「やっぱり、私たちが付き合っているのが、気に入らないんですね……」
あぁ!? そうじゃない。勘違いされちゃ心外だ。私はぐっと拳を握りしめながら口を開いた。
「永井さんとここで待ち合わせしているだけです」
「ごめんなさい、本当に私そんなつもりじゃ……」
「燎子、もういいから」
優しすぎるのも相手によくないというような話を伊吹が燎子にする。もうほんっとにひどい。イライラで頭が煮えそうになるのをなんとか抑え込む。「ごめん、お待たせっ」
2人の後ろから、会社の出口を出てきた篤人。駆け寄ってきて私の横にスッと立つ。寒かった? と頬を撫でられると安堵で涙が溜まる。
「ううん、大丈夫」
「ロッカールームで、部長につかまってた」
燎子と伊吹なんかいないみたいに、篤人が話をする。ぽかんとした2人が横目に入ったけど、そちらを向く気にもならない。
「このコート、似合ってる」
この前篤人に買ってもらった春コートを着てきた。まだいまの季節には薄い気もするけれど、身につけるとなんだか嬉しい。
「うん、ありがと」
ふふっと笑い合うとすごく穏やかな気持ちになる。
「あの……」
燎子が声をかけてきて、すっとそちらに目を遣った。呆れたような2人がこちらを凝視している。
「いま帰りですか?」
「ええ、そうなの。永井さんも?」
「はい。やっぱり付き合い始めたら、一緒に帰りたいですよね」
お二人もそうでしょう? と篤人が微笑む。
「花音、行こう?」
まだまだぽかんとした様子の2人。失礼しますとだけ篤人があっさり告げた。
ぺこりと頭を下げて、とことこと歩き始める。篤人がぎゅっと手を握ってくるのでそれに答えるように指を絡め、足早にその場を立ち去った。 歩きながら、篤人の顔を見る。
どうした? と穏やかな笑顔をむけられると、ぽっと嬉しくなる。
「……ありがとう」
「なに?」
何でもないと告げて、そっと腕に絡みつく。いまは恋人なのだから、これくらい許して欲しい。
腕を絡めたまま、歩いていくとほどなく篤人のマンションが見えてくる。少し足早になった篤人が、アプローチを横切り、コンシェルジュの前を通り過ぎてエレベーターにキーをかざす。
ややあってやって降りてきたエレベーター。それに乗り込むとぐっと腰をひきつけられる。驚いてすぐそこにある彼の顔を見上げた。
「……煽ってるの?」
「え?」
「ときどきずるいよね、花音は」
そう話しているうちにエレベーターがフロアに着く。ドアを開けた篤人に押し込まれるようにして中に入ると、すぐ横の壁に縫い付けられてキスが降ってきた。
「んむっ……んんっ!!」
強引なキスに体をよじる。狂暴になった彼の舌が熱い。噛み付くようなキスに思考が止まる。コートとジャケットを剥ぎ取られ、ぐっと抱きしめられた。
「あいつと、何話したの?」
「えっ、燎子と……? きゃっ!!」
スカートの裾から入ってきた指が、ストッキング越しに脚の間を撫でる。湿り気を帯びたそこが、その瞬間を早く味わいたいと疼く。
「違う」
「い、伊吹と?」
「そうやって呼ばないで。なんかやだ」
じゅっと首に彼が噛み付く。いつもは見えないところにするのに、そんなところにつけたら見えちゃう……。そう言いたくても、下半身を刺激されてうまく言葉が出てこない。
「仕事の話しただけっ……だよっ……」
「そう……」
またぐっと唇を奪われて、彼の首にしがみつく。何もかもすべて忘れて、甘い時間に溺れたい。
脚の間を擦っていた指が、ぐっとショーツの中に入ってくる。下草をかきわけて蜜をたたえたそこを篤人がそっといじる。
「んんっ……あっ待って……ここじゃ」
「煽ったのそっちでしょ?」
「あおって、なんっか……んああっ」
篤人はカットソーをめくりあげ、ブラのカップを上にずらして胸の紅い膨らみを口に含む。じゅるじゅると吸いつかれると、甘い声が漏れる。
玄関の向こうは内廊下。なんとなく人の通る気配がしてぐっと手の平で口を覆った。
「声、聞こえちゃうね」
「やっ……しゃべらないっ……でっ!!」
胸の膨らみを刺激されたまま喋られると息づかいがくすぐったい。もう片方をくりくりといじられて、脚の間がじんっとしてくる。
「ほら、我慢しないと」
蜜壺の入り口をこじ開けるように入ってきた指が、ぐちゃっと音を立てる。
いやいやと首を振りながら篤人の肩に手を置く。
するすると篤人が下がって、ショーツを膝裏まで引き下ろされ、蜜をたたえた脚の間に吸いつかれて、顎を上げた。
「いやあっ……らめっ……そんなとこっ」
「すっごいとろとろ」
「汚い、からぁっ……ああっ!!」
じゅるじゅると吸われる音が、玄関に響く。壁に追い詰められていて逃げることもできず、ただただその快感を受け入れる。
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