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第7話:街の視線
訓練から二日後の夕方。

拓真は蓮と並び、駅前の大型ショッピングモールを歩いていた。

冬のイルミネーションが通路の両脇を彩り、香波の光と混ざり合ってゆらめいている。

甘い菓子香、冷たいミント香、そして人混み特有の雑多な波——香波社会の夕方は、視覚も嗅覚も絶えず揺さぶられる。


拓真は濃緑のダウンジャケットにスキニーパンツ。肩周りが以前よりしっかりし、歩く姿勢も自然に胸を張っていた。

蓮はロングコートにマフラーを巻き、長身の体をゆったりと動かしている。後ろで束ねた黒髪が、歩くたびに揺れた。首元の抑制バンドは目立たぬようコートの襟に隠してある。


「……見られてるな」

蓮が小声で言う。確かに、すれ違う数人が拓真をちらりと見て、ひそひそと何か話していた。

「あの赤香波の子だろ?」

「駅前で暴走止めたってやつ」

耳に届く断片的な会話。訓練だけでなく、先日の路地での出来事がSNSに動画として広まっていたらしい。


モール内のイベントスペースでは、香波者によるデモンストレーションが行われていた。

舞台上では、治癒系の女性が花香を広げ、観客の前で切り傷を瞬時に癒してみせる。拍手が起こり、子どもたちが憧れの目で見上げていた。

香波が社会でどう使われ、どう評価されるか——拓真は改めて感じる。


「お前もやってみるか?」

蓮が冗談めかして言ったが、拓真は真剣にうなずいた。

ステージの端に立ち、深呼吸。緑が黄に、橙へ、そして赤に染まる——

今度は暴走せず、胸の鼓動を一定に保ちながら波を放つ。赤香波は穏やかな拍動で空中に広がり、観客から小さな歓声が上がった。


終わって蓮の元へ戻ると、彼は珍しく笑みを浮かべた。

「人前で赤を安定させるのは簡単じゃない。成長してる証拠だ」

その言葉に、拓真の胸は誇らしさで満たされた。


モールを出ると、夜風が冷たく頬を打つ。

街の明かりと香波の光が重なり、色とりどりの波が空に漂っていた。

——今なら、この色の中で胸を張って歩ける。


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