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怜と奏の挙式、披露宴がお開きとなり、圭は、ひと足先に会場を出て、ロビーの隅に設置されているソファーに腰を下ろしていた。
宴会場の出入り口の前では、怜と奏、葉山家と音羽家の両親が列席者の見送りをしている。
美花が、会場から出てくる気配はない。
挙式と披露宴では、挨拶回りなどしていて、予想以上に忙しかった圭は、披露宴終了後に、美花へ声を掛けざるをえない状況になってしまった。
見送りの終了間際に、美花と、弟夫婦の出会いのきっかけを作った友人夫妻が、会場から出てきた。
圭はソファーから立ち上がり、様子を注視しているが、怜が式場のスタッフを呼び、記念撮影をしている。
やがて挨拶を済ませた美花たちは、手を振り合い、友人夫妻はエントランスへ、美花は化粧室へ足を向けた。
(怪しいヤツだよな……俺……)
美花に声を掛けるのに、手をこまねいている自分が滑稽になり、圭はフッと笑い捨てると、彼女がロビーに戻ってきた。
彼は、さりげなさを装い、彼女に近付いていく。
「浦野……美花さん」
「…………え? あっ…………ああ、おにーさん……」
この日、初めて彼女のフルネームを知った圭は、思わず口走ると、唐突に呼ばれた美花が勢い良く振り返り、小さく肩を震わせながら、目を見張った。
「改めて、今日はお忙しい中、お越し頂き、ありがとうございました。それから…………二人のために曲を作ってくれて、ありがとうございます」
「い……いえ……」
美花が眉尻を下げながら、口元に弧を描かせる。
頬を染めらせながら答える彼女に、自然と笑みを浮かべている圭。
「以前、DTM事業部に来た時、インタビューで、嬉しい事があって曲を作り始めた、と言ってたのは……この曲……だったのか?」
「うっ……うん。曲が完成するまで、かなり時間が掛かっちゃったけど……」
「怜と奏さんの事を考えながら作ってくれたっていうのが…………聴いてて分かった」
「あっ……ありがとうございますっ」
辿々しい言葉のキャッチボールの後、圭と美花は向き合ったまま、黙り込んでしまった。
「あっ……あのっ…………私、そろそろ帰るねっ」
気まずい雰囲気から逃れたいのか、美花が困惑気味にポツリと零すと、踵を返してエントランスに向かう。
せっかく二人きりの状況だというのに、このままサヨナラをするわけにはいかない。
圭は、ヒュッと息を吸い込んだ。
「……っ…………美花さんっ」