたもんだ。魔法で削って剣による物理攻撃でおしまいって事が相手さんは可能みたいなのが正直痛い。でも、ベルノちゃんやオジサンにここは任せてなんて見栄張った手前そんなすぐやられる訳には行かないし……。
「僕が魔法剣士なのがそんなに都合悪いのかな?けどまぁ、そうだよねぇ。その見た目的に君さっきのやつらの補助的役割を持つ人でしょ?後ろで僕の部下達が相手してるあれもあくまで人数を合わせるためのお人形さんだ。一体一体はそんなに対した強さは持ってない。強いていえばあの鎧に身を包んだ人型のやつがこの中じゃ手練ってだけ。もちろんアイツも僕とやり合えば敵じゃないけどね」
「おしゃべりなんですねあなた?そんなに子供である私に下に見られて悔しかったんですか?だからこうやってペラペラと語るばっかで……。もしかしなくてもあなた部下にも同期にもあまりよく思われてないですよね?そんな性格してますし?」
「………ははっ!子供にしては良い言葉遣いじゃないか?でも、そんな言葉使うのはもう少し歳を重ねてからにした方が、良かったけどなぁ!!?」
何かしらの自己バフを唱え距離を詰めたかと思えば容赦なく彼女の胴体に蹴りを入れる。派手に吹き飛び壁に打ち付けられ岩が雪崩てその岩に埋もれてしまった。
「クハハハハッ!!余計な事に首を突っ込まなければこんな痛い目に遭うこともなかったのになぁ?好奇心旺盛で生意気なガキにはまだ分かんねぇか!だが、いい授業料じゃねぇか?今後はこーいう怖い目に遭うから人と関わることはやめようってなぁ?ま、今後があるかどうかは知らねぇけどなぁ!!」
「……オニーサン子供の挑発に素直に乗っちゃうなんてキレやすいね?子供思考のまま大人になっちゃったみたいでいい反面教師だよ。世界を知るっていいね。」
崩れた岩の中からそんな言葉が聞こえ、続く言葉を紡ぎながらその岩たちを退けて少女が姿を表す。
「私はまだ口でしか攻撃してないのにオニーサンはもう手を出したんだ?これじゃあどっちが子供かわかんないけど、手を出したってことはこっから先私は…『正当防衛』としてやり返してもいいんだよね?」
「おいおい…あの拘束は攻撃だろ?それともなんだ脅しだって言うのか?」
「脅しじゃなくて警告だったんだけど、今さっき私に蹴りを入れた。これはれっきとした攻撃…暴力だよね?先制したのはたしかに私だけど『先制攻撃』したのはオニーサンだ。本当は生かしてあげたかったけどやっぱりやーめた。オニーサン……死んで?」
ようやく岩の中姿を表した少女は先程の子供ながらに何処か大人びた雰囲気は感じられなくなり、あるのはただ確かな殺意。蹴りによって頭部から血を流し同様にゴスロリの服が破けた左腕からも血が垂れる。
「装備とはいえ気に入ってんだよねこのお洋服…。だって『私』のベルノちゃんが可愛い、似合ってるって言ってくれたお洋服なんだもん。それをこんなに穢して破いて泥を塗ったオニーサン………。私、嫌い。。。」
冷たく言い放ったその言葉と同時に彼女の目の前の床に先程の魔法陣より大きなものを形成しそこから一体のモンスターを呼び出す。
「は、はぁ……?な、なんだよそれ…。本当に魔物なのかよこいつはよぉ!?」
震え怯えるその声…。彼の前に現れたのは人型の巨大な人形。武器も防具もしておらず、顔もない。マネキンのように造形がしっかりしてる訳でもなく、ただ『人型』の人形が力なく項垂れていた。
「私はMPに極振りした『召喚士』強い魔物を召喚するにはそれに見合ったMPを出さないといけない。この子は今私が使える技の中で五番目のMPの量を消費して呼び出すことができる魔物。名前はそのまま『パペット』…。意思はそこにはない代わりに私が彼の代わりに動かしてあげれる。先に種明かしをしてあげると今私が『左手』で持ってる木の板に糸を垂らして人形と繋いでる古典的なこのパペットが本体なの。この子をこうやって動かすことであなたの目の前にいる人形も動くのよ。」
そういい項垂れていた人形を立たせて顔のない顔を彼の眼前に近づける。
「ひぃっ…………!?」
「倒し方は簡単…。私の持つ本体を壊すかそのおっきな人形を火で燃やすなり力で壊すなりの二択。けどまずはオニーサンも私と同じ目に遭ってもらおうかな?」
血で濡れたその顔を上げてニヤッと笑い手元にある人形を動かす。大きな人形もそれと連動して動き出す。指のないまるで棒人間のようなその腕が彼の左半身に当たり振りかぶったその勢いを殺すことなく壁に叩きつけられる。
「うがぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
「良い声ですねぇ♪私も蹴られた時そんな声出せばよかったと思います。」
(う、腕がイカれた……。当たった瞬間は激痛が走ったのに今はもう痛みが感じられない。それどころか感覚そのものがない…。筋一線も動かせない……。肋は生きてるが、それでもかろうじてといったとこだろう…。折れては無いが下手に動けば直ぐに折れる…。足も言うことを聞いてくれねぇ……。左足なんて見たことねぇ角度してるよこれは…。あぁそうか。これが死ぬということか……。)
「魔法剣士なら回復出来るんでしょ?ほら、待っててあげるから回復していいよ。私優しいから。」
「はぁ……はぁ………はぁ……………。」
「遠くからでもわかるよオニーサン?なんでそんなに怯えてるの?さっきまであんなに生気に満ちた表情と瞳してたのに…。」
「た、たす…け……」
「そんな言葉聞きたくない。私は別にさっきの蹴りで受けた怪我に怒ってるんじゃないの。アレは物理軽減の魔法を使ったおかげで見た目よりもダメージは少ないからね。それよりも怒ってるのはこのお洋服を台無しにされたことに怒ってるの。一応直せるとはいえ初めてここまで破れて汚れたからね。その怒りを今あなたにぶつけてるの。
いい?今の攻撃は蹴りに対してのやり返しでまだ本命の破いて汚したことに対しての攻撃は行ってないの。だから早く立って?回復して?あなたの部下がやられる前に隊長のあなたがやられてどうするの?大人としてお手本見せてよ、オニーサン?」