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校舎裏で響き渡っていた泣き声は、10分ほどして静かになった。もちろん、10分間は立つことも、飲み終わったココアの缶を捨てることもしなかった。
隣に座る彼の顔は真っ赤だが、もう涙は出ないようだった。時々、鼻をすするくらいであって。
「なんか飲みたいものある?」
彼の背中をさすっていた手を離し、その手を自販機の方向へと指差す。
相手はしおっとした顔で、小さく「ミルクティー」と呟いたため、笑顔を返事代わりとしておいた。
ピ、と音がした後には、ペットボトルが転がり落ちる鈍い音が耳を貫通した。
「はい、ミルクティー。お金はいらないよ」
先輩の奢り、とにこやかな笑みを作りながら彼にミルクティーを差し出すと、小さく微笑んでから「ありがとうございます」と小さく答えた。
パキッ、とペットボトルの蓋をいとも簡単に彼は開け、ごくりと一口飲んだ。
「……あの、先輩」
「クロノアでいいよ!」
「え、えぇっと……じゃあ、クロノアさん」
「どうしたの?」
微かな声ながらも、相手が話しかけてくれることがなんだか嬉しく、にこにこと笑顔を向けながら、ひたすらに彼の言葉に返事をする。
そのせいか、相手からは冷めた目で見られたけれど。
「色々と、ありがとうございました……。授業サボらせちゃって、ごめんなさい」
ペットボトルに入ったミルクティーをゆらゆらと揺らしながら、どこか気まずそうに顔を逸らしてそう言う彼に、自身はひたすら優しく大丈夫だよ、と答えた。
「それと、俺はサボったんじゃなくて、君と絆を深めあったんだよ? 授業よりも、ずっと大切なことだったと思う 」
穏やかに、それでいて相手にはっきりと伝わるように言葉をこぼせば、相手はまた目が潤んだからか、瞬時に顔を逸らした。だから、自身も空を見上げた。
青く広がる空に雲一つない快晴である今日は、少し寒い。
「───あの」
「ん?」
いまだにゆらゆらとミルクティーを揺らす彼は、こちらと目線が合うことはない。けれど、真一文字の口は、どこかもごもごと動かしていて葛藤していることがわかった。
何を言いたいのだろう。
分からない。分からないけれど、言いにくいことくらいはわかる。
「ゆっくりでいいよ」
そう声をかければ、相手は目を見開いて固まった。ゆらゆらと揺らしていたミルクティーも、ぎゅっと手で握って、また唸り声をあげ始めた。
「まだ5限目だよ? 今日は7限目まであるから、サボり放題だね。掃除はないけど……俺、門限ないから、こうやってゆっくりするのもたまにはいいかも」
───いくらでも待つ。7限目まででも、夜の9時でも。
その意味を込めて話せば、相手はまた泣き出した。けれど、出てくる涙はもうたったの少量しかなくて。
また少しして、彼は落ち着いてから俺に話をしてくれた。
「僕、いじめ……?られてて……」
「うん」
相手の言葉に相槌を打つ。今はそれしかできないし、相手もまずは話を聞いてほしいだろう。
同情は、哀れになる。
「女の子っぽいからって、一軍の女子たちにやられて。それ以外のクラスメイトは全然いい人たちなんです。シャンプー何使ってる、とか……スキンケアどうしてるの、とか……色々聞いてくれるんですけど、一軍はそれが気に食わないみたいで……」
長話じゃないように見えて、実際に相手はいまだに話していいか悩んでいたため、ゆっくりと喋っていた。けれど、一言一句を頭の中に無理やり入れ込み、文として頭の中で完成させた。
「そうだね、」
なんて答えればいいのかわからず咄嗟に出した声は、ある声で遮られた。
「───どっちでしょーか」
聞き覚えのない、誰かの声。