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「アイツは成績も優秀だったし、カッコいいから、女にはモテまくってたけど、バイトでホストやってたし、大学を卒業するあたりに、男娼もやってたんだよな……。一応、ちゃんとした彼女もいた事があったが、女の方が拓人に惚れ込んでて、アイツはそうでもない、って感じではあったが……」
廉は、優子久々に会えた事と、オスの欲求が満たされて嬉しいのか、饒舌になっている。
「で、今は女性専用風俗店のオーナーだ。まぁ……大っぴらに風俗店と謳わず、デザイナーズマンションみたいな雰囲気の建物に、エントランスに小さく店の名前が書いてあるだけの女風らしいが」
かつての上司が、フッと小さく笑いを零すと、天井に視線を向けたまま、言葉を繋げた。
「そういえば、岡崎は…………昨日、出所したんだよな?」
「ええ、そうです」
「って事は………昨日、拓人と知り合ったって事か?」
「ええ……まぁ……」
優子は眉尻を下げて、曖昧に笑う。
多分、かつての上司だった男に会うのは、多分、今日で最後。
以前の職場で働く事も、もちろんない。
だったら、全てを話しても特に問題はない、と考えた彼女は、拓人と出会った経緯をポツリと零していった。
「私、出所してからは、自分の人生は、完全に終わったって思って、立川のドラッグストアで…………万引きしようとしたんです」
「…………万引き?」
廉の奥二重の瞳が、丸みを増した。
部下だった優子が、さらに犯罪を重ねようとしていた事に、彼は、言葉を失っているように見える。
「千円ちょっとの化粧品を、掌でギュッて握って隠して……店を出ようとした時に、拓人って男に捕まったんです。恋人のフリをしながら万引きを止めてくれました」
「…………そうか」
「お金も全くないような状態で彼に拾われて、夕食をご馳走になって、寝る場所も提供してくれて今に至る……みたいな」
(その代わりに、私は身体を売って金を得ろ、って、拓人って男に言われたんだけどね……)
話しているうちに、徐々に恥ずかしくなってきた優子は、廉の精悍な顔立ちから視線を背けようとしたが、彼は滑らかな頬に触れ、こちらに向かせる。
「ひとつ、聞いていいか?」
「何でしょうか?」
廉が真剣な眼差しの色を湛えながら、優子を射抜いてきた。
「アイツと…………拓人と……寝たのか?」