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ラファエルに伸ばした手は、行き場がなかった。なぜなら、ラファエルは握手を嫌がったからだ。
(なんだ?)
幼少期の頃は、ラファエルにとってトラウマと言えるものはイアンしかいなかった。ならば今まで甘やかされてきたのか。
「イアン、手をしまいなさい。断られているのが分からないのか。」
「え。」
イアンにはあたりの強い父が、ラファエルを庇った。何故なのか分からない。
(拒んだのはラファエルなのに、俺を叱るのか……?俺の父は確か…、アンドリュー伯爵とか言ったな…。)
少し唖然としつつ、手を引っ込めた。元々前世でも引きこもりをしていたため、人と話すのは苦手だ。自分なりに頑張って手を差し出したのに断られ、挙句父から叱られた事にショックを受けた。
(まあ、別にいいけど……。)
父上がラファエルの手を掴み、屋敷へ引っ張る。
「っ、痛、痛いです…!」
ラファエルは体を引きづられつつ、大声を上げた。イアンはそれを見て、ラファエルが父上に叩かれると思い、すぐに父上の前に出た 。
「父上っ!」
父上はイアンをじっと見つめたあと、イアンの肩に手を置いた。
「どきなさい、イアン。」
イアンは身震いをしたが、震えつつもラファエルを守ろうと動かない。
すると、ラファエルがイアンの服を掴んだ。
「や、やめてください…、守られなくても大丈夫です。」
少しいじらしいが、イアンは渋々その場から離れた。
「無駄なことをしたな、イアン。」
低音のアンドリュー伯爵の声を聞いて身震いをしてから、チラリとラファエルを見た。
(良かった…、ラファエルは父上には叱られない…叩かれないんだ…。)
自分で良かったと感じつつも、何故か心の奥でモヤがかかる。
(?)
何故かイアンだけがこの場に取り残されたかのような気分だった。
中に引きづられていくラファエルを見ると、こちらを何か不安そうに見ていた。
(なんだよ……俺は養子にまでそんな目で見られなきゃいけないのか…?)
考えてからハッとし、自分がどれだけ哀れなことを考えていたのか自己嫌悪がする。
(でも、ゲームの中のイアンもこんな気持ちになったとしたら、少し同情するな……。)
数日しても、ラファエルがイアンの部屋に尋ねてこない。正直に言って、義弟とは仲良くしておきたいものだ。いつまでもギスギスしてたらストレスにやられかねない。イアンの部屋は1番角部屋にある為、ラファエルに与えられた中央付近の見晴らしのいい場所には行きやすいはずだ。
(俺から尋ねてみようか…、こんな角部屋、ラファエルにとっては使用人の部屋だと間違えてしまうかもしれないしな。)
髪を自分で整えてから、ラファエルの部屋へ向かった。
ドアを叩く。
「…ラファエル?俺だ、イアン。」
少し待ってから、ドアがゆっくりと開いた。
「に、兄さま……。」
「いや、イアンでもいいよ、堅苦しいのはやめにしよう。」
「え、っと…、じゃあ、にいさんで……。」
困らせてしまったと思ったが、遠慮なく兄さんと呼んでもらうのは嬉しかった。
「あー…ごめん、特に用はないんだけど、顔が見たかったから。ラファエルの方も、遠慮せず困ったことがあったら俺の部屋に来ていいから。」
驚いた顔をされ、
「あ、ありがとうございます。」
と言われた。自分から提案して良かったと思う。