冬の奈良は、冷たい風が街を包み、駅前のイルミネーションが白い光を放っていた。悠真は改札の前に立ち、心臓の鼓動を抑えられずにいた。美咲が帰国する日。何度も夢に見た再会の瞬間が、ついに訪れようとしていた。
電車がホームに滑り込み、人々が次々と改札を抜けていく。その中に、見慣れた姿があった。白いコートにマフラーを巻いた美咲。少し大人びた雰囲気をまといながらも、笑顔は変わらなかった。
「……美咲!」 悠真が声を上げると、美咲は振り返り、目を輝かせた。 「悠真くん!」
二人は駆け寄り、立ち止まった。人混みの中で、互いの存在だけが鮮やかに浮かび上がる。
「久しぶりだね」美咲が息を弾ませながら言った。 「……本当に。夢みたいだ」悠真は笑った。
美咲は少し照れくさそうに俯き、そして顔を上げた。 「手紙、全部読んだよ。悠真くんが頑張ってるの、すごく伝わってきた」 「美咲の手紙も、俺の支えだった。……ありがとう」
その言葉に、美咲は静かに頷いた。
駅前のイルミネーションの下で、二人は並んで歩いた。冷たい風が吹き抜けるが、心は温かかった。 「留学、どうだった?」悠真が尋ねる。 「大変だったけど、楽しかった。たくさんの人に出会って、世界が広がった。でも……やっぱり奈良が一番落ち着く」 「俺も、ずっと待ってた」
美咲は立ち止まり、悠真を見つめた。 「……待っててくれて、ありがとう」 「当たり前だろ」
その夜、二人は奈良公園へ足を運んだ。冬の鹿たちは静かに佇み、夜空には星が瞬いていた。 「ここから始まったんだよね」美咲が微笑む。 「ああ。……ここでまた会えた」悠真は答えた。
美咲はマフラーを直し、少しだけ涙を浮かべた。 「離れてても、心は繋がってたんだね」 「これからは、ずっと一緒だ」
その言葉に、美咲は強く頷いた。
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