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レイブン=イゴールは歴代で最も優れていると言われている。

彼は才能に恵まれ生を受けた。

四属性持ち、龍脈のような魔力量、そして天賦の才能

数多くの優秀な魔法剣士を輩出している名門家、イゴール伯爵家でもここまで優秀な素体持っている人はいない。


レイブンは生まれ持っての天才でもあるが、本人の努力が相まって異常なまでの成長を続けた。

将来は約束され、これまで一度も壁にぶつかることなったのだ。


だが、そんなレイブンにも悩みがある。

それは強すぎるならではの、そして成長速度が早すぎてしまうことが原因。

高め合える人がいないことである。

十三歳の頃には始め指南をしてくれていた師匠も、先輩魔法剣士、そして父親までもが今となっては勝てない、それどころか実力の差が開き続けてしまっている。

そのせいで、十四歳になる頃には誰も相手に取れなくなってしまい、一人で稽古をするようになっていた。

一人で稽古をするようになってからも成長してしまう。

レイブンは自分は何故かこのような才能を持って生まれてしまったのだろう。

そんな贅沢だが、レイブンは悩み続けた。


そんなレイブンに人生を左右する出来事が三つあった。

一度目は幼馴染のモーインとサリーとの出会い。

家が名門同士ということで、よく交流をあった。

その二人も歴代最高と言われていた。

レイブン自身はそれを聞いて期待した。

もしかしたら、自分の全力を受け止めてくれる、そんな存在になりあるかもしれないと。

しかしその期待は外れてしまった。

確かに彼女たち二人は天才だった。

だが、ただそれだけ。

彼女たち二人とレイブンの壁は開きすぎていた。

それ以降、名前が上がるような人物はいなかった。

レイブンは諦めた。


そして二度目、諦めかけていたレイブンにとっても予想外の出来事だった。

これは王立フューチャー学園の入試の日のこと。

レイブンはすでに推薦が決まっていたため、すぐに試験が終わった。

筆記が終了したため、学園を少しだけ見て回っていた。

ふと、レイブンの視界に黒髪の青年が通った。

黒髪の青年は何か嬉しそうに、興味深そうに辺りを見渡し、行動していた。


「君はここで何をしている?」

「え?」


気付いたらレイブンは黒髪の青年に話しかけていた。

理由はわからないが、おそらく興味本位から。

そして黒髪の青年は話しかけられたことにより少し動揺している様子を見せたが、話していくと、どうも道迷ってしまったらしい。

レイブンは多少、違和感を感じたが、話の流れで黒髪の青年と校門へ行くことになったため、行動を共にした。






その後レイブンは黒髪の青年とともに校門へ向かったのだが、迷子であると言ったはずなのに迷うことなく校門へと向かっていた。

レイブンはそのことを指摘したら、黒髪の青年は迷ったのではなくただ見物をしていたと素直に認め謝罪をした。

レイブンはその態度が面白く、何故か嬉しく思ってしまった。

その後はお互い自己紹介し合い、レイブンは感じていた違和感、黒髪の青年の情報がわかった。

どうも黒髪の青年……アルトは自分を先輩だと思っていたそうだ。

レイブンはこれほど変わっている者は人生で会ったことがなく、アルトという人間に強い好奇心を抱いた。

その後レイブンは期待を込めて普通の同級生として接して欲しいと頼んで見た。

始めアルトは断り拒否をしたが、レイブンが「あぁ、やっぱりか……」と思い悲しい顔をしたら慌てて態度を改めた。

(本当にアルトは面白い)

レイブンは人生でここまで変わった体験をするのが初めてでとても充実した一日になった。





最後に三つ目、レイブンが学園の初めての冒険者学の授業でのこと。


「そうだな……ここには実戦の経験をしている者がいたな。どうだろう?この中で代表者二人よる模擬戦を披露してもらおうか。皆もこれから学ぶための基準や目指す基準があった方がいいだろう。誰かやっている人はいないか?」


担当教員のカインの提案で代表者二名による模擬戦が行われる流れとなった。

レイブンはカインの提案を聞いてまず最初に思い浮かんだのが自分と同じで推薦した入学アルトの存在だった。

ふと、レイブンはカインの提案を聞いた後、アルトを確認してみたが、一切手をあげる雰囲気はなかった。


「私がやります」

「ほう、イゴール君がやってくれるか」


その光景を見たレイブンはアルトには悪いと思いつつも、謎が多い友人と剣を交えてみたいという興味から、カインに模擬戦をやる旨を自分から伝え、相手役にアルトを指名しようとする。

だが、普通に指名してはおそらく断ろうとするだろう。


「分かりました、大丈夫です。今から指名する人は私と同じ推薦入学者で、実力も保証します」


そのためまずは前置きで推薦入学ということをバラして逃げ場をなくし、アルトを指名した。


「アルト、お願いするよ」

「え?」


前置きにバラしたのが正解だったのだろう。

この場にいた全員の視線がアルトに集まり、諦めたのかゆっくりと近づいてきた。

(上手くいったな)

そうレイブンは思いながらアルトに視線を向けていた。


「イゴール君」

「何でしょうか?」


レイブンがアルトの様子を観察しておると近くにいたカインから急に名前を呼ばれた。

カインはそんなレイブンに対して笑いながら思ってもみなかった事を言われる。


「アルト君に対して本気でかかるといい。彼は私のお気に入りでね。推薦も私がしたんだ」

「しかし……」


カインの提案に戸惑うレイブン。

それもそうだ。レイブンが本気を出したらアルトが死んでしまう。

そう思ったのだが、


「イゴール君がしている心配は大丈夫だ。おそらくこの学園で唯一君と対等に戦えるのはおそらくアルト君だけだよ。……まぁ、数秒だけって話だけどね」

「数秒のみ?あの、おっしゃってる意味が分からないのですが」


レイブンはカインの発言に疑問を感じる。

しかし、その質問に対してカインは


「実際に戦った方が分かると思う」


ただ、そう言われた。

レイブンは理解が出来なかったため、カインに質問をしようとしたが、間が悪いのか、アルトが来てしまい、話は終了した。

そのままお互い模擬戦の準備を始め、レイブンの疑問は一切晴れないまま、お互いに構えて始めることになる。

レイブンはものは試しよう、そう思い本気で行ってみることにする。

カインはこの学園の教師。

そのような人物が嘘をつくとは思えなかったためだ。


「ふぅ」


そう大きく呼吸をしながら集中力を高めるレイブン。


「本気でいく」

「え!」


アルトはレイブンの発言におかしな反応を示すが、気にせず本気で振り下ろした。


ドン!

「!?」


そう音を立てながら地面にクレーターができ、レイブンは驚いた。

斬り込んだはずの場所にアルトがいなくなっていた。

もちろん、アルトから目を離していなかったため、避けたことは分かっていたが、躱し切れるとは思っていなかった。

レイブンは即座に考えを切り替え、アルトに向く。

しかしまたもや驚くことが起きる。

それはアルトのレイブンへの攻撃。

アルトは自分と同じ速さ、下手したら自分以上の速さで斬り込んできたのだ。


キン!

「ク!」


レイブンはアルトの攻撃を膝をつきながら受け止めた。そう人生で初めて対戦で膝をついたのだ。

そして、そのことに嬉しくなってしまったレイブンはすかさずやり返そうとするがーー。


「そこまでだ!!」


カインが慌てて止めの合図をし、模擬戦は終了した。

レイブンは歓喜に震えていた。

生まれて初めて退屈だと思っていた人生が楽しく感じる出来事が起こり、この気持ちを体験させてくれたアルトの存在に感謝するのだった。




その後は少し軽口を言われそのことについても心からの爆笑。

そして、お互い握手をした。

(これが高め合える存在ということなのだろうか?)

レイブンはそう思いながらまた本気で戦う約束をしようとした。がーー。


「実は俺は魔力が少ない。身体強化の応用魔法、派生魔法で自身を強化してただけなんだ。お願いだから月一でお願いしたい。さっきの攻防だけで、俺の魔力は残り六割弱になったから」


この発言にレイブンは驚いた。

アルトは自分とは対極の存在。

才能に恵まれず、それを努力と工夫のみで自分と数秒だけでも対等に戦えるように成長したのだ。

レイブンはアルトの提案を受け入れて今後月に一度だけする約束をした。



今後、レイブンとアルトがどのような付き合いが続くかは分からない。

ただ、レイブンはこの付き合いが長く続いてほしいと思うのであった。

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