📖 最終話「さよなら、害獣たち」
🏫 1. 害獣たちとの別れが迫る
「……嘘だろ?」
目蒲 安(めがま やすし)は、手を伸ばしてみるが、そこには何もない。
いつも隣にいたはずのジグマの姿が消えている。
「シャドウ……!?」
「ダッシュ……嘘だろ!?」
「エコー!!!」
クラスメイトの叫び声が次々と響く。
みんなが大切にしてきた害獣たちが、一人また一人と消えていく。
「なんでだよ……!」
泣きそうな声をこぼす者もいる。
何も言えず、ただ呆然と立ち尽くす者もいる。
ジョーカーは、そんな彼らを静かに見つめていた。
⏳ 2. 害獣たちが残したもの
「……ジグマ、お前はどこにいる?」
目蒲は自分の胸に手を当てる。
すると、突然、微かにジグマの声が聞こえた気がした。
――「お前はもう、俺の力がなくても大丈夫だろ?」
「……!!」
その瞬間、目蒲は悟った。
害獣たちは――消えたわけじゃない。
彼らは自分たちの中に残っている。
「目を閉じれば、思い出せる。」
「俺たちは、一緒にいたんだ。」
「害獣の力を借りて、いっぱい笑って、いっぱい成長したんだ。」
目蒲は、涙をこらえながら笑う。
「ジグマ、ありがとうな。」
「俺、これからもお前に教わったことを忘れないよ。」
クラスメイトたちも、それぞれ害獣に別れを告げ始める。
「ポン太、ありがとな。」
「ダッシュ、お前のおかげで速くなれたよ。」
「スイート、最高の味を教えてくれてありがとう!」
それは、悲しい別れだった。
だけど――
それ以上に、大切な思い出が残る別れだった。
🌌 3. 雲卵が生まれる
「……空、見てみろ。」
影 道(かげ みち)が、夕焼けに染まる空を指差した。
そこには、巨大な雲の竜が浮かんでいた。
それは、害獣たちが残していった”雲卵”。
次の世代の子どもたちに宿るために、空へと昇っていく。
「……害獣たちは、また新しい子どもたちのもとへ行くんだな。」
「そうだな。」
「害獣メモリー」――それは、彼らの記憶に刻まれ続ける。
たとえ、害獣と過ごした記憶が薄れていったとしても。
この経験が、確かに彼らの心に残っている。
「行ってこいよ。次の子どもたちを頼むぜ。」
目蒲は、空に向かって笑った。
🌅 エピローグ「害獣メモリー」
それから数年後――
「ねぇ、お兄ちゃん!」
小さな子どもが駆け寄ってくる。
「なんか、最近ずっと不思議な夢をみるんだ。」
「どんな夢?」
「なんかね……俺の隣に、ドラゴンみたいな動物がいるんだよ!」
「へぇ、そいつはどんなやつ?」
「うーん……すごく優しくて、頭が良くて……なんか、俺のことずっと助けてくれるの!」
目蒲はふっと微笑んだ。
「あー、それは……きっと”害獣”ってやつだよ。」
「害獣?」
「そうさ。」
「お前も、そいつと一緒にいっぱい遊んで、いろんなことを学べよ。」
「うん!!」
新しい世代へと繋がれていく害獣たち。
彼らはこれからも、子どもたちのそばにいて、見守り続けるのだろう。
「害獣メモリー」――それは、永遠に続く物語。
🎬 THE END