テラーノベル
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保谷東
穏やかな笑みを見せていた男は、徐々に卑しい面差しに変化していき、美花を蔑むような視線を這わせた。
『そっか。お前…………女として不良品だったのか。って事は、お前とのエッチは中出しOKって事じゃん?』
男の言葉に、美花の胸中が切り裂かれていくのを感じる。
『そっ……そんな言い方しなくても…………』
心の中に宿る鮮血が流れていくのを堪えながら、美花は小さく反論するが、男には効いていないようだ。
さらに、美花の気持ちに止めを刺す、ひと言。
『──女の欠陥品が、恋なんてすんじゃねぇよ』
彼女は、瞠目させながら愕然としてしまう。
意を決して伝えた思いが、バラバラに引きちぎられていき、男は一瞥すると、美花の元を去っていき、二人の関係は、呆気なく終止符を打たれた。
(私…………女の……欠陥品……。女としての…………不良品……。私みたいな女は…………恋をしちゃ……ダメ……なんだ…………)
美花の心には、男から言い放たれた言葉が、抉り続けている。
彼と別れてから、何をしている時でも、言葉の刃が突き刺さったままになり、美花は、充分な睡眠が取れない状態に陥ってしまった。
眠れぬ時間をやり過ごしていくうちに、彼女は、こっそりと洗面所へ行き、母が予備で買い置きしてあるカミソリを持ち出して、ついに自傷行為に走ってしまう。
『…………っ……』
左腕に、カミソリの刃を当て、そっと撫でるように滑らせていくと、赤い線が浮かび、美花は顔を歪めた。
痛みを感じている時は、元彼に言われた言葉を、一瞬だけ忘れられる。
たった一度だけ、と思った自傷行為。
彼女は、心に闇が覆われていくたびに、自身の左腕に『叫びの痕跡』を刻むようになっていった。
(…………このままではいけない。けれど、寝られない夜は気持ちが落ちて…………自分を傷付けたくなってしまう……)
社会人になってからも、半年に一度の割合で立川緑病院の産婦人科へ通院している美花は、思い切って医師に相談してみる事にした。
コメント
1件
酷い😭自分が望んでそう生まれて来たわけじゃないのに。 可哀想すぎる