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その日夜勤に入った瑠璃子はいつものように仕事を始めた。


消灯後の病棟は特にトラブルもなく穏やかな時間が過ぎていく。瑠璃子は同僚と一緒に大輔からの出張土産の菓子を食べながら雑用を続けていた。


その時ナースステーションの電話がけたたましく鳴った。

同僚が電話に出ると瑠璃子に言った。


「瑠璃ちゃん、救命救急センターからよ」

「え? 私?」


また応援の要請かと思い瑠璃子はおそるおそる電話に出る。

するとこの前の応援の時に知り合いになった看護師が瑠璃子にこう告げた。


「村瀬さん、今大丈夫? 実は村瀬さんのお知り合いが運び込まれて来てね、ちょっと来てもらってもいい?」


瑠璃子はびっくりした。一体誰だろう?


「すぐに行きます」


救命救急センターへ行くとそこには秋子が横たわっていたので瑠璃子はびっくりする。

秋子は意識はあるようだが顔色が悪い。瑠璃子は急いで駆け寄る。


「秋子さん、大丈夫ですか? 辛いでしょうけれどもうすぐ楽になりますから安心して下さいね」


瑠璃子が来たので秋子の表情が一気に和らぐ。


「ああ、瑠璃子さんが来てくれて良かった。ごめんなさいね、ご迷惑をおかけして……」


秋子はそう言ってから苦しそうに胸を押さえる。


「大丈夫ですよ、そんな事は気にしないで下さい」


瑠璃子は秋子を安心させてから担当の医師に容態を聞きに行った。


「先生、どうですか?」

「うん、心筋梗塞を起こしている事は間違いなくてPCIにするかバイパス手術にするかの境目かもなぁ。虚血性心筋症があるみたいだから本当はバイパス手術の方がいいかもしれなけど、今、岸本先生を呼んだから看てもらって判断しようと思ってる」


その時大輔が救命救急センターに入って来た。

入るなり瑠璃子の姿を見つけた大輔は、驚いた様子でこちらへ向かって来た。


「どうしたの?」

「秋子さんが救急車で運ばれて来て…ご家族がいないから私を呼んだみたいで」

「そっか。とりあえず看てみるよ」


大輔はすぐに秋子の傍へ行った。


「大石さん、外科の岸本です。痛みはかなり酷いですか? 今から検査室へ移動しますが苦しかったら我慢しないですぐに言って下さいね」


大輔は近くにいた看護師に秋子を検査室へ連れて行くよう指示した。

瑠璃子が心配そうに見ていると、先ほど電話をくれた看護師が傍に来てこう言った。


「これ、大石さんから。家の鍵をあなたに渡して欲しいって。必要な物があれば村瀬さんに頼みたいからって」

「わかりました。あの、保険証とかは大丈夫でしたか?」

「保健証はバッグに入っていたのでもう預かったわ。今後は着替えや日用品等が必要になるだろうからよろしくね」

「はい」


その後の検査の結果で、今夜大輔が秋子の緊急手術を行なう事になった。

瑠璃子は手術室まで秋子について行く。


「岸本先生は『神の手』って言われるくらい手術が上手なんですよ。だから安心して下さいね」

「あなたをいつも迎えに来るあの先生よね?」

「そうです」


瑠璃子はニッコリ微笑む。そして続けた。


「春にはヨモギ摘みに連れて行ってもらうんですから、今のうちに悪い所はしっかり治しておいて下さいね」

「そうね、頑張らなくちゃ」


そこで秋子が手を出したので瑠璃子はその手をギュッと握る。


その時手術室から看護師が出て来たので瑠璃子はストレッチャーの傍を離れた。

そして運ばれて行く秋子に向かって叫ぶ。


「秋子さん! また後で会いましょう」


瑠璃子の瞳にはうっすらと涙が滲んでいた。


(先生、どうか秋子さんをお願いします)


瑠璃子は心の中で祈るように呟いた。



そして5時間後の明け方4時過ぎに、秋子の手術は無事に終わった。

瑠璃子は連絡を受けて同僚と共に手術室まで迎えに行く。

手術室のランプは既に消えていた。その時ドアが開き中から秋子が出て来た。その横に大輔もいる。

瑠璃子はすぐに秋子に駆け寄って顔を覗き込んだ。秋子は麻酔でまだ眠っていたが、顔色は先ほどよりもぐんと良くなっていた。


「上手くいったからもう心配ないよ。あとは足腰の筋力が衰えないようにしっかりリハビリをしないとだな」


途端に瑠璃子はホッとして涙ぐむ。


「良かった…先生、ありがとうございます」


瑠璃子は大輔にお辞儀をする。


「ハハッ、まるで君は大石さんの家族みたいだな」


大輔が笑いながら言うと、瑠璃子は本格的に泣き出した。

つい昨日まで元気だった秋子がいきなり運ばれて来たのだ、驚くのも無理はない。それに職業柄気丈にふるまってはいたが実際のところは不安でいっぱいだった。だから手術が無事に終わったと知り急に気が緩んでしまった。


すると大輔は瑠璃子の頭を優しくポンポンと撫でてから、もう一人の看護師に向かって言った。


「高度治療室に運んで下さい」

「はい。さぁ、瑠璃ちゃん」


瑠璃子は涙を拭うとストレッチャーを押し始める。


瑠璃子は眠っている秋子を見ながら安堵の気持ちでいっぱいだった。

そして今後は友人としてしっかりと秋子を支えよう……そう心に誓った。



ラベンダーの丘で逢いましょう

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