テラーノベル
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私は紅魔館の主人、レミリア・スカーレット。
年端はゆかぬが、主人として精一杯のことはやっているつもりだ。
「お嬢様、紅茶を淹れましたが」
「ご苦労ね、今行くわ」
彼女は紅魔館のメイド長、十六夜咲夜。
別に隠すこともないので言ってしまうと、彼女は吸血鬼である。
しかし酔狂なやつだ。
力で人間に勝る吸血鬼が、人間である私の従者となるなど。
彼女は元々、私の寝込みを狙って血を吸う目的で従者となったそうだが
今ではそんなこと忘れ、メイド長としての使命を全うしている。
私の自慢のメイドだ…
「ぶーっ!!!!」
「お嬢様!?紅茶を吹き出すなど、はしたない!」
私は汚れた口元とハンカチで拭きながら、
いつものように咲夜を問い詰める。
「はしたないなんて、失礼ね。貴女が紅茶に何か入れたのでしょう?」
私の尋問の言葉を聞いた瞬間、彼女の額には汗が浮かんだ。
図星といったところか。
先程の紅茶は鉄のような味がした。恐らく入れたのは…
「血、入れたの?」
「すみません」
「まったくもう、私は人間よ!!」
淹れ直してきなさい、そう彼女の背中を叩いて言う。
こういうポカがなければ、彼女は完璧で瀟洒なメイドである。
前もカレーの隠し味に、赤ワインでなく血を混ぜ込んだことがあった。
少し気をつければいいものを、何故血を入れるのだか…
我々人間には到底理解も出来ぬ、吸血鬼のさがというものがあるのだろうか。
私は咲夜が淹れ直した紅茶を嗜みながら、その咲夜の顔を見る。
血色感が感じられぬ肌、ほおずきのように紅い瞳。
そして口を開くたびに覗く、獣のような鋭い牙。
彼女は私の視線に気がついたのか、まるでお返しと言わんばかりに
私を穴が開くほど見つめた。
彼女は私が紅茶を全て飲み終わったと同時に、顔をぐいっと近づける。
「…お嬢様」
「我慢しなさい」
耳元で舌舐めずりをする音が聞こえる。
寝込みを襲って血を吸うつもりは無くなったようだが、
彼女は今も私の血を狙っている。
静止の言葉をかけたにも関わらず顔を退けようとしない。
そんな彼女の顎を掴み、顔を上に向けさせる。
「“待て”よ、咲夜」
「私を犬畜生か何かと、勘違いされていませんか… 野生の獣に“待て”は悠長すぎますよ」
私は冷たい目で見つめてくる彼女を見て、ふっと笑う。
「デザートは、ディナーの後よ。」
コメント
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息抜きに書き始めた。1話完結系です。 吸血鬼咲夜と人間レミリアは前から妄想してた。 これ最高すぎないか??? おぜう様のうなじにかぶりつきたい衝動を必死に抑える咲夜はかわいい(定期)