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怜と恋人同士になり、月曜日と水曜日は彼の部屋で過ごす事になった奏。
この日は、怜と会うと決めた最初の月曜日。
昨日の夕方近くまで一緒にいたばかりなのに、もう恋人に会える事が、奏にとっては嬉しい事でもあり、何だか照れ臭くなってしまう。
日野のハヤマ特約店でレッスンを終えた奏が、店を出て駅に向かおうとした時。
「奏」
背後から聞き覚えのあるイケボに、奏は弾かれたように振り返った。
「怜さん!?」
彼は店の出入り口のすぐ横で待っていたようで、奏は全然気付かなかった。
若干不貞腐れながら、怜は後頭部を軽く掻く。
「すぐ気付くかと思ったのに、全然気付かないんだもんなぁ……」
「ごめんなさい。まさか店に来てるとは思わなかったので……」
困ったような顔を見せる奏が、怜は可愛いと思い、長い黒髪をサラリと撫でた。
「車なんだけど、すぐそこに停めてあるんだ。行くぞ?」
怜が奏の手を取り、先導するように一緒に歩いていくと、店の少し先に、白いセダンがハザードランプを点滅させて停車している。
怜は助手席のドアを開け奏を乗せた後、運転席に座り、車を発進させた。
途中コンビニへ寄り、軽食などを購入した後、車は豊田のマンション敷地内へと入り、地下駐車場へ滑り込む。
車を降り、エレベーターで怜の部屋へと向かった。
(昨日も、この部屋で怜さんと過ごしたんだよね……)
そう考え出すと、奏の鼓動が早鐘を打ち鳴らし始め、無口になってしまう。
怜が部屋の鍵を解錠させると、奏の腰に腕を回し、部屋に入るように促す。
手洗いとうがいを済ませ、怜が先にリビングへ入り、エアコンとルームライトを点ける。
ソファーセットのテーブルに、コンビニで購入したものを冷蔵庫にしまうと、遅れて奏が入ってきた。
怜は細い手首を掴み、引き寄せると、奏の華奢な身体を抱きしめた。
「奏……」
怜は奏の小さな頭を胸元に抱き寄せて唇を落とした。
「昨日も一緒にいたのに……すげぇ会いたかった……」
彼女が纏っていたコートを脱がし、滑らかな生地のワンピースに覆われた背中を撫で回す。
奏は彼の胸に顔を埋めながら、鼻を擦り寄せた。
この仕草は、彼女が怜だけにしか見せない、二人だけの秘密の仕草。
甘えてくる奏が、ただひたすらに可愛いと感じた怜は、彼女の顎をそっと掴むと唇を奪う。
「んうっ……」
奏の背中を支えている大きな手から放たれる温もりが、やけに気持ちいい。
ヌルリと彼女の口腔内を這う怜の舌に、身体が砕け、意識が飛びそうになってしまう。
どれくらいの時間、口付けを交わしていたのだろう。
奏の頭の中は白く霞み、ポーっとしていると、怜は膝下を腕で掬い、彼女を抱きかかえた。
「ちょっ……怜さん!?」
俗に言う『お姫様抱っこ』をされるのが初めての奏は、軽く混乱するが、怜は何食わぬ顔で、大股歩きで寝室へと向かう。
「俺に慣れるまで、奏の肌……たくさん触れさせてもらうからな?」
淫靡な色を湛えた涼しげな奥二重の瞳。
(私、今日ワンピースじゃん。って事は……)
奏は一気に羞恥心に襲われ、怜の胸に寄りかかりながら顔を俯かせた。