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「まっ、それは置いといて…」
「みどり遊びの続きしよ!!」
そう言って蒼葉くんは作りかけのクローバーの花冠を手に取る。
「このまま編んでいけば〜」
そう言った後、蒼葉くんは鼻歌を歌いながら手際よく花冠を作り上げていく。
そんな僕はその光景を見ているだけで、
手は全く動いてない。
が、案外楽しい。
というか物作りなんていつぶりだろうか。
花冠は完成してお花摘みが終わったくらいの時、
またもや僕の景色は葉吹雪に染まった。
蒼葉くんは居ない。
先程ちょっと用事があると言ってどこかへ行ってしまった。
緑の景色しか見えず、
ただ戸惑いと混乱に包まれていた。
そんな時、ふと何かが見え、目を凝らす。
「あ、!」
思わず声を上げてしまった。
その理由は僕の瞳に映る葉吹雪に蝶が葉っぱに擬態して紛れていたから。
一瞬だけ。
ほんの一瞬だけ蝶の姿が見えた。
そして葉吹雪は晴れた。
が、同時に蝶も姿を消してしまった。
辺りを探しても見つからない。
また擬態しているのかと思い、
そこらに生えてる木々たちをじっくり見つめたが、あるのは微風に身を預ける緑の姿しか無かった。
「あの蝶ってミューエが言ってた蝶のことかな…」
そう1人呟く。
だとしても
「擬態する蝶か…」
「捕まえるとか無理じゃね?」
絶対に無理だと思う。
もしあの葉吹雪の際にしか見ることが出来ないのなら尚更だ。
というかそもそも捕まえたところで虫籠的な物もない。
つまりは不可能だということ。
「里玖にぃ!!」そう僕が考え込んでいる時、
蒼葉くんは多種多様な葉っぱを持って帰ってきた。
「それ何?」
零れるがままに聞くと
「これから草笛祭りだよ!」
と言われた。
草笛祭り??
頭の中がハテナで埋め尽くされる。
「いいから着いてきて!」
そんな僕を蒼葉くんは手を引いてどこかへと連れていく。
着いた場所は若々しい木々が幾つも生い茂る場所だった。
そこには沢山の人々の姿があり、
でも大体は子供だった。
その人たちの頭には草輪のようなものがあり、
仄かな若緑の匂いが鼻をくすぐる。
その他にも蝶のような髪飾りをつけている子供や、蔓と木の実のブレスレットをつけてる人などが居た。
「ここは?」
僕がそう疑問と戸惑いが混ざったような声を漏らすと
「ここは『グルーノ・ルュミ』!」
「別名、『森のお祭り会場』だよ!」
いかにもファンタジーって感じの単語。
そして覚えれそうにない。
というか森のお祭り会場…
そういえばさっき蒼葉くんが言ってた草笛祭り。
多分、名前からするに草遊び…
いや、みどり遊びをして楽しむって感じなのかな。
そう一人思いつつも、
蒼葉くんに手を引かれどこかへ向かって歩いていく。
着いた場所は沢山の子供たちが何やら多種多様な草を持って立っている場所だった。
その瞬間、
音楽が鳴り、
子供たちは踊り出した。
舞うように、
吹かれるように、
漂うように。
そして子供たちは楽器を吹き出した。
踊りながら。
しかしその音はどこかオモチャとも言えるくらいの実力で『綺麗な音色』とはどうも言いにくかった。
が、
その楽器を見た瞬間、
その考えは覆された。
「蒼葉くん、あれって…」
「そうだよ!あれが草笛だよ!」
そう言いながら押し付けるようにして筒状になった草を渡してくる。
筒の片方は少し潰されていて。
その時、隣から子供たちと同じ音色が聞こえてきた。
見ると、蒼葉くんが草笛を吹いていた。
目が合い、
その視線がどこか僕も草笛を吹くように促すように見え、
僕は無意識のまま筒が潰れた方を唇に挟んだ。
優しくゆっくり息を吹き込むと、
草は唇との間でブルブルと震え、
音を響かせた。
それがとても幻想的で、
ロマンチックに思えて。
オモチャなんて言葉で表すのは勿体なくて。
自然が揺らめいて鳴らしてる音に聞こえて。
しばらく吹いていると遠くから別の草笛の音が聞こえてきた。
高く切なく、響いている。
「ね、蒼葉くん」
「僕らの草笛の葉っぱってなんの葉っぱなの?」
ふとそんなことを聞く。
もしかしたら葉っぱの種類によって草笛の音程が変わるのかもしれないだなんて思ったから。
「僕らの葉っぱはどっちも違う種類なんだよ〜!」
「こういう風に作る草笛に適してる葉っぱは『まあるくて、細長い葉』が適してるから…」
「さっき適当に摘んできたんだ!」
適当…
確かに僕の草笛の葉と蒼葉くんの草笛の葉は全く同じというわけではなかった。
「でもあっちの人…」
そう言いながら蒼葉くんは周りを見渡し、
遠くの神輿の上に居る子供たちを指差した。
「あの子らはサクラの葉の草笛で、唇に当てるだけで鳴らせる比較的簡単な草笛!」
「あっちの東側に居る人たちの草笛は笹や細い葉を5mmくらいに割いて、こういう風にして吹くと鳴るんだ!」
そう言いながら蒼葉くんは手の甲を左右に向け、親指をくっつける。
その少しの隙間に息を入れていた。
お祭りがいい感じに盛り上がりを見せてきた頃。
そういえば草遊び…
じゃなかった、
みどり遊びっていつからあるんだろうか。
簡単に作れるけど今は知る人ぞ少ない。
つまり昔からあるっぽいけど…
一体いつからなんだ?
そんな疑問がふと浮かぶ。
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