休み明けの月曜日。
いつもと変わらない朝。
だけどいつもとなんとなく違う気分の朝。
いつも通り出勤準備して家を出る。
なんとなく・・廊下に出て隣に目をやってしまう。
こんなすぐ近くに早瀬くん、いるのか。
こんな近くにいてこんなに会わないもん?
それともあえてそうしてるとか?
わざと会わないようにしてるとか?
大体同じ時間に出勤すること多いし、同じ会社なのに。
まぁ基本少し早めに行くようにはしてるからかもだけど。
早瀬くんと出会ってからは、彼からのアピールや距離が普通以上だっただけに、さすがに意識してしまう。
なのに隣に住んでたのに今更?
向こうはずっと知ってたっぽいのに?
なぜ、このタイミング・・・。
なら・・。
最初に声かけられた時。
あの時すでに私を知ってて声かけてきたってこと?
今更?なんの為に? 何が狙い?
・・・謎。
ダメだ。考えれば考える程意味がわからない。
・・・あっ。結局あの時渡そうと思ってた書類渡し損ねた。
そろそろ意見交換し合わないとな。
書類も会社置いたままだし、とりあえず今日会社行ったらまた書類渡しに行くかな。
それから仕事の合間に時間が出来たので商品企画1部へ足を運ぶ。
入口で部署を軽く覗くけど、また早瀬くんの姿が見当たらない。
また外回りかな。
「あっ。すいません。早瀬さん今いらっしゃいますか?」
とりあえず時間もないので近くにいた人に聞いてみる。
「あっ。早瀬、今日休みで」
「えっ?休み?」
そうなんだ。
「なんか風邪ひいたみたいで」
「えっ?風邪?」
週末会った時、そんな感じしなかったけど・・・。
「また早瀬さんに会いに来たんですかー?」
出た。
またあの猫なで声の女子社員。
「えぇ。仕事、なんで。渡したい書類あって」
「早瀬さん。金曜日遅くまで残業してたからかな~。結構頑張ってたみたいだから疲れ出ちゃったのかも~」
そうなんだ・・。
あの日、早瀬くん残業して疲れた後だったのに、私介抱して家泊めてくれたんだ・・・。
なんか悪いことしたな。
「もう私が早瀬さんのお家知ってたら絶対お見舞い行ってあげるのに~!」
「早瀬、結構秘密主義だからな~。アイツどこ住んでるとかほとんどのヤツ知らないんじゃない?」
同じ部署の人たちが会話してる内容で、早瀬くんが秘密主義だと知る。
へぇ~同じ部署の人知らないんだ。
なのに、私には教えてくれたんだ・・。
まぁ、状況が状況なだけに仕方なかったのかもだけど。
でも、少し秘密を共有出来ている気がして、なぜかちょっと嬉しく感じたりして。
「アイツいないと仕事大変なんだよな~!早く治ればいいんだけど」
やっぱり彼が空いた穴は大きいんだ。
さすがエース。
「あっ、ありがとうございます。じゃあまた出直します」
そう声を掛け直してその場を立ち去る。
でもその話を聞いて状況を振り返って見ると、気になることがどんどん出てくる。
疲れた後に、酔っ払いの私を連れて帰って来て、起きないまま自分のベッドに寝かせて、その本人は朝まで爆睡。
その時、早瀬くんどこで寝たんだろう・・・。
そのせいで風邪ひかせちゃったのかもしれない・・・。
あ~、もう!私何やってんのよ!
他部署のエース風邪ひかせて責任重大・・・。
早瀬くん・・大丈夫かな・・・。
今日帰ってから隣声かけてみるかな・・。
そしてその日仕事帰りによく効きそうな風邪薬と果物・栄養ドリンクなどを買い込んだ。
一日でも早く良くなってもらわないと向こうの部署にも迷惑かかっちゃうし。
お見舞いも職場の人行けないみたいだし。
そう。隣のよしみだから。
それに、私が風邪ひかせちゃったかもしれないから。
なぜか自分に何かと言い訳をしながら、隣への差し入れを手にして早瀬くん家のチャイムを鳴らす。
・・・出ない。
もう一度チャイムを鳴らして様子を見る。
中で一人で倒れてるとか?
「早瀬くん?大丈夫?」
思わず心配になって出て来ないドアに向かって声をかけてしまう。
それでも何の変化もなく。
出て来ないなら・・仕方ないか・・・。
そう思って帰ろうとすると。
ガチャッ。
「もち・・づきさん?」
すると背中越しに聞こえる早瀬くんの声。
振り返ってその方向を見ると、風邪で辛そうにしながらドアから覗いてる早瀬くん。
「ごめん、寝てた?大丈夫? 風邪ひいたって聞いたけど」
「あ、あぁ・・うん。そうみたい」
「ちょっと・・部屋お邪魔していい?」
ホントは差し入れを渡すだけと思ってたのに、あまりにも弱っている早瀬くんを見て放っておけなくて。
つい自然に口からその言葉が出てた。
「あっ、でもオレ風邪ひいてるし。うつすと悪いから」
こんな時にそんな気遣い出来るんだ。
「病人はそんなこと気にしない。はい。入るね~」
なんか少し弱っている姿が可愛く見えて、思わずもう勢いでドアを開けて早瀬くんの部屋へ入る。
一度入った部屋なだけ自分も強気だ。
でも・・・それ以上に彼が心配。
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