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「あなたの人生と、私の人生を交換したいんだけど。条件はある?」
そう言って手を差し伸べてきたのは、なんと有名なインフルエンサー的存在の彼女だった。
動画の企画に行き詰まったのか理由は分からないが、彼女は本気の目で私にそう持ちかけてきた。
私はというと、どこにでもいる一般人だ。
多くの人がそうであるように、特別な肩書きも、注目される理由もない。
そんな私に彼女がこの話を持ち出したのには、一応理由がある。
私たちは、昔からの友人だった。
「同じくらいの年代に生まれて、同じような学校に行ってさ。でも、その後の人生はまるで違うでしょ?」
彼女は笑いながら言う。
「私は有名人。あなたは一般人。それだけで、十分面白いと思わない?」
正直に言えば、私は昔から彼女が少し苦手だった。
明るくて、元気で、はきはきしていて、友人も多い。
というより、友人であることを一方的に成立させるのが上手な人だった。
余計な一言を添えるなら――
悪い人ではない。
「いい人でもないけどね」
人生を交換する、という話を詳しく聞くと、彼女は思った以上に本気だった。
自分が持っている環境を、そっくりそのまま私と入れ替えたいらしい。
「お金も、家も、立場も全部ね。それで一年後に結果を見るの。あ、動画は投稿し続けるけど、その収益は私のものだから」
私は、その言葉を口にする彼女の目を見て、ため息をついた。
「はあ……あんた……じゃあ、交換してあげなくもないから、その手に持っている重そうな荷物を下ろしなさいよ」
彼女は、両手に抱えた荷物を離さないまま、静かに涙を流した。