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「だったら何であの時、私を捨てなかったの!? 私、先生に『今すぐ私を捨てて』って言ったじゃん!! 見ず知らずの男らに犯された私なんて、さっさと捨てちゃえば良かったんだよ!!」
「瑠衣!!」
侑は彼女の言葉で頭に血が上り、怒鳴ってしまった。
右手が僅かに動き、瑠衣に平手打ちをしそうになり、その衝動を必死に耐える。
震える手をギュッと握りしめた後、ゆっくりと下ろした。
今まで感情的な部分を見せなかった侑の怒りと悲しみがせめぎ合う表情に、瑠衣の面差しが涙ながらに怯む。
「なん……で……何で…………私を捨てなかったのよぉぉおおおぉっ!!!」
彼女が徐々に顔を俯かせて慟哭すると、侑は眉間に皺を寄せ、細くなった身体を抱き竦めた。
彼の胸の中で瑠衣は肩を震わせ、『どうして……捨てなかったのよぉ……』と言葉を漏らしている。
侑は瑠衣に掛ける言葉が見つからず、黙ったまま彼女を包み込む事しかできなかった。
重苦しい沈黙が包む中、侑は逡巡しながら彼女に呼び掛けた。
「瑠衣」
「…………っ……」
「…………俺が言うのもおかしいかもしれんが……。瑠衣……ヤケになるな。もっと……自分を大切にしろ……」
「……ヤケになんて…………なってない……」
声にならないような声音で言い返す彼女に、侑は諭すように瑠衣の髪を撫で続ける。
「…………この前も言ったが、あの時、俺は決めたんだ。お前にあんな事があっても、瑠衣の長所も短所も、過去も全てを受け止める、と。俺はお前から離れるつもりなど一切ない」
「…………」
瑠衣はまだ繊麗な身体を震わせ、時折強張らせている。
「…………俺たちはあの娼館での再会から、止まっていた時間が動き始めたと思っている。身体から始まった関係だが、恋人として互いの想いが通じ合っている今、俺はお前を抱く時…………大切に抱きたい。だから……」
侑は抱きしめていた腕を緩め、瑠衣を真っ直ぐに見つめた。
「…………『避妊しないで中出しで抱いて』などと馬鹿げた事を言うな。分かったな?」
「分かった…………けど……」
「けど……何だ?」
瑠衣が侑から眼差しを逸らし、消え入りそうな声で呟いた。
「…………やっぱり……先生に…………抱かれたい」