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マリエはもう一度深呼吸をし、サイコロにこう伝える。
「あなた達二人は、一度死んでるの。二人で手を繋いで、廃墟のビルの屋上から飛び降りてね。」
サイコロの表情が固まる。そしてこう返す。
「それは、どういうことですか。」
「私は資料に書いてあったことをそのまま伝えただけ。なぜあなた達が二人で身を投げたかどうかは分からないわ。でも、あなた達は一度自殺を選んで、それを実行している。それは事実だと思う。」
サイコロは俯き、そのままこう答える。
「もう、終わりですか。」
明らかに先程とは違う様子のサイコロを見て、マリエはこう言った。
「辛いよね、こんな話聞かされたら。」
「いえ、僕が望んだことですから。頑張って受け止めます。」
マリエはサイコロにこう尋ねる。
「レイくんは昔の記憶を取り戻したみたいだけど、サイコロくんは昔のこと、何も思い出せない?」
「はい。いまのところは、なにも…。」
「そっか。いつか思い出せるといいね。いや、思い出したら辛いかな…」
サイコロはマリエの目を見てこう返す。
「僕の過去とはいつか向き合わなければ行けないと思ってます。例えそれが辛い現実だったとしても、それは紛れもなく、僕の一部だったもののはずですから。」
「強いわね。サイコロくんは。」
マリエはバッグの中からそこそこ分厚い本を数冊取り出した。そしてこう言った。
「サイコロくんよく本を読むって聞いたから、私のおすすめの本を持ってきたわ。よかったら読んでね。」
サイコロは本の表紙を見ながらこう返す。
「ありがとうございます。えっと、”神が生み出す生物”、”信仰の歴史と未来”、ですか。なんだか難しそう。」
「私、”神さま”について興味があるというか、信仰心が強いというか。ごめん、あんまりこういう本は読まない?」
「いえいえ、最近新しい本が読みたいなって思ってたところだったので。ありがとうございます。」
「ならよかったわ。サイコロくんも神さまを信じてみたらどうかしら。辛い時も支えになってもらえるわよ。」
マリエは帰る支度を始めつつ、サイコロに尋ねる。
「私、少しはサイコロくんの助けになれているかしら。」
「なれてますよ!マリエさんは優しいですね。」
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいわ。」
「マリエさんのおかげで、僕も決心がつきました。」
「それはよかったわ。それで、なんの決心がついたの?」
「僕達の未来のための決心です。」
「そっか。頑張ってね。私はあなたのことを応援するわ!」
マリエが部屋を出ていった。一人になったサイコロは、部屋に置いてある日記を残していた録音機に、記録を始めた。