テラーノベル
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「……私、分かんなくなっちゃって。二人を振り回してるのは私の方です。急にこんなことになっちゃって、どうしたらいいか……」
部室の隅でドリンクの準備をしながら、私は成瀬先輩にポツリと本音を漏らした。昨日までの「お兄ちゃん」が、今は一人の男として私に向き合おうとしている。その事実に心が追いつかない。
「こんな二、三日で世界が変わっちゃったら、びっくりするよね」
先輩はポンと私の肩を叩いて、優しく続けた。
「……で、正直どう思ってるの? 凌のことは、完全には諦めきれないでしょ。でも遥くんも中々じゃない。二人のことは、それぞれ今どう思ってるわけ?」
「……凌先輩のことは、やっぱり簡単には諦めきれないです。ずっと、先輩に振り向いてもらいたいって気持ちだけでやってきたので。……でも、遥にあんな風に言われるとも思ってなくて。遥のことは、その、友達っていうか……。でも、そう思うこと自体、遥を傷つけることになりますよね」
「難しいよねえ、恋愛って」
成瀬先輩は空を見上げて、ため息混じりに笑った。私は少し躊躇してから、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「……あの、成瀬先輩は、凌先輩のこと好きなんだと思ってました」
「私が? ……ないない!笑」
先輩は本気で可笑しそうに吹き出した。
「凌とは昔から戦友みたいな感じだから。中学の頃から凌はモテモテだったけど、女の影が一切なくてね。ずっと一途に想ってる子がいるのかなーって思ってたけど。……それが紗南ちゃんだとも思ってた。それも、一筋縄ではいかなかったってことだね」