TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

プロローグ



この世界には、「ケーキ」と「フォーク」が存在する。


ケーキ──


それは、人間でありながら、人間以上の「香り」を持つ存在。


決して人工では作れない


濃厚で、ふわりと甘く


本能に訴えかけるような香気をまとう、選ばれし者。


けれどケーキは、自分がケーキであることに気づかない。


自らを「普通の人間」と信じたまま、日々を生きている。


それが一番の幸福であり、一番の無防備だった。


一方で、フォーク──


かつて、何らかの理由で「味覚」を失った人間たち。


人との関わりの中で、心の奥の何かが摩耗してしまった者たち。


だがある日、突然“香る”誰かに出会い


失われた味覚が目を覚ます。


それが、ケーキとの邂逅だった。


フォークにとって、ケーキは唯一無二の悦楽だ。


一口、いや、ひと舐めでもできたなら。


この喪失だらけの人生に、確かな“味”を取り戻せる。


──だが、当然ながら、ケーキは“食べ物”ではない。


それを理解していてもなお


自制心が壊れてしまうほどの甘美が、そこにはある。


誰にも言えない衝動

誰にも止められない欲望



ケーキとフォークの関係は、

しばしば“捕食”という悲劇を呼ぶ


* * *


朝のテレビから流れる、どこか遠い世界の話のようなニュース。


『……昨日午後8時ごろ、都内の繁華街で、20代の女性が男に襲われる事件が発生しました。女性は軽傷で命に別状はなく──』


ソファに座ってパンをかじっていた俺は、手を止めてテレビに目を向けた。


『犯人は取り押さえられましたが、容疑者は取り調べに対し、“どうしても我慢できなかった”と供述しており──』


「ケーキ……また襲われたんだ」


ぼそりとつぶやいたあと、テレビの画面から目をそらす。


「……怖いな、ほんと……俺には関係ないだろうけど……」


言いながら、自分の胸の奥で、何かがざわついた気がした。


だけど、それが何なのかは分からない。

分かる必要も、ないはずだった。


──そのときまでは。



────────────────────────────


01話 『ケーキとフォーク』


今日は月曜日


晴れ


けど、風がちょっと強くて、花粉もめちゃくちゃ飛んでる気がする。


目覚ましのスヌーズを三回かけてようやく起き上がり、ぼんやりと鏡の前に立った。


寝癖がひどくて、いつものように水でごまかして、ネクタイを締める。


「よし……今日こそ、主任に怒られない……はず」


小さく声に出して、気合を入れる。


まだ社会人になって2週間。研修を終えたばかりの新入社員


俺・|雪白《ゆきしろ》 |恋《れん》は、今のところミス続きだ。


特に──


「…今日こそ烏羽主任に一回も指摘されないようにしないと……!」


|烏羽《うば》 |尊《たける》主任


直属の上司で、社内じゃ“鬼上司”の異名をとる有名人


怖い、というより、迫力がすごい。


無口で目つきが鋭くて、怒ると容赦ない。


……けど、なにかと社員思いだから


体調悪いときなんて、主任なりに優しく声をかけてくれることがあって


そのたびに心臓が変なふうに跳ねる。


冷たく見えるのに、あの人の言葉や声って、変に沁みる。


(って、違う違う。ぼーっとしてる場合じゃない!)


俺はネクタイをギュッと締め直して、玄関を飛び出した。



混雑した通勤電車。

今日も相変わらず、ぎゅうぎゅう詰め。

扉の近くはもう埋まっていて、奥のほうまで押し込まれて、もはや足も自由に動かせない。


吊り革にも届かないし、周囲に押されて体勢を保つのがやっと。


俺の身長じゃ、車内広告も視界に入らなくて、目のやり場に困る。


(主任、今日は機嫌いいかな……)


そんなことを考えながら、俺は人の流れに揺られていた。


湿気と、香水と、いろんな人の体温と匂いが混ざって、気持ち悪くなりそう。


あー、早く会社に着かないかな……。

いや、でも着いたら主任いるしな……。


そんなふうに思考が堂々巡りになりかけた、そのとき。


不意に、耳元にぴたりと口を寄せられた。


「……君、ケーキだよね」


(……え?)


声の主は、すぐ後ろにいた男。


一瞬、聞き間違いかと思った。


けど、はっきり聞こえた。


ケーキって……なに?


なんの話?


どういう意味?


思考が追いつかないまま、反射的に振り返ろうとした。


──が、その前に


男の手が、俺の右腕をぐっと掴んだ。


「あっ……!」


力が、強い。

細い手首が、まるでつかまれた瞬間に支配されたみたいに動かせなくなる。


「やっと見つけた……」


今度は、耳元で囁かれた声が、妙にねっとりしていた。


俺の背中を、ぞわりと悪寒が走った。


(……なにこれ、やばい。やばいっ……!)


あたりは混雑していて、助けを呼べるような状況じゃない。


声を出そうにも、電車の揺れに紛れて


音がかき消されてしまう。


「……君みたいなの、ずっと探してたんだよね……」


(助けて──誰か……!)


「……ずっと我慢してたんだけど、もう限界……ちょっとだけ、味見させてよ」


(な、何言って……っ!?)


ゾッとした


背中に冷たいものが流れる。


まるで目の前に、蛇が鎌首をもたげているような、そんな寒気がした。


一瞬、動揺で息を止めてしまった。


吐息が首筋にかかる。


じっとりとした湿り気が、肌の産毛を逆立てた。


全身の毛穴がぶわっと開き、悪寒が背筋を駆け上がる。


視界の端で、俺のすぐ後ろにいたはずの中年の小太り男性の顔が


ぐいと寄ってくるのが見えた。


脂ぎった鼻の頭が妙に光って、汗ばんだ額にはシワが深く刻まれている。


その口元は、まるで下品な笑みを貼り付けたかのように、醜く歪んでいた。


彼の視線が、まるで獲物を値踏みするかのように、俺の全身をねっとりと舐め回す。


「腕、細くて美味しそうだねぇ……」


その言葉が、耳の奥で反響した。


思わず、全身が硬直する。


ゾッとしないにも程がある、悍ましい言葉だ。


彼の厚ぼったい指が、俺の左腕に食い込んだ瞬間


骨が軋むような激しい痛みが走った。


血の気が引いていくのが分かった。


爪が皮膚に深く食い込み


このままでは本当に食い破られてしまうのではないか、と本気で思った。


ちぎれそうなほどの力で握り締められ、反射的に身を捩る。


逃げようともがくが、通勤ラッシュの人の波は


俺を嘲笑うかのようにびくともしない。


むしろ、その波が俺の体を固定し


身動き一つ取れないように拘束しているかのようだった。


まるで、分厚い壁に囲まれたかのように、自由が奪われていく。


「やめっ……離してくださいっ……!」


必死に声を振り絞る。喉が張り裂けそうなくらい


大声を出したつもりだった。


なのに、俺の声は


まるで空気に溶けてしまったかのように


か細く、誰にも届かない。


車内に響くのは、電車の耳障りな走行音と


乗客たちの無関心なざわめきだけ。


誰もこちらを見ない。


窓の外をぼんやり眺めている人。


イヤホンで音楽を聴き、顔を伏せている人。


疲れたように、もしくは眠気を誤魔化すように目を閉じている人。


スマートフォンに夢中になり、指先を滑らせている人たち──


彼らの視線は虚空を見つめ、俺の存在なんて最初からなかったかのように


皆がそれぞれの世界に閉じこもっている。


まるで俺だけが透明人間になったかのように、助けを求める声は、誰の心にも響かない。


心臓が嫌な音を立てて波打ち、呼吸がどんどん浅くなる。


冷たい汗が背中を伝い、身体中が小刻みに震え始めた。


恐怖が、津波のように俺を飲み込もうとしていた。


もうダメかと思った、そのとき


突然、俺の腕に食い込んでいた男の指が、引き剥がされた。


「朝からスイーツ狩りとかやめなよ」


唐突に、だが、周囲の喧騒を切り裂くように


はっきりとした男の声が聞こえた。


聞き慣れない声だった。


「普通にキミ、通報案件だよ?」


俺を掴んでいた小太りの男は、まさか邪魔が入るとは思わなかったのだろう。


驚きと、そして明らかな不快感を露わにして


舌打ちをした。


憎々しげに俺と、助けに入った男を交互に睨みつける。


その目には、獲物を横取りされた獣のような


ねっとりとした執着が宿っていた。


だが、助けてくれた男の視線に射抜かれると


男はすぐに目を逸らし


逃げるように次の駅で慌ただしく降りていった。


残されたのは、助けてくれた男と、未だ動悸が収まらない俺だけ。


彼が俺に向かってにっこり笑った。


その笑顔は、どこか見慣れない、しかし妙に整った顔立ちだった。


朝日に照らされた金茶色の髪は、まるで光を吸い込んだように輝いている。


見るからに高級そうな、しかしどこか遊びの効いたスーツは、彼が俺たちと同じ「普通」の人間ではないことを物語っているようだった。


チャラくて軽そうな雰囲気なのに


小太り男の手を俺から引き剥がした彼の腕っぷしは尋常ではなかったし


言葉の端々からは、妙に落ち着いた


底知れない強さが感じられた。


「怖かった? ケーキは気をつけなきゃね。とりあえず、無事でよかった」


(ケーキって……また言った……)


俺の頭の中は、助かったという安堵と


理解できない言葉の違和感とで、ぐちゃぐちゃに混ざり合っていた。


ケーキ…って、俺のこと?


そんな馬鹿な


不審と困惑が入り混じる俺の視線に気づいたのか、男は軽く肩をすくめた。


その仕草すらも、どこか絵になるようで、わけがわからなかった。


「じゃ、またね」


それだけを言い残して


彼は人混みの中に、すっと消えていった。


まるで幻だったかのように、あっという間にその場にはもういない。


残されたのは、ほんの数秒前の出来事とは思えないほどの、強烈な現実感だけだった。


助かったという安堵が、ようやく全身にじんわりと広がっていく。


震えていた手足が、少しずつ感覚を取り戻していくのを感じた。


しかし、同時に「ケーキ」という言葉が脳裏にこびりつき


自分の二次性別が「ケーキ」だという事実に全身が震えた。


そして、何よりも、今さらながら主任に遅刻を言い訳しなきゃいけないという現実的な焦りが


混乱した頭の中に急浮上した。


こんな滅茶苦茶な朝の出来事を、どう説明すれば信じてもらえるのか。


俺の頭の中は、安堵と絶望感と


そして得体の知れない不安で、完全にキャパオーバーだった。


会社に着いた頃には、もう始業から10分が経っていた。


(主任に……怒られる……)


おそるおそるエレベーターを上がり、企画開発部のフロアに足を踏み入れた


その時


廊下の向こう


仁王立ちする主任の姿が、目に入った。


背筋が、瞬間で伸びた。


「……っお、おはようございます……!」


「ああ、おはよう。……雪白、お前が遅刻とは珍しいな」


仁王立ちで腕を組み、鋭い目を向けてくる主任と鉢合わせた。


「ッ──す、すみません! あの、駅でちょっと、トラブルがあって──」


「トラブル?遅延は言い訳にならないからな」


その口調は、普段とまったく変わらなかった。冷静で、容赦がない。


(ダメだ……どう言えば……)


何を言っても言い訳にしか聞こえない気がして、喉が詰まる。


(……でも、事実だし、ちゃんと話そう)


「その……実は、電車で……フォークの人に、襲われかけて……っ」


声が震えた


言ってるそばから涙がこみあげそうになって、自分で情けなくなる。


『社会人ともあろう者が…お前には危機管理能力が無いのか?』


『だらしない、そんなんだから狙われるんだ』


俺の中では、主任に怒鳴られる未来しか想像していなかった。


しかし主任はじっと俺を見つめたまま


何も言わずに数秒、間を置いてから口を開いた。


「……怪我は?」


「え……?」


「お前のことだから、抵抗もできなかったんだろ」


「お、怒らないんですか?危機管理能力が無い、とか」


「……いいか、俺もそこまで鬼じゃない」


思わず、ぽかんとしてしまう。


怒鳴られる覚悟だったのに、こんな言葉が返ってくるなんて。


「それより、襲われかけてどうしたんだ」


「えっと……丁度通りすがりの男性が助けてくれて、なんとか……」


「そうか。……特に急ぎの仕事はない。少し休憩してから仕事に戻れ」


「……は、はいっ、ありがとうございます……!」


主任の言葉に、俺はただただ安堵した。


絶対怒られると思っていたのに、むしろ心配までしてくれている。


優しいのか、厳しいのか分からない人だと思った。


…その日はなんとか、普段と変わらない一日を過ごせた。


よく、フォークに襲われて自分がケーキだと自覚するケーキがいるらしいけれど


まさか俺がケーキだったなんて


こんな形で知ることになるとは思わなかった。


ただ、本当に助けてくれた男の人には改めてお礼を言いたかったな…


(また会えるかな……)


そんな淡い期待を抱きつつ、俺はその日を終えた。


仕事を終え、俺はいつも通り、一階のエントランスでエレベーターを降りて 駅を目指した。


正面玄関の自動ドアが開くと、抜けるような夜空と心地いい風が俺を待っていた。


街の明かりに照らされた夜空に、小さく星が瞬くのが見える。


ビルの前を通る車からは、うっすらと排気ガスの香りがして


ほんの数時間前までは人でいっぱいだったはずのこの空間が今はなんだか物寂しいような気もした。


駅に向かって歩きながら、俺はふとあの朝の出来事を思い出していた。


(フォークに襲われてケーキだと自覚するって……しかもそれで遅刻するし嫌な朝だったな)


でも、主任は意外にも優しくてビックリした。


いつも怖くて、近づきがたくて、だけど。


その厳しさの奥には、ちゃんと温かいものがあった。


(……なんか、好きになっちゃいそうだ…)


その言葉が、唐突に頭の中に浮かんだ。


あまりにも自然に。


あまりにもすっと、胸に落ちた。



◇◆◇


それから数日後の会議室


企画開発部の定例会議は、いつだって張り詰めた空気に満ちていた。


特に、烏羽尊主任が席に着いているときは顕著だ。


彼の視線が資料の文字を一文字ずつ追うたび、俺の背筋はピンと伸びる。


まるで、少しでも姿勢を崩したら、その鋭い視線が直接社員の心臓を射抜くようなそんな錯覚に陥るのだ。


今日の議題は、新規製品開発プロジェクトの概要説明。


俺は配られた資料をめくりながら、烏羽主任の声に耳を傾ける。


彼の説明は常に的確で無駄がなく、だからこそ、少しでも聞き漏らしたり理解が及ばなかったりすれば、容赦ない指摘が飛んでくる。


社会人一年目を迎え、毎日が試練の連続だったけれど


中でも烏羽主任の存在は、俺にとって最大の学びであり、同時に最大のプレッシャーでもあった。


「……以上で、今回の新製品開発プロジェクトの概要説明を終わる。質疑応答に移るが、何かあるか?」


烏羽主任の低く、しかしクリアな声が会議室に響き渡り、沈黙が訪れる。


そのわずかな間が、なぜかとても長く感じられた。


最初に手が挙がったのは、ベテランの田中さんだ。


その後もいくつか質問が飛び交い、烏羽主任はそれら全てに淀みなく答えていく。


俺は内心ひやひやしながら、一言一句聞き漏らすまいと必死でメモを取り続けた。


烏羽主任は、どんな小さな矛盾や見落としも見逃さない、恐ろしいほどの完璧主義者なのだ。


質疑応答が終わり、誰もが次こそ会議は終了するだろうと身構えていた


そのとき


烏羽主任は、まるでとどめを刺すかのように、ある一言を付け加えた。


「それから、今回のプロジェクトの肝となる市場調査についてだが、来週から一週間、大阪へ出張することになった。同行するのは、俺と…雪白、お前だ」


その言葉を聞いた瞬間、俺の思考はフリーズした。


え? 今、なんて言った?


「俺と…雪白、お前だ」……?


俺と烏羽主任が、大阪に一週間も出張?!


一瞬の静寂の後、会議室のそこかしこからざわめきが起こるのが聞こえた。


隣に座っていた鈴木先輩が、ちらりと俺の方を見た。


何か言いたげに口を開きかけたが、烏羽主任の視線に気づいて慌てて口を閉じた。


烏羽主任は、俺たちの動揺など全く意に介さない様子で「何か質問は?」と再び尋ねたが


誰も声を発することはなかった。


まるで、誰もが同じ衝撃を受けているようだった。


会議が終わり、俺がふらふらと自席に戻ると


まるで群がる蟻のように、同僚たちがあっという間に俺の周りを囲んだ。


「雪白、お前、マジかよ……あの鬼部長と二人で出張とか最悪じゃん。お前、明日からちゃんと出社できる?」


同期の田中は、心底気の毒そうな顔でまるで俺が末期病患者にでもなったかのように尋ねてきた。


「俺だったらメンタル死ぬかもな……烏羽主任、仕事はできるけど、ついていくこっちがしんどいんだよな。」


「ま、健闘を祈るわ」


同じく同僚の鈴木も、苦笑いを浮かべながら俺の肩をポンと叩き


まるで戦場に送り出される兵士にでも語りかけるような口調だった。


次から次へと、まるで不幸のどん底に突き落とされた人間に対するかのような同情の声が浴びせられる。


確かに、普段の烏羽主任は恐ろしいほどに厳しい。


「大丈夫だって、ああ見えて烏羽主任優しいし……!」


でも俺は、精一杯の笑顔でそう答えた。


心の底から、そう思っていたからだ。


あの通勤電車の件で襲われた時、烏羽主任は、怒るどころか、俺を心配してくれた。


それだけでなく、仕事でミスをしても感情的に怒鳴ることはなく


どうすれば良かったのか、次はどうすべきなのかを論理的に、そして真摯に教えてくれる。


それは、俺がこれまで抱いていた「鬼上司」というイメージを、良い意味で裏切るものだった。


俺の中では、烏羽主任の存在は間違いなく変わり始めていたのだ。


しかし、俺の言葉を聞いた同僚たちは、一斉に顔を見合わせたかと思うと


まるで信じられないものを見たかのように、目を丸くして固まってしまった。


「優しい?! あの人が??」


田中が、耳を疑うとばかりに聞き返してきた。


「雪白ガチで言ってんの?正気か? まさか部下だし可愛がられてるとか?そうは見えねえけど……」


鈴木は、俺の額に手を当てて熱がないか確かめようとまでしてきた。


俺の言葉は、彼らにとっては信じがたい


むしろ正気を疑う発言だったらしい。


俺が力説すればするほど


彼らは「雪白は天然だからな……」とばかりに


憐れむような苦笑いを深めるばかりだった。


(主任…一見怖そうに見えるけど、そんなに悪い人じゃないと思うんだけどな…)


俺は同僚たちの不信と困惑に満ちた視線を受けながら、心の底でそう呟いた。


この一週間の大阪出張は


俺にとって烏羽主任の本当の姿を知る、またとない機会になるのかもしれない。


そんな期待と不安が入り混じった、複雑な感情が胸の奥で渦巻いていた。



甘噛みでお願いします!【ケーキバースBL】

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

1

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚