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「それでは、本日の大トリを飾って頂くのは、新郎の小中学校時代の友人、トランペット奏者の響野侑様、新郎、怜様、新婦、奏様による、トランペット、アルトサックス、ピアノによるトリオ演奏です」
音楽に溢れた余興が続いている披露宴も終盤に差し掛かり、侑はトランペットを片手に、祝辞を述べた後、自身の演奏の準備を始める。
奏はピアノの椅子に腰掛け、怜は、アルトサックスのマウスピースを咥えながら息を吹き込み、楽器を暖めていた。
「では、準備が整いましたでしょうか? それではお聴き頂きましょう。曲目は、石川亮太作曲『トランペットラブレター』です。本日はトリオ版の演奏でお楽しみ下さい」
怜の奏でるアルトサックスが、穏やかな波を思わせる優しい音色で会場を包み、奏が、海に反射する太陽光のようなキラキラした音でピアノを弾くと、侑は、ふくよかな音色で旋律を奏で始めた。
同じテーブルに座っている侑の妻、瑠衣を、圭がチラリと横目で見ると、夫のトランペットを演奏している姿に、蕩けるような眼差しを送っている。
「先生…………相変わらずいい音だなぁ……」
瑠衣の独り言に、圭がつい反応してしまう。
「瑠衣さんは、今も侑の事を、先生って呼ぶんだな」
「響野先生は、私の夫ですけど、それ以前に、音大時代の師匠でもありますから。侑さんには、いい加減、先生呼びを止めろって、言われちゃうんですけどね……」
頬をプックリと膨らましながらも答える妻は、夫の事が大好きなのだろう。
その証拠に、瑠衣は柔和な笑みを湛えていた。
響野夫妻は、先月に結婚したばかり。
婚姻届の証人の署名を、怜と奏に依頼したという。
「音楽と侑さんを通じて、私は奏ちゃんと葉山さんに出会えて、今日の結婚式と披露宴も招待してくれて。私、あのお二方には、すごく感謝しているんです」
「響野と瑠衣さんは、怜と奥さんにも負けないほどラブラブだぞ? 月に一度の外来も、必ず響野が付き添ってくるんだ。アイツ、仕事大丈夫なのか? って、こっちが心配してしまうよ」
圭と瑠衣の会話を小耳に挟んでいた、瑠衣の主治医、朝岡が話の輪に混ざってくる。
「それにしても、怜と奥さんの結婚式と披露宴…………音楽と温かさに溢れていて、いいな……」
「朝岡も独身だろ? 奏さんの友人を紹介してもらったらどうだ?」
「朝岡先生、私も同意見ですっ」
「…………ハハッ…………考えておくよ」
話の区切りがついた所で、三人の演奏も終わり、会場が盛大な拍手に包まれた。