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第23話「潮域の子どもたち」
登場属性:潮属性(子ども型・小型生徒たち)
テーマ:未成熟と感情のゆらぎ、“小さい”ことの意味
登場人物:
ミル=ウユ(潮属性・小型生徒)
体長120cmほど。肌は半透明に近く、頬にうっすら波紋が浮かぶ。髪は薄く濡れた銀糸のようで、目はとても丸く澄んでいる。制服は特別裁縫された幼体用で、袖と裾がふわふわしている。
ルク=ハサギ(潮属性・小型生徒)
小型ながらも行動が早く、跳ねるように歩く。髪は短い藻のような色と質感。常に何か口に入れていないと落ち着かない。好きな海藻はワカメ。
浮遊式の潮域校舎、その低い天井と透明壁の向こうで、今日も「潮域の子どもたち」は波のなかをくるくる回っている。
潮属性の一部の生徒たちは、“変質が始まっていない”か、“止まったまま”のまま入学してくる。
身体が小さく、言葉も感情も未分化だが、“海との感覚”はとても鋭い。
先生がうまく言葉にできない授業内容も、
ミルは「波、こわい」と一言つぶやくだけで、本質を突く。
ルクは、みんなが嫌がる海藻の種類をすぐに見抜く。
彼らには「波域手帳」はまだ配られていない。
代わりに**“感触記録シート”**と呼ばれるものがある。
今日食べたもの、今日見た夢、今日感じた“波”を、
絵や丸や、たまにぐしゃぐしゃのしずくで記す。
ある日、ミルが深層試験用の水槽に近づいた。
波を感じすぎてしまい、床に座り込んでしまう。
呼吸が浅くなり、ルクがすぐに抱きしめて、こう言った。
「いっぺんに来るのは、だめだよ。ミルの海だけで、今日はいい。」
廊下の隅。
非常勤講師の**シオ=コショー先生(潮属性・シャチ)**が掃除をしながら、
遠くからふたりの記録シートを拾い上げる。
ぐしゃぐしゃの丸の中に、ひとこと。
> 「きょうは、だいじょうぶだった。
うまく、こわれなかった。」