冬が過ぎ、奈良の街に再び桜が咲き始めた。去年と同じように花びらが舞い、参道を彩る。だが、今年は違う。悠真の隣には、美咲がいる。遠距離を乗り越え、再会を果たした二人は、再び春を迎えていた。
桜並木を歩きながら、美咲が微笑んだ。 「去年の春、ここで告白したよね」 「ああ。あの時は、離れるなんて考えもしなかった」 「でも、離れても繋がってた。……だから、今こうして一緒にいる」
悠真は頷き、ポケットから小さな箱を取り出した。美咲が驚いたように目を見開く。 「……これ、何?」 「指輪。約束の証にしたい」
美咲は震える手で箱を受け取り、中のシルバーリングを見つめた。桜の花びらが舞い落ちる中、彼女の瞳に涙が浮かんだ。
「美咲。俺はまだ夢を探してる途中だけど、君と一緒に未来を歩きたい」 「……悠真くん」 「遠くに行っても、また戻ってきても、ずっと隣にいたい」
美咲は涙を拭い、力強く頷いた。 「私も。夢を追いかけても、奈良に戻っても、悠真くんと一緒にいたい」
二人は指輪を交換し、桜の下で静かに抱きしめ合った。
春の風が吹き抜け、花びらが舞う。奈良の街は変わらずそこにあり、二人の約束もまた、変わらず続いていく。
永遠の約束。 それは、冬の図書館で始まった偶然から、春の桜の下で結ばれた恋の結末だった。
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